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異世界から帰ってきただけだが?  作者: Саша


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93/147

93話

遺跡内部。


静寂。

大量の人型存在。


誰も動かない。

ただ、こちらを見ている。


『待っていた』


その言葉のあと前に出ていた個体が、ゆっくり振り返る。

そして。


『……来い』


短く言った。

レイカが低く聞く。


「どうする」


少し間、俺は周囲を見る。

敵意は薄い。


少なくとも今は。


「……行く」


相棒も頷く。


「『ここまで来たらの』」


シエルは周囲を警戒したまま歩き出す。

葵も小さく息を吐く。


「『神代遺跡とか久々すぎる』」


そのまま、一行は奥へ進む。


遺跡の内部は広かった。

崩れた廊下。

巨大な柱。


壁には古代の異世界文字。

どれも古い、かなり古い。


シエルが壁に触れる。


「『……読める』」


「何て書いてある」


『境界の門』


『封印』


『王の血』


その単語で空気が少し変わる。

葵が顔をしかめる。


「『嫌なワードしかねぇ』」


相棒も静かに言う。


「『昔聞いたことがあるの』」


「『神代の封印術式じゃ』」


レイカとユイは意味が分からない。

だが危険な話なのは伝わる。


そのまま進む。

やがて巨大な扉へ辿り着く。


黒い石、紋章。

異世界文字。

そして、人型存在たちが扉の前で止まった。


一体が扉へ触れる。

重い音、ゆっくり開く。


その先、広間。

巨大な空間。


中央には玉座。

そして――


「……え」


ユイが声を漏らす。

そこに、一人の少女が座っていた。


白銀の髪。

透き通るような肌。

黒と白を基調にした古い衣装。


そして頭には、小さな王冠。


少女は静かにこちらを見る。

金色の瞳。

だがその瞳は、どこか疲れていた。


シエルが目を見開く。


「『……姫?』」


相棒も止まる。


「『まさか……』」


葵が信じられない顔をする。


「『まだ生きてたのか……?』」


レイカが小さく聞く。


「知り合いか」


少し間俺は少女を見る。


「……相当昔のな」


少女が、ゆっくり立ち上がる。

その動きだけで分かる。


強い、異常なほど。

そして彼女は静かに異世界の言葉を話した。


『……久しいな』


静かな声。


『宵星』


空気が止まる。

シエルが小さく呟く。


「『……星見姫』」


少女は微かに笑う。


『覚えていたか』


レイカとユイだけが完全に置いていかれていた。


「ちょ、ちょっと待ってください」


「姫って何ですか!?」


葵が小さく息を吐く。


「……向こうの王族」


「しかも多分、かなり昔の」


ユイの顔が引きつる。


「なんでそんな人がここに……」


星見姫は静かにこちらを見る。

そして。


『……世界が、また近づいている』


笑みを消す。


『故に、門が開き始めた』


その一言で空気が重く沈んだ。

異世界と現代日本。

その境界が本当に崩れ始めていた。

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