16話
これで一旦区切りですね
地上、管理局
「……スタンピード、収束を確認」
オペレーターの声が静かな管制室に響いた。
大型モニターには、東京ダンジョンの魔力流動グラフが映し出されている。
数十分前まで暴れていた波形は、今は嘘のように落ち着いていた。
「あり得ない」
管理官の男が腕を組む。
「通常、スタンピードは最低でも数時間は続く。それが1時間もせずで終息?」
別の職員が端末を操作する。
「四十階層付近で急激な魔力崩壊を確認しています」
「原因は?」
「不明です」
室内が静まり返る。
ダンジョン内部は監視できない。設置できるのは入口周辺のみ。
内部は魔力干渉が強すぎて機械が持たない。
つまり――誰が何をしたのか分からない。
「冒険者ログは?」
「確認中です」
別の職員が答える。
「本日入場した冒険者は約三百名。ただし、四十階層まで到達できる者はかなり限られます」
「名前を出せ」
画面にリストが表示される。
上位ランクの冒険者。有名パーティ。
しかし。
「……該当者がいません」
「何?」
「スタンピード発生時、四十階層付近にいた可能性がある冒険者はいますが異常個体を単独で討伐できる戦力ではありません」
管理官の眉が動く。
「異常個体、確定なのか」
「魔力崩壊の規模から見て、ほぼ間違いありません」
普通なら、Aランク以上のパーティが必要。
だが、その痕跡がない。
「……つまり」
管理官が呟く。
「登録されていない戦力がいる」
部屋の空気が変わる。
「フリーの探索者ですか?」
「可能性は高い」
ダンジョンには、登録していない潜り手もいる。
違法ではない。だが実力が把握できない存在だ。
「入口カメラを確認しろ」
「はい」
映像が再生される。東京ダンジョン入口。
学生をはじめとした、冒険者、パーティなどなど。
「……この人数から絞るのは難しいですね」
「だが」
管理官は言う。
「四十階層まで潜れる実力者は限られる」
画面が拡大される。
「この二人」
映像に映る。男女の二人組。
武装は軽い。だが歩き方に迷いがない。
「登録は?」
「……ありません」
職員が答える。
「冒険者データベース未登録です」
「フリーか」
「ただ、特徴が少なすぎます」
女の方は刀を背負っている。男は軽装。
それだけ。
「顔認証も?」
「一般人データと一致なし」
管理官は少し笑う。
「面白い」
「確証はありませんが」
「いい」
椅子にもたれる。
「こういう連中は、大抵また来る」
ダンジョンに潜る者は、止まらない。
「入口監視を強化しろ」
「はい」
「それと――」
管理官は言う。
「見つけたら拘束するな」
職員が顔を上げる。
「え?」
「勧誘する」
部屋が少しざわつく。
「異常個体を倒せる戦力だぞ?」
「管理局の戦力にするべきだ」
「しかし未登録ですよ?」
「だからだ」
管理官は笑う。
「野良のままにしておく方が危険だ」
その選択肢はこの先どう運命を変えるかは誰にもわからない。
まぁ…お役所って好きにならんよね
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