25話
誰か代わりに就活して欲しい
数日後の昼過ぎ。
インターホンが鳴った。
俺はソファから立ち上がり、玄関に向かう。
ドアを開けると、そこにはユイが立っていた。
「こんにちは!」
元気よく頭を下げる。
「こんにちは」
ユイは少しきょろきょろと周りを見る。
「本当に家あったんですね」
「当たり前だ」
後ろから相棒の声がした。
廊下の奥からゆっくり歩いてくる。
いつもの和服姿。
ユイが軽く頭を下げる。
「こんにちは」
「うむ」
相棒は軽く手を振った。
「上がるとよい」
「お邪魔します!」
ユイは少し緊張した様子で靴を脱いだ。
リビングに入る。
「思ったより普通ですね」
ユイが周りを見ながら言う。
「普通だろ」
「もっとこう……」
「秘密基地みたいなの想像してました」
「なんだそれ」
ユイはソファに座る。
相棒はそのまま俺の隣に座った。
距離が近いというか、肩が軽く当たっている。
ユイがそれをちらっと見る。
「仲いいですね」
「そうか?」
「近いです」
相棒が首を傾げる。
「普通じゃろ」
そう言いながら、なぜか俺の腕を軽く掴む。
ユイが少し困った顔をする。
「いや、普通……ですか?」
「うむ」
相棒は平然としている。
俺は特に気にしない。
しばらく沈黙。
ユイが口を開いた。
「そういえば」
「二人っていつから一緒なんですか?」
相棒が俺を見る。
俺は少し考えてから答えた。
「結構前」
「どれくらいですか?」
「かなり前」
ユイが苦笑する。
「ざっくりですね」
相棒が小さく笑う。
「主とは長い付き合いじゃ」
「昔からですか?」
「まあそんな感じ」
ユイは少し考える。
「やっぱり冒険者歴も長いんですか?」
「どうだろうな」
俺は曖昧に答えた。相棒は特に何も言わない。
ユイは少し首を傾げる。
「でも」
「二人とも戦い方が慣れすぎてるんですよね」
俺は肩をすくめる。
「慣れただけ」
「それにしては強すぎます」
相棒が小さく笑う。
「主は昔から魔法が得意でな」
「そうなんですか?」
「うむ」
相棒は俺の方をちらっと見る。
「昔からよく使っておった」
ユイは少し感心した顔をする。
「へぇ」
それからふと思い出したように言う。
「そうだ」
「これ持ってきました」
バッグから袋を出す。
「ケーキです」
「この前のお礼」
俺は少し驚く。
「別に気にしなくていい」
「気にします」
ユイは笑った。
「スタンピードの時、本当に助けてもらいましたし」
相棒が言う。
「気にせんでよいのに」
「でも持ってきたかったんです」
袋を机に置く。
「三人分あります」
袋を開ける。
ショートケーキだった。
「ちゃんとしてるな」
「美味しい店なんです」
相棒が少し興味ありそうに見る。
「ほう」
三人でケーキを食べる。
少し静かな時間が流れる。
ユイがぽつりと言った。
「なんか」
「不思議です」
「何が」
「二人といると」
「変に安心するというか」
相棒が少し笑う。
「それは良いことじゃ」
「普通の探索者と違う感じがします」
ユイは少し考える。
「なんていうか……」
「落ち着いてる?」
俺はケーキを食べながら言う。
「長く生きてるからかもな」
ユイが笑う。
「おじいちゃんみたいなこと言ってますよ」
相棒がくすっと笑う。
「確かに」
そのまま、のんびりした時間が続く。
ユイがふと思い出したように言った。
「そういえば」
「二人って」
「夜はどうしてるんですか?」
「夜?」
「寝るときです」
俺は普通に答える。
「寝てる」
「いやそれは分かります」
ユイが少し困った顔をする。
「部屋とか」
「別ですか?」
相棒が先に答えた。
「同じ布団じゃ」
ユイが固まる。
「……え?」
相棒は平然としている。
「昔からそうじゃ」
ユイが俺を見る。
「……本当ですか?」
「まあ」
ユイの顔が少し赤くなる。
「そ、そうなんですね」
相棒はなぜか俺の肩にもたれた。
「冬は暖かいぞ」
「いやそういう問題じゃ……」
ユイが小さく呟いた。
「やっぱり距離感おかしいですよこの二人……」




