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君は何度も僕を忘れる  作者: 南蛇井


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9

神代は、いつも通りの道を歩いていた。


夕焼けが、やけに眩しい。


さっきまで誰かと話していた気がするのに、会話の内容はもう思い出せない。


……そもそも、“誰と”話していたのかすら曖昧だった。


「……あれ」


足が止まる。


理由はない。


ただ、なんとなく。


胸の奥に、小さな引っかかりが残っている。


振り返る。


分かれ道。


人の流れ。


見慣れた帰り道の景色。


――何も、おかしなところはない。


それでも。


視線だけが、そこから離れない。


「……なんか」


言葉にしようとして、少しだけ迷う。


「……忘れてる気がするんだよな」


ぽつりと、独り言みたいにこぼす。


何を?


と自分で考えてみる。


けれど。


浮かんでくるものは、何もない。


顔も、名前も、声も。


何一つ思い出せない。


なのに。


どうしてか、その“何か”は。


すごく大事だったような気がして。


胸の奥が、少しだけざわつく。


「……気のせい、か」


小さく息を吐く。


納得したわけじゃない。


ただ、考えても分からないものを、これ以上追いかける理由がないだけで。


視線を戻す。


前を向く。


また、歩き出す。


その足取りは、さっきまでと何も変わらない。


――はずなのに。


ほんの少しだけ。


ほんの一瞬だけ。


胸の奥に残った違和感だけが、消えずに残った。

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