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異世界から帰ってきただけだが?  作者: Саша


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17話

まえがきはないからねー

夜。静かな時間だった。

外の音もほとんど聞こえない。

今日の戦いの余韻が、まだ体に残っている。


「……スタンピードなんて、久しぶりだったな」


俺がそう言うと、向かいに座っていた相棒が小さく頷いた。


「うむ。あの程度なら、昔に比べれば可愛いものじゃ」


少しだけ笑う。確かにそうだ。

あの世界に比べれば、今日の戦いなんて騒ぎのうちに入らない。


しばらく沈黙が流れる。

やがて相棒がぽつりと言った。


「主よ」


「ん?」


「懐かしくなったか」


俺は少し考えてから答えた。


「……まあな」


東京のダンジョン。スタンピード。異常個体。

どれも、あの世界では日常のようなものだった。

気づけば、自然と口が動いていた。


「最初に飛ばされた頃は、もっと酷かった」


天井をみやげて思い出すのは、あの時の空気だ。

魔王軍が世界を押し潰していた頃。

人間は負け続けていた。街は燃え、村は消え、国は崩れた。

俺があの世界に飛ばされた時、もう戦況はほとんど決まっていた。


人間が勝てるはずのない戦争。

それが続いていた。


「最初は、ただの兵士だったな」


「すぐ死にそうな顔をしておった」


「うるさい」


苦笑するが実際そうだった。

魔物は強かった。

魔王軍の幹部なんて、人間が数十人集まっても勝てない。


それでも人は戦っていた。

勝てないと分かっていても、仲間は、何度も死んだ。

昨日まで笑っていたやつが、次の日にはいない。

そんなことが当たり前だった。


俺も何度も死にかけた。いや、実際かなり死にかけた。


「左手を失った時は、本気で終わりだと思った」


相棒が静かに言う。


「その時はまだ会っておらんの」


「ああ」


あの頃の俺は、ほとんど一人だった。

戦場を渡り歩きながら、ただ生き残っていただけ。

右目もその頃に潰れた。魔王軍の化け物にやられた。


普通ならそこで終わりだ。

片腕がなくて、片目も見えない兵士なんて、戦場では足手まといにしかならない。

でも、なぜか生き残った。


「なぜか和の国に行ったんだったな」


海を越えた先にあった、静かな国。

あの頃はもうほとんど滅びかけていた。

魔王軍に侵略され、人も少なくなっていた。

俺はただ、流れ着くようにそこへ行った。


「山の中で祠を見つけた」


小さな祠だった。壊れかけていて、誰も手入れをしていない。


中には、一本の刀があった。


古い刀だった。でも、妙に気配が強かった。


「触ったら怒られた」


相棒が少し笑う。


「当然じゃ。いきなり掴むとは思わんかった」


「普通は祠に刀があったら取るだろ」


「普通は取らん」


まあ、そうかもしれない。

あの時の俺は、もうほとんどやけくそだった。

刀を掴んだ瞬間。世界が変わった。

頭の中に声が響いた。


今でもはっきり覚えている。

静かで、でも妙に偉そうな声だった。


『契約するか?』


そんな感じだったと思う。


「主は迷わず頷いた」


「迷ってる余裕なかったからな」


あの時の俺は、片腕がなくて、片目も見えない。戦場に戻れば確実に死ぬ。

だから契約した。それが始まりだった。


それから本当に長かった。

最初は弱かった。力の扱いも下手だった。

魔法もろくに使えなかったが、でも、生き残った。

戦って、逃げて、また戦って、少しずつ強くなった。


仲間もできた。そしてまた、失った。

それを何度も繰り返した。魔王軍との戦いは長かった。


十年。二十年。

それでも終わらない。最終的に魔王を倒すまで、何十年もかかった。


「気づいたら世界が平和になっていた」


「主が全部ぶっ壊したからの」


「お前もだろ」


魔王軍を倒したあとも、すぐに終わったわけじゃない。

世界はボロボロだった。国も街もほとんど残っていない。

そこから復興が始まった。それにも、また長い時間がかかった。


百年。二百年。

俺たちはその間も生き続けた。


色んな国を回った。街を作るのを手伝ったり、魔物を掃除したり。


気づけば何百年も経っていた。

静かな空気の中で、相棒が言う。


「長かったのう」


「……そうだな」


でも、不思議と悪くない時間だった。

しばらく沈黙が続く。

やがて相棒が軽く伸びをした。


「さて」


「ん?」


「明日はどうする?」


俺は少し考える。特に予定はない。

ダンジョンはまた落ち着くだろうし管理局も動いているはずだ。


「……適当でいいか」


「いつも通りじゃな」


「潜るかもしれないし」


「潜らんかもしれん」


そんな、どうでもいい話。でもそれが妙に心地よかった。

あの世界では、こんな時間はほとんどなかった。


戦いばかりだったから。

相棒が静かに言う。


「主」


「ん?」


「今の世界は平和じゃ」


「……ああ」


「少しはのんびりしても良いのではないか」


俺は少し笑った。


「考えとく」


次の日に何をするかなどまだ決めていない。でもそれでいい気がした。

長い戦いのあとで、ようやく手に入った時間だから。

これ描かなくても良いことに気づいた

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