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異世界から帰ってきただけだが?  作者: Саша


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55/76

55話

翌日。

昼過ぎ。


チャイムが鳴る。

扉を開けると――


「こんにちは!」


ユイだった。


「来たか」


「はい!」


いつも通りのテンションで中に入る。


「お邪魔します!」


靴を脱いで、そのままリビングへ。

そしてシエルを見て――止まる。


「……あ」


数秒、じっと見る。

そして少しだけ緊張した様子で手を上げる。


「えっと……」


「シエル?」


シエルが視線を向ける。


一瞬の間。そして。


「……ユイ」


はっきりとした発音。自然な呼び方。

ユイの目が見開かれる。


「……え?」


「え、ちょっと待ってください」


「今、名前……」


シエルはゆっくりと続ける。


「久シブリ」


少しだけぎこちないだが、確実に日本語。

ユイが完全に固まる。


「……え???」


「え、え、え???」


混乱。


「話せてますよね!?」


「ああ」


「え!?いつの間に!?」


「数日前からだ」


「早すぎません!?」


ユイが一気にシエルに近づく。


「ほんとにシエルですよね!?」


「……ソウ」


シエルが少しだけ頷く。ユイがその場で軽く跳ねる。


「すごい!!」


「すごいです!!」


「え、会話できます!?」


少しだけ間。シエルが考える。


「少シ」


「ユックリナラ、イケル」


「いけるんだ!?」


ユイが嬉しそうに笑う。


「じゃあ……えっと」


少し考えてから、ゆっくり話す。


「今日……何してたの?」


シエルが一瞬止まる。

考える。言葉を選ぶ。


「……家」


「イタ」


「本、見タ」


単語ごとだが、意味は通じる。


「すごい……ちゃんと会話してる……」


ユイが感動している。シエルは少しだけ誇らしげに言う。


「覚エタ」


「早イ」


「いやほんとに早いです!」


ユイが笑う。そのまま自然に隣に座る。


「じゃあ、これも分かります?」


テーブルを指す。


「テーブル」


「……テーブル」


そのまま言う。


「完璧じゃないですか!」


ユイがさらにテンション上がる。シエルも少しだけ楽しそうだ。

そして、ぽつりと言う。


「……ユイ」


「ハナス、タノシイ」


ゆっくりだが、はっきり。

ユイが一瞬止まる。

そして。


「……はい」


少し照れながら笑う。


「私も楽しいです」


そのやり取りを、少し離れて見ている。

相棒が小さく呟く。


「進んだの」


「ああ」


俺も同意する。シエルがさらに続ける。


「モット、覚エル」


「ダカラ……」


少し言葉に詰まる。ユイが待つ。

シエルが言い直す。


「……オシエテ」


その一言。ユイの顔が一気に明るくなる。


「もちろんです!」


「いっぱい教えます!」


完全に先生モードだ。シエルが小さく頷く。


「……頼ム」


少しだけ発音が崩れるだが、それも含めて確実に前に進んでいる。

ユイが笑いながら言う。


「じゃあまずは敬語からいきます?」


「難シイ」


「ですよね!」


楽しそうな声が部屋に広がる。

言葉が繋がる。それだけで、距離は一気に縮まる。


その様子を見ながら――悪くは無い流れだと、そう思えた。

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