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異世界から帰ってきただけだが?  作者: Саша


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88/147

88話

夜。家の中。


いつもより静かだった。

リビング、テーブルを挟んで座る。


俺、相棒、シエル、葵。

向かいには、レイカとユイ。


誰もすぐには口を開かなかった。

昼のダンジョン。


あれが普通じゃないことは、全員理解している。

レイカが先に言う。


「……聞かせてもらうぞ」


真っ直ぐな視線。


「何が起きている」


少し間、俺は短く息を吐く。


「まだ断定はできない」


「だが」


「今日のダンジョンは、向こうに近すぎる」


ユイが静かに聞く。


「向こうって……」


「俺たちがいた世界だ」


空気が少し重くなる。

レイカは黙って聞いている。


相棒が静かに言う。


「『普通のダンジョンとは違った』」


「『空気も、魔力も、構造も』」


シエルも頷く。


「『似てる』」


「『昔の遺跡に』」


ユイが少し困った顔をする。


「……でも」


「なんでそんなことになるんですか?」


当然の疑問、葵がソファにもたれながら言う。


「分からん」


「けど、可能性はある」


「向こうとこっちが近づいてる」


レイカの目が細くなる。


「世界同士が、か」


「ああ」


俺が頷く。


「元々、完全に切り離されていた訳じゃない」


「だから俺は落ちた」


三年前、ダンジョン境界の崩壊。

あの日、俺は向こうへ落ちた。


「向こうにも、似たような場所はあった」


「空間が不安定な場所」


「世界が歪む場所」


レイカが腕を組む。


「……つまり」


「ダンジョンが、その繋ぎ目になっている可能性がある、と」


「そうだ」


短く答える、静寂。

ユイが少し青い顔で言う。


「じゃ、じゃあ」


「向こうのモンスターとかも……」


「来る可能性はある」


その一言で空気が冷える。

だが相棒が静かに続ける。


「『とはいえ、まだ分からん』」


「『今日のは異常じゃ』」


「『普通ではない』」


シエルも言う。


「『普通の魔物と違ッた』」


「『……意思があった』」


あの影、帰れと言った存在。

敵意だけではなかった。


それが逆に不気味だった。

レイカが低く聞く。


「お前たち、心当たりは」


少し間、葵が笑みを消す。


「……ある」


空気が変わる。


「向こうには、深層側って呼ばれてた領域があった」


「普通の魔物じゃない奴らがいる場所」


ユイが息を呑む。


「……今日のって」


「似てる」


シエルが即答する。


「『凄く』」


相棒も静かに頷く。


「『だから嫌なんじゃ』」


レイカが考え込む。


「……お前たちほどの実力でも警戒する相手か」


「ああ」


俺が答える。


「下手すると、今のこっちじゃ対処できない」


それは脅しじゃない。

事実だ。

今の日本の冒険者は強い。


だが異世界の深層は、その比じゃなかった。

ユイが小さく呟く。


「……そんな場所で」


「何百年も戦ってたんですか」


少し間、相棒が笑う。


「『戦わんと死ぬからの』」


軽く言う。

だが、その言葉は重い。


シエルも静かに言う。


「『仲間も、沢山死んだ』」


「『……でも、生き残った』」


葵が続ける。


「生き残って」


「世界を終わらせないように戦って」


「そんで、ようやく帰ってきた」


静かな声。

レイカは黙って聞いていた。

そして、小さく息を吐く。


「……なるほどな」


少しだけ笑う。


「そりゃ強い訳だ」


ユイも苦笑する。


「スケールが違いすぎます……」


俺は窓の外を見る。


静かな夜。平和な日本。

守られている世界。

だが、その裏でまた向こうが近づいているかもしれない。


「……だからこそ」


俺は静かに言う。


「もし本当に繋がり始めてるなら」


「今度は、こっちを守る必要がある」


その言葉に部屋の空気が、静かに引き締まった。

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