83話
休日。朝。
珍しく全員起きていた。
「で」
葵がソファでだらけながら言う。
「今日どうする?」
「急じゃの」
相棒が湯を飲みながら返す。
「いや、せっかく日本なんだし」
「もっとこう……遊びたい」
「平和満喫したい」
その言葉に、シエルが反応する。
「……遊ブ?」
「そう」
葵が起き上がる。
「日本観光」
「観光するほど知らんだろ」
俺が言う。
「だから見るんじゃん」
正論だった。
そのまま、なんとなく外へ出ることになる。
昼前。駅前。
人が多い、店も多い。
普通の街だが。
「……多イ」
シエルが周囲を見回す。
「人、多イ」
「都会だからな」
葵は逆にテンションが高い。
「いやー、日本って感じ」
「平和だ……」
本当に感動している。
相棒が少し笑う。
「『はしゃぎすぎじゃ』」
「『数百年ぶりなんだから許せ』」
異世界の言葉。
自然と混ざる。
そのまま歩いているとシエルが立ち止まる。
「……何アレ」
視線の先、クレープ屋。
「食い物だ」
「甘イ?」
「甘い」
「……行ク」
即答。
そのまま買う流れになる。
シエルは生クリーム多めのやつ。
葵はチョコ系。
相棒は抹茶。
俺は適当。
店の前。
シエルが一口食べる。
止まる。
「……美味シイ」
「だろ?」
葵が笑う。
「日本の甘味は強い」
相棒も頷く。
「『向こうではまず無理な味じゃの』」
「『砂糖の暴力』」
「『最高』」
完全に楽しんでいる。
そのまま街を歩く。
ゲームセンター、雑貨屋、本屋。
見るもの全部が新鮮。
葵がゲーセンで止まる。
「……これ何」
「クレーンゲームだ」
「取れるの?」
「取れない」
「何であるんだ?」
「知らん」
実際やる。
全然取れない。
「……難しくない?」
「そういうものだ」
シエルが横で見ている。
「……戦イヨリ難シイ」
「それは言い過ぎじゃろ」
相棒が笑う。
だが数回後。
葵が普通に取る。
「おっしゃ」
「何で取れるんですか」
「勘」
雑。
そのまま取ったぬいぐるみをシエルに渡す。
「……良イノ?」
「やる」
「……ウン」
少し嬉しそう。
そのまま抱えて歩く。
昼。フードコート。
四人で席に座る。
「……平和だな」
俺がぽつりと言う。
「そればっかじゃの」
相棒が笑う。
だが誰も否定しない。
葵がラーメンを食べながら言う。
「いやでもマジで思うって」
「普通に飯食ってるだけで安全とか」
「やばいだろ」
「……確カニ」
シエルも頷く。
少し静かな時間。
周りは普通の人たち。
買い物して話して、笑っている。
昔なら考えられなかった。
だからこそこの光景が少し眩しい。
相棒が窓の外を見ながら言う。
「『守った価値はあったの』」
静かな言葉。
葵も笑う。
「だな」
シエルも小さく頷く。
「『うん』」
俺は少しだけ目を閉じる。
騒がしいフードコート。
平和な日本、安心できる時間。
それはきっと長い戦いの先に、ようやく手に入ったものだった。
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