20話
相棒と呼べる人が欲しかったな
通路を進んでいると、少しずつ空気が変わってきた。
下の階層に近づくと、魔物の気配も強くなる。
ユイが前を見ながら言う。
「この辺って、普段こんなに魔物出ましたっけ?」
「さあな」
実際、少し多い気がする。
昨日のスタンピードの影響かもしれない。
その時だった。
奥の暗がりから、重い足音が響く。
ズシン。
ズシン。
ユイが剣を構える。
「来ます」
通路の奥から現れたのは、大きな影だった。
背の高いオーク。普通のオークより明らかに大きい。
筋肉も分厚い。
「……でかいな」
「オークファイターですね」
ユイが言う。通常のオークより強い個体だ。
オークファイターはゆっくりとこちらを見る。
そして咆哮した。
「グオォォ!」
地面を蹴って突っ込んでくる。
速い。ユイが前に出た。
「私やります!」
剣を構え、踏み込む。
オークの棍棒が振り下ろされる。
ユイは横に回避。
すぐに懐へ入る。
斬る。だが金属音が鳴る。
「硬っ……!」
浅い。オークファイターはすぐに腕を振る。
ユイが後ろへ跳ぶ。
距離を取る。
「普通のオークより全然硬いですね」
「無理そうか?」
「いけます!」
ユイは剣を構え直す。魔力を集中させる。
オークファイターが再び突進してくる。
ユイは正面から踏み込んだ。
剣を振る。
フェイント。
すぐ横に回る。
「ウィンドカッター!」
風の刃が飛ぶ。オークの肩を裂く。
血が飛ぶだがまだ倒れない。
怒ったオークが棍棒を振り回す。
ユイが回避。
床を蹴る。
距離を取る。
「ファイア!」
火球が飛ぶ。胸に直撃。
オークファイターがよろめく。その隙に、ユイが一気に踏み込む。
剣を振り抜く。首元。
深く入った。
オークファイターが崩れる。
ドン、と大きな音を立てて倒れた。
静かになる。
ユイが息を吐いた。
「……倒しました」
「おう」
「いい動きじゃ」
相棒も頷く。ユイは少し嬉しそうに笑った。
「前より戦えるようになってきました」
「確かに」
さっきの戦い方は悪くなかった。
魔法と剣の使い分けもできている。
ユイは剣を収めながら言う。
「でも二人だったら一瞬で倒しますよね」
「まあな」
「やっぱり強いです」
ユイは苦笑する。
そして少し考えてから言った。
「そういえば」
「ん?」
「二人って、強い魔物と戦うの慣れてますよね」
「まあ」
「さっきも全然焦ってなかったですし」
ユイは不思議そうな顔をする。
「普通の冒険者って、こういう魔物出たら結構焦るんですよ」
「そうなのか」
「はい」
ユイは少し笑う。
「でも二人は、なんていうか……」
言葉を探す。
「もっと強い魔物と戦ったことある感じです」
相棒が横でくすっと笑う。
「どう思う、主」
「さあな」
ユイがこちらを見る。
「ありますよね?」
俺は少し考える。
「まあ……少しくらいは」
「やっぱり」
ユイは頷いた。
「いつかそういう話も聞いてみたいです」
「気が向いたらな」
ユイは「はい」と笑った。
そして前を向く。
「じゃあもう少し潜りましょう」
「そうだな」
三人でまた通路を進み始める。
結局、その日は20階層程度まで三人は潜った。
もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。




