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異世界から帰ってきただけだが?  作者: Саша


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89/146

89話

翌日。昼。


レイカのギルド本部。

会議室。


テーブルの上には資料が広げられていた。

だが。


「……何もないですね」


ユイがぽつりと言う。

実際、その通りだった。


地図なし。内部構造不明。

敵情報も少ない。


あるのは、昨日の記録だけ。

レイカが腕を組む。


「新規発生直後だからな」


「まともな情報がない」


「しかも探索班も深くまで行けてない」


俺は資料を見る。

役に立つ情報は少ない。


「……攻略というより」


「調査だな」


「そうなる」


レイカが頷く。

その横で葵が椅子にもたれながら言う。


「『嫌だなーこの感じ』」


「『昔思い出す』」


相棒も小さく頷く。


「『未知のダンジョンは大体ろくでもない』」


「『同意』」


シエルも真顔だった。

ユイが少し緊張した顔で聞く。


「……そんなに危ないんですか」


少し間、俺が答える。


「未知だから危険だ」


「情報がないのが一番厄介だな」


レイカも続ける。


「だから今回は慎重に行く」


「無理に深層は狙わない」


「まずは構造確認」


現実的な判断。

ユイがメモを取る。


「えっと……」


「敵の傾向確認」


「撤退経路確保」


「魔力濃度の測定……」


「そんなところだ」


その時、葵がふと手を上げる。


「はい提案」


「何だ」


「転移系警戒」


空気が少し変わる。


「昨日のあれ、空間歪んでた」


「下手すると内部構造変わるタイプ」


レイカの目が細くなる。


「……ありえるな」


「最悪だろ」


葵が肩をすくめる。

相棒も静かに言う。


「『向こうでもあったの』」


「『生きた迷宮みたいなものが』」


ユイの顔が引きつる。


「生きた迷宮……?」


「『道が変わる』」


「『閉じ込める』」


「『人を殺すための構造になる』」


シエルが続ける。


「『罠も増える』」


「『帰れない』」


ユイが黙る。

レイカが短く言う。


「……採用だ」


「内部マッピングは当てにしない」


「目印管理を徹底する」


そのままペンを走らせる。

完全に実戦モード。


俺が追加する。


「魔力探知は常時使う」


「敵より空間異常優先だ」


「ああ」


レイカも同意する。

その時、シエルが静かに口を開く。


「『……声も注意』」


全員が見る。


「『向こう側は、言葉で干渉する奴も居る』」


空気が止まる。

ユイが困惑する。


「言葉で……?」


「精神干渉系か」


レイカがすぐ理解する。

葵が頷く。


「向こうだと普通にいた」


「聞いただけで狂うタイプとか」


「近づくだけで洗脳とか」


「嫌な思い出しかない」


「……怖すぎません?」


ユイが本気で引いていた。

だが、冗談じゃない。


相棒が静かに言う。


「『だから今回は本気で慎重に行く』」


「『油断すると死ぬ』」


部屋が静かになる。

今までと違う。


本当に危険な領域。

それを全員理解していた。


レイカが最後に言う。


「……なら確認する」


「今回の目的は攻略じゃない」


「生存優先」


「情報回収」


「異常の確認」


全員が頷く。

そして。俺は静かに言う。


「もし本当に向こうと繋がってるなら」


「ここから先は」


「宵星の領分になる」


その一言で会議室の空気が、静かに張り詰めた。

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