84話
夜。
布団が敷かれて、部屋の電気も少し落ちてる。
「……またこのメンバーか」
「安定だね」
「増えてるけどな」
楓も当然のようにいる。
「だって面白いし」
「理由が軽い」
布団に入る。
配置はいつも通り——のはずだった。
「……よいしょ」
「乗るな」
いつもより早い。
しかも——ぎゅっ
完全に覆いかぶさる形。
「……重い」
「……やだ」
「まだ何も言ってない」
「……離れない」
顔も胸に埋めて、腕も回して完全に固定。
「……今日強すぎないか」
「……」
返事がないでも力は緩まない。
「さっきのこと?」
秋山が小さく聞く。
「……多分な」
親戚の子と遊んでたやつ。
「……東海林さん」
くぐもった声。
「ん?」
「……取られたくない」
「だから取られないって」
「……でも」
ぎゅっ
さらに強くなる。
「……苦しいって」
「……やだ」
「やだじゃない」
「……やだ」
完全に拒否。
「……大丈夫だよ」
秋山が静かに言う。
「誰も取らないって」
「……ほんと?」
「うん」
「……でも」
「?」
「……楽しそうだった」
「遊んでただけだろ」
「……私以外と」
「……」
そこか。
「……お前とも遊ぶだろ」
「……違う」
「何が」
「……あんな顔しない」
「どんな顔だよ」
「……楽しそう」
「いや普通に楽しかったけど」
「……」
ぴくっと反応する。
「……ほら」
秋山が小さく笑う。
「余計なこと言うから」
「事実だろ」
「そうだけどさ」
「……東海林さん」
「ん?」
「……私といる時も楽しい?」
「当たり前だろ」
「……ほんと?」
「毎日一緒にいるだろ」
「……うん」
少しだけ力が緩む。
でも——離れない。
むしろ、さらに密着してくる。
「……キスしていい?」
「この状態でか」
「……落ち着く」
「……軽くだぞ」
「……うん」
ちゅ
短く。
でも、そのまま離れない。
「……まだ怖い?」
秋山が聞く。
「……うん」
「そっか」
「……東海林さん」
「ん?」
「……離れたら、だめ」
「寝てる間に離れるわけないだろ」
「……でも」
「……」
言葉が続かない。
「……大丈夫だ」
背中に手を回して、軽く撫でる。
「……ここにいる」
「……うん」
「……私もいい?」
楓が横から言う。
「増やすな」
「ちょっとだけ」
ぎゅ
「……また増えた」
「冬だし」
「その理屈やめろ」
「ほんとさ」
楓が小さく言う。
「完全に離れないね」
「まぁな」
「……でも」
楓が少しだけ真面目な声で。
「ちょっと不安なんでしょ」
「……」
響は何も言わない。
でも——ぎゅっ
答えは分かりやすい。
「……東海林さん」
「ん?」
「……ずっと一緒?」
「……今はな」
「……今も、これからも」
「欲張りだな」
「……だめ?」
「……出来るだけな」
「……うん」
少しだけ落ち着いた声。
でも、そのまま——覆いかぶさったまま、一切離れない。
「……これ寝れるか?」
「無理だね」
秋山が即答。
「だよな」
「……寝る」
「この状態でか」
「……うん」
数分後。
「……すー……」
「……寝たな」
「早いね」
でも——腕の力はそのまま完全に固定されたまま。
「……逃げれないね」
楓が笑う。
「逃げる気もないけどな」
「……優しいね」
「どうだろうな」
静かになっていく部屋。
外は冬の夜。
「……東海林君」
秋山が小さく言う。
「ん?」
「このままでいいの?」
「……」
少しだけ考える。
腕の中の重さと、ぬくもり。
「……今はいいだろ」
「そっか」
そのまま覆いかぶさった響と、左右にいる二人と一緒に、身動きの取れないまま——朝まで眠り続けた。
もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。




