97話
数時間後。
古代遺跡。
広間の端。
一行は簡単な休憩を取っていた。
門の前に長時間いるのは危険だ。
だが、完全に離れる訳にもいかない。
緊張感のある沈黙。
その中でユイがぽつりと呟く。
「……スケールおかしくないですか」
レイカが少し笑う。
「今さらだな」
「いやでも!」
ユイが小声で言う。
「世界の境界とか!」
「封印とか!」
「神代術式とか!」
「普通の冒険者やってたはずなんですけど私!」
葵が吹き出す。
「分かる」
「私も昔そうだった」
「気づいたら世界救済やってた」
「そんな軽いノリなんですか!?」
「割と」
相棒が苦笑する。
「『大体いつも急じゃった』」
シエルも頷く。
「『突然、大変な事になる』」
「嫌すぎる共通認識ですね……」
少しだけ空気が緩む。
その時姫が静かにこちらを見ていた。
どこか懐かしそうな視線。
『……変わらんな』
小さな声。
相棒が少し笑う。
「『何百年も経っておるからの』」
「『多少は落ち着いた』」
葵が即座に言う。
「嘘つけ」
「『失礼じゃな』」
軽い会話。
だがその空気を壊すように。
――ズズ……。
門が脈打つ。
全員の空気が変わる。
姫の表情も真剣になる。
『……来る』
直後。
黒い門の表面が揺らぐ。
そしてゆっくりと、手が出てきた。
黒い、巨大な腕。
人間ではない。
魔力の塊のような存在。
ユイが息を呑む。
「な、何ですかあれ……!」
「『深層魔力の奴じゃ』」
相棒が即座に立ち上がる。
レイカも槍を構えた。
「戦闘準備!」
空気が一気に張り詰める。
門がさらに開く。
黒い霧、重い魔力。
そしてその奥から、目が見えた。
巨大な赤い瞳。
こちらを見ている。
瞬間。
全員の本能が警鐘を鳴らす。
危険。
今までの敵とは違う。
「『……大物だぞ』」
葵の声から軽さが消える。
シエルも弓を構える。
「『嫌な気配』」
姫が静かに言う。
『……まだ早い』
『門が安定してない今なら、押し返せる』
俺は前へ出る。
「レイカ」
「前衛頼む」
「ああ」
「葵」
「楔準備」
「了解」
「シエル、援護」
「『うん』」
「ユイ」
「後方から状況確認」
「は、はい!」
その瞬間、門が完全に裂けた。
轟音。
黒い巨体が、ゆっくりとこちら側へ姿を現そうとしていた。
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