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異世界から帰ってきただけだが?  作者: Саша


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87/147

87話

崩れた通路。


土煙、重い魔力。

その奥に立つ、何か。


誰も動かなかった。

いや、動けなかった。


「……撤退する」


俺が短く言う。

レイカがすぐ頷く。


「賛成だ」


判断が早い。

ユイも顔が青い。


「……はい」


今の一撃。

あれを見て、無理に進む理由はない。

相棒が静かに前を見る。


「『妙じゃな』」


「『敵意が薄い』」


シエルも頷く。


「『……うん』」


「『本当に殺す気なら今ので終わった』」


葵が顔をしかめる。


「『だから余計嫌なんだよ』」


完全な敵なら分かりやすい。

だが、あれは違う。


警告してきた。

帰れとその意味が分からない。

その時影が、ゆっくり動く。


全員、構える。

だが攻撃は来ない。


ただ、こちらを見ている。


赤い瞳。

そして――


『……まだ、早い』


異世界の言葉。

低い声、掠れている。

だが確かに聞こえた。


相棒が目を細める。


「『何がじゃ』」


返す。その瞬間。

空気が歪む。


影が揺らぐ。

ノイズのように崩れる。

そして消えた。


静寂。

ユイが呆然と呟く。


「……消えた」


「転移系か」


レイカが周囲を警戒する。

だが、気配は消えている。


完全に葵が小さく息を吐く。


「『帰ろう』」


「『賛成』」


シエルも珍しく緊張した顔だった。


「『怖い』」


その一言で、空気がさらに重くなる。

シエルが怖いと言うのは珍しい。


それだけ異常だった。

俺は短く言う。


「戻るぞ」


ダンジョン出口。

外へ出た瞬間、空気が変わる。


軽い、普通の空気。

ユイが大きく息を吐く。


「……生き返った感じします」


「中が異常すぎる」


レイカも真剣な顔。

管理局員が近づいてくる。


「状況は!?」


レイカが短く返す。


「調査続行不可」


「上層に連絡しろ」


管理局員の顔色が変わる。


「そ、それほどですか」


「ああ」


即答。

その横で俺たちは少し離れる。

葵が低く言う。


「『どう思う?』」


「『分からん』」


相棒が腕を組む。


「『だが、向こうの存在じゃ』」


「『しかも古い』」


シエルも静かに言う。


「『魔力、似てる』」


「『昔の……深層』」


俺は少し考える。


「……繋がり始めてる可能性がある」


空気が止まる。葵が真顔になる。


「『それ、最悪のやつじゃん』」


「『まだ断定はできん』」


相棒が言う。


「『じゃが、警戒は必要じゃ』」


その時、レイカが戻ってくる。


「……何を知ってる」


真っ直ぐな視線。

今までで一番重い。

ユイも不安そうにこちらを見る。


少し間、俺は空を見る。

夕方。


静かな日本の空。

だが、その裏で確実に何かが動いている。


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