自爆、住所、特定
家に帰った俺は、静かにドアを閉めた。
体は痛い。
普通に痛い。
だが心は折れていない。
(あれは俺が戦わなかっただけだ)
制服を脱ぎ、ベッドに腰掛ける。
そして俺はスマホを手に取った。
――ネット。
ここは、俺のホームグラウンドだ。
匿名。
年齢不詳。
実力主義。
現実とは違う。
俺の価値を正しく評価できる世界。
俺は某掲示板にスレッドを立てた。
【武勇伝】
学校でヤンキーに絡まれたけど立ち向かったったw
相手3人、俺1人なw
あえてやり返さなかったけど正直余裕だった
送信。
……フッ。
反応は早かった。
「はいはい」
「はい嘘松」
「妄想乙」
「ラノベの読みすぎ」
(なるほど、嫉妬ってやつか)
俺は即レスする。
いやマジ
体育館裏で呼び出しな
普通なら詰んでる状況
「体育館裏www」
「高校生かよ」
「どこの高校だよw」
……来たな。
(ここで何も言えないと思ってるだろうが)
俺は少しだけヒントを落とすことにした。
まあ地方だしな
山と川に囲まれたとこ
駅から自転車15分くらい
「絞れてきたな」
「その条件◯◯県だろ」
「体育館裏ある高校って限られてるぞ」
……ほう?
(ネット民、なかなかやるじゃないか)
だが俺は動じない。
まあ校舎古いしな
グラウンド土だし
制服ダサいのは認めるw
「はい特定」
「◯◯高校やん」
「去年ニュース出てたとこだろw」
一気にスレが加速する。
「田舎の自称強者www」
「ヤンキーにやられてて草」
「ラノベ読んでそう」
……やれやれ。
(当たってるところが多いな)
だが俺は冷静だった。
別に特定されても困らんけど?
事実しか言ってないし
俺は自分を貫くだけだから
「効いてないアピ草」
「めっちゃ効いてるやつの文体」
「明日学校行けんの?w」
スレは完全におもちゃだった。
俺の名前こそ出ていないが、
俺という存在は、解体され、笑われていた。
……だが。
(所詮、画面の向こうの雑魚どもだ)
俺はスマホを置き、天井を見つめた。
「……フッ」
笑みがこぼれる。
(理解されないってことは、俺が“上”にいる証拠だ)
ネットも、学校も、
世界はまだ俺のレベルに達していない。
だから今日は――
俺が大人になってやっただけだ。
そう結論づけ、俺は静かに目を閉じた。
通知音が鳴り続けていることから、
意識を逸らしながら。




