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異世界から帰ってきただけだが?  作者: Саша


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98/145

98話

轟音。

黒い門が軋む。

空間そのものが悲鳴を上げているようだった。


そして裂け目の奥から、巨大な腕が伸びる。

黒い外殻、赤い紋様。

ただ存在するだけで、周囲の石壁が侵食されていく。


ユイが顔を青くする。


「……っ」


「無理じゃないですか、あれ……!」


「『まだ完全に出てない!』」


葵が叫ぶ。


「『今なら押し戻せる!』」


相棒が即座に前へ出る。

剣を抜く。


「『景斗!』」


「ああ!」


俺も魔法陣を展開する。

雷光、炎、風。

複数属性を同時展開。


空気が震える。

レイカが驚いたようにこちらを見る。


「……相変わらず無茶苦茶だな」


「今さらだ」


短く返す。

そして。


「撃つぞ!」


雷撃が走る。

轟音。


巨大な腕へ直撃。


同時にシエルの矢が放たれる。

風を纏った魔力矢。


正確に関節部へ。

爆ぜる。


その隙に相棒とレイカが前へ。


「はぁっ!!」


レイカの槍撃。


重い一撃。


相棒が横から斬り込む。

黒い外殻が裂ける。


だが巨体は止まらない。

門を押し広げながら、さらに這い出てくる。


赤い瞳がこちらを見る。


瞬間、圧力。


「っ……!」


ユイが膝をつく。


「重……い……!」


「見るな!」


葵が即座に叫ぶ。


「精神干渉だ!」


その間にも門が軋む。

姫が前へ出る。


『……まだ開かせる訳にはいかない』


金色の魔法陣が展開される。

広間全体に光。

門が少し押し戻される。

だが姫の輪郭が揺らぐ。


ノイズ。

身体が薄くなる。


「『姫!』」


シエルが叫ぶ。

姫は静かに笑う。


『……問題無い』


嘘だ。

明らかに無理をしている。


葵が舌打ちする。


「『長く持たねぇ!』」


「楔は!?」


「あと少し!」


床では、錬成された四本の杭が光を放っていた。


異世界素材、即席封印杭。

だが完成前に押し切られる。


俺は前へ出る。


「相棒!」


「『分かっておる!』」


相棒が即座に魔力を解放。

空気が変わる。


銀色の魔力。

異世界時代の本気。


レイカの目が見開く。


「……おい」


「今まで本気じゃなかったのか?」


「『流石に相手が悪いのでの』」


その瞬間、相棒が踏み込む。

速い。

一瞬で巨腕へ到達。


斬撃。

黒い外殻が大きく裂ける。

巨体が初めて苦しげな声を上げた。


『■■■■■――!!』


轟音。

空間が揺れる。


だがその時黒い門の奥。

さらに何かが動いた。


ユイの顔が凍る。


「……え」


目。

また赤い瞳。

一つじゃない。


大量。


門の向こう側。

暗闇の中に、無数の視線が浮かんでいた。


静寂。


そして葵が乾いた声で言う。


「『……終わったわ』」


その一言で全員が理解した。

これは前哨戦ですらない。

もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。

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