18話
章で区切ろうと思いましたが、使い方が分からないので辞めました。
朝。
特に予定は決めていなかったが、気づけば俺たちは東京ダンジョンの入口に来ていた。
人の数はいつもと同じくらいだ。
学生っぽいパーティや、慣れていそうな冒険者もちらほらいる。
相棒が周囲を見ながら言う。
「今日は普通じゃの」
「昨日みたいなのは毎回起きないだろ」
そんな話をしていると、入口の近くで手を振る人影が見えた。
「おーい!」
ユイだった。
駆け寄ってくる。
「おはようございます!」
「おはよう」
「今日は潜るんですか?」
「まあ、そのつもり」
ユイは少し嬉しそうに笑った。
「よかった。私も潜ろうと思ってたんです」
昨日のスタンピードのあとだ。
普通なら様子見する冒険者も多いが、ユイはあまり気にしていないらしい。
俺たちはそのままダンジョンに入る。
石の通路。ひんやりした空気。
いつもと変わらない光景だった。
「今日はどのくらいまで行きます?」
「適当だな」
「練習もするんですよね?」
「そうだな」
少し進むと、スライムが現れる。
ユイが剣を抜いた。一歩踏み込み、斬る。
スライムはそのまま崩れた。
「うん、悪くない」
「本当ですか?」
「前より動きが良くなってる」
ユイは少し照れたように笑う。
そのまま進む。
ゴブリンが数体出てきた。
「やってみます!」
ユイが前に出る。剣を振るい、一体。
すぐに距離を取る。
「ファイア!」
火球が飛ぶ。ゴブリンを一体焼く。
残りは俺が斬った。
戦闘が終わる。
「どうでした?」
「いい感じだな」
「魔法も安定してきた」
相棒も頷く。
ユイは少し嬉しそうだった。
歩きながら、ユイがちらっとこちらを見る。
「……そういえば」
「ん?」
「二人って、どこでそんなに強くなったんですか?」
やっぱりそこを聞くか。
俺は少し考える。
「色々だな」
「色々?」
「長く戦ってた」
嘘ではない。
ユイは納得したような、していないような顔をする。
「でも……」
少し迷ってから言った。
「昨日のあれ、普通じゃなかったですよ」
「どれ?」
「スタンピードのやつです」
そりゃそうだ。
普通はあんな風に止まらない。
ユイは続ける。
「あと、あの魔物」
「異常個体か」
「そうです。あれ、私のギルドの人でも倒せるかどうかってレベルです」
なるほど。ユイの所属しているギルドはそこそこ強いらしい。
でも、確かに普通の冒険者なら苦戦する相手だった。
ユイが少しだけ真面目な顔になる。
「二人って……」
言葉を探す。
「結構すごい人ですよね?」
相棒が軽く笑う。
「普通じゃ」
「いや嘘だろ」
思わず突っ込む。ユイはくすっと笑った。
でも、まだ少し気になっている様子だ。
「ギルドとか入ってないんですか?」
「入ってない」
「なんでです?」
「特に理由はない」
面倒だから、とは言わないでおく。
通路の奥からオークが出てきた。
三体。ユイが剣を構える。
「やります」
一体目。斬る。
二体目。
「ウィンドカッター!」
風の刃が飛ぶ。
オークの腕を切り裂く。最後の一体を相棒が一瞬で斬った。
ユイが少し息を吐く。
「……強いですね」
「お前も十分強い」
「まだまだです」
ユイは苦笑する。そして、少しだけ小声で言った。
「でも、いつか二人くらい強くなれたらいいな」
その言い方は少し真剣だった。
俺は肩をすくめる。
「無理しなくていい」
「え?」
「強くなるのは時間かかる」
実際そうだ。
俺たちだって―何十年もかかった。
ユイは知らない。俺たちの時間の長さを。
でも、今はそれでいい。
ダンジョンの奥からまた魔物の気配がする。
「行くか」
「はい!」
ユイが前に出る。
少しずつ、確実に強くなっている。
その様子を見ながら、俺たちはゆっくりと下の階へ進んだ。
そしてユイはまだ気づいていない。
二人の過去が、普通の冒険者のものではないことを。
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