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放課後。
人のいなくなった教室に、夕焼けの光だけが残っている。
神代は、いつもの席で頬杖をついていた。
窓の外。
ゆっくりと色が変わっていく空を、なんとなく眺めている。
オレンジが、少しずつ深くなっていく。
遠くで、カラスの鳴き声が聞こえた。
「……はぁ」
小さく、息を吐く。
理由はない。
疲れているわけでもないし、嫌なことがあったわけでもない。
今日だって、いつも通りだった。
授業を受けて、友達と話して、笑って。
何も問題なんてなかったはずなのに。
胸の奥に、ぽっかりとした何かが残っている。
「……なんだろな、これ」
誰に聞くでもなく、呟く。
答えなんて、返ってこない。
視線を、少しだけ横にずらす。
隣の席。
空っぽの机と椅子。
最初から、誰もいなかった場所。
――のはずなのに。
ほんの一瞬だけ。
そこに誰かがいたような気がして。
すぐに、その感覚は消える。
掴もうとした途端、霧みたいにほどけていく。
「……気のせいか」
小さく笑って、視線を戻す。
また、空を見上げる。
夕焼けは、さっきよりも少しだけ暗くなっていた。
「……」
言葉は、もう出てこない。
ただ、静かな教室に。
理由のない寂しさだけが、ゆっくりと広がっていく。
それが何なのか、分からないまま。
神代は、しばらくの間――
空を見上げ続けていた。




