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異世界から帰ってきただけだが?  作者: Саша


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27話

ほんまに眠い

昼過ぎ。


インターホンが鳴った。

ソファに座っていた俺は、そのまま立ち上がって玄関に向かう。


ドアを開ける。

そこにはユイと、もう一人。


「こんにちは!」


ユイが軽く手を振る。

その隣で、落ち着いた視線を向けてくる女性。


鷹宮レイカ。


「邪魔する」


短くそう言った。


「……何の用だ」


「ユイが最近世話になっていると聞いてな」


レイカはそう言って、軽く視線をずらす。

ユイが少し慌てて言う。


「すみません、勝手に来ちゃって」


「別にいい」


後ろから相棒の声がした。


「来客か?」


廊下の奥から歩いてくる。

レイカの視線が、そちらに向く。


一瞬。


ほんの少しだけ、空気が変わった。


「……ああ」


レイカが小さく息を吐く。


「やっぱりそうか」


「何がじゃ」


「いや」


レイカは軽く首を振った。


「気にするな」


そしてそのまま言う。


「上がってもいいか?」


「好きにしろ」


「お邪魔します!」


ユイが元気よく言って中に入る。

レイカも続く。


リビングに入ると、ユイはすぐにソファへ向かう。


「やっぱり落ち着きますねここ」


「二回目だからな」


レイカはそのまま立ったまま、部屋をゆっくり見渡していた。


何気ない動き。だが、見ている場所が細かい。


机、棚、壁際。


そして――本棚のあたりで、少しだけ視線が止まった。


「……」


レイカが一歩近づく。

棚に並んでいる本。その中の一冊。

表紙に、見慣れない文字が刻まれている。


日本語ではない。英語でもない。

ユイは気づいていない。


普通にソファに座っている。

だがレイカは違う。


その本を手に取る。


「これは?」


俺は少しだけ視線を向ける。


「本だ」


「見れば分かる」


レイカは軽く笑った。

そして表紙を指でなぞる。


「この文字」


「どこの言語だ?」


ユイが振り返る。


「え?」


「どれですか?」


レイカが本を軽く見せる。

ユイは首を傾げた。


「……なんかおしゃれなデザインじゃないですか?」


「そう見えるか」


「はい」


レイカは少しだけ黙る。

そして本を戻した。


「……なるほどな」


小さく呟く。

相棒が横で言う。


「気になるのか?」


「少しな」


レイカはそのままソファに腰を下ろした。

ユイの隣。


「いい部屋だ」


「そうか」


「無駄がない」


そしてちらっとこちらを見る。


「生活感もある」


「普通に暮らしてるってことか」


「まあな」


少し沈黙。

ユイが明るく言う。


「そういえばレイカさん、ここ来るの初めてですよね?」


「ああ」


「どうですか?」


「落ち着くな」


レイカは素直に答えた。


「……意外だ」


「意外?」


「もっと殺風景かと思っていた」


「なんでだ」


「戦闘ばかりしている人間の部屋はそういうものだ」


相棒がくすっと笑う。


「それは偏見じゃの」


「かもしれないな」


レイカも少し笑った。

そのまま、しばらく雑談が続く。

ユイが話し、相棒が軽く返し、俺は適当に聞く。


レイカはその間、ほとんど口を挟まない。

だが視線はずっと動いている。


部屋の中を観察している。

棚、窓、配置。

そして時々、俺と相棒を見る。


何かを測るように。


しばらくして、ユイが言った。


「なんかいいですね、こういうの」


「何が」


「ダンジョンじゃなくて普通に話すの」


相棒が言う。


「平和じゃからの」


「はい」


ユイは笑う。

レイカがぽつりと呟いた。


「平和、か」


その言い方は少しだけ違った。

静かで、重い。だがすぐにいつもの調子に戻る。


「まあ悪くない」


そしてこちらを見る。


「君たち」


「本当に何者だ?」


唐突だった。

ユイがびくっとする。


「ちょ、ちょっとレイカさん!」


「いや」


レイカは軽く手を振る。


「深い意味はない」


「ただの興味だ」


俺は肩をすくめる。


「ただのフリーだ」


「そうか」


レイカはそれ以上は追及しなかった。だが、目だけは笑っていなかった。

納得していない。それは明らかだった。

それでも、空気は崩さない。


「まあいい」


レイカは背もたれに軽く寄りかかる。


「今はそれで」


そのまま、四人で過ごす時間が続いた。

ユイが笑い、相棒が返し、レイカが静かに観察する。


穏やかな時間。


だがその裏で――確実に何かを見抜こうとしている視線が、一人分あった。


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