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異世界から帰ってきただけだが?  作者: Саша


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28話

チャリ乗ってたらすっ転びました。

部屋での時間は、思ったより長く続いていた。

ユイはソファに座ったまま、相棒と話している。内容はどうでもいい雑談だ。


その横で、レイカは相変わらず静かに周囲を見ていた。


ふと。


「そういえば」


ユイが立ち上がった。

本棚の方へ歩いていく。


「さっきの本、ちょっと気になってて」


俺はちらっとそちらを見る。

ユイが一冊手に取った。


あの本だ。


「これ」


表紙を見ながら首を傾げる。


「なんて書いてあるんですか?」


その一言で、空気がほんの少しだけ変わった。


レイカの視線が静かにそちらへ向く。

相棒も、少しだけ動きを止めた。


ユイは気づいていない。ただ純粋に聞いているだけだ。


「読めないですよね、これ」


「デザインかなって思ったんですけど」


俺は少しだけ考えてから答えた。


「文字だ」


「え?」


ユイが目を丸くする。


「文字なんですか?」


「ああ」


「なんて書いてあるんです?」


少しだけ沈黙。相棒が横から言う。


「昔の言葉じゃ」


「昔の言葉?」


「今はあまり使われておらん」


嘘ではない。ただし意味は違う。

ユイは「へぇ」と頷く。


「じゃあ読めるんですか?」


俺は軽く頷いた。


「まあな」


「すごいですね」


ユイは素直に感心している。

レイカは何も言わない。ただ、じっと見ている。


「中ってどんなこと書いてあるんですか?」


ユイがページをめくろうとする。

だが。


「読めないぞ」


「え?」


「文字が分からないと意味がない」


「あ、そっか」


ユイは少し残念そうに笑う。


「どんな内容なんです?」


俺は少しだけ視線を落とした。

ほんの一瞬、昔の記憶がよぎる。


「……記録みたいなものだ」


「記録?」


「昔の戦いとか」


「戦い?」


「あと、魔法の使い方」


ユイの目が少し輝く。


「え、それめっちゃすごくないですか?」


「まあ」


「教本みたいな感じですか?」


「そんなところだ」


相棒が小さく言う。


「昔の仲間から貰ったものじゃ」


ユイがそちらを見る。


「仲間から?」


「うむ」


相棒は淡々と続ける。


「もうおらぬがな」


ユイの表情が少しだけ変わる。


「あ……」


「ごめんなさい」


「気にするな」


俺が言う。


「昔の話だ」


ユイは小さく頷いた。


「……大事な本なんですね」


「まあな」


ユイはそっと本を閉じて、元の場所に戻した。


「勝手に触ってすみません」


「別にいい」


そのやり取りを、レイカはずっと見ていた。

静かに。何も言わず。

だが、確実に何かを理解した目だった。


少しして、レイカが口を開く。


「その本」


「魔法書か?」


ユイが「え?」と声を出す。

俺は短く答える。


「似たようなものだ」


レイカは小さく笑った。


「なるほど」


「どうりで」


それ以上は何も言わない。だが、納得したような顔だった。


完全ではない。だがただの本じゃないことは分かったらしい。


ユイはまだ普通に話を続けている。


「でも読めるのすごいですね」


「どこで覚えたんですか?」


俺は適当に答える。


「昔にな」


「またそれですか」


ユイが苦笑する。

相棒が横で小さく笑う。


「主は説明が雑じゃからの」


「だな」


そのまま、またいつもの空気に戻る。

ユイは楽しそうに話し、相棒が返す。


だがレイカだけは違った。

背もたれに寄りかかりながら、目を細める。


(昔の仲間、か)


(読めない文字の本)


(戦闘記録と魔法の記述)


そして


(あの戦い方)


 小さく息を吐く。


(やっぱりな)


確信には至らない。

だが普通ではないという確信だけは、はっきりしていた。


レイカは小さく笑う。


「面白いな」


誰にも聞こえないくらいの声で、そう呟いた。

もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。

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