115話
翌朝。
暑い、とにかく暑い。
まだ意識は半分しか起きていない。
だが暑いという事実だけは分かる。
「……」
目を開ける。
天井、朝日。
そして動けない。
「何でだ……」
原因を確認する。
右に相棒。
寝相が悪いわけではない。
だが、いつの間にか肩に頭を乗せている。
完全に熟睡中だ。
左にシエル。
抱きついている、腕だけではない。
足まで絡まっている。
逃がす気がない。
「……」
正面に葵。
何故か布団を奪っている。
しかも寝返りの結果なのか、半分くらいこちらへ寄ってきていた。
「お前ら……」
暑い原因が全部揃っていた。
異世界では野営も多かった。
寒い場所もあった。
だから昔はこうして固まって寝ることもあった。
だがここは日本。
しかも夏だから普通に暑い。
その時、シエルが少し身じろぎする。
「ん……」
そしてさらに抱きつく。
「暑い」
「……やだ」
寝言だった。
意味が分からない。
離れろと言ったのに返事だけしてさらに近付いてきた。
相棒も起きない。
葵も起きない。
完全に包囲されている。
しばらく格闘する。
数分後。
ようやく相棒が目を開けた。
「ん……朝かの」
「助けろ」
「何をじゃ?」
寝ぼけながら聞いてくる。
「暑い」
「確かに暑いの」
原因の一人が言うことではない。
相棒は少し周囲を見て状況を理解した。
「……ほう」
「何だその反応」
「人気者じゃな」
「違う」
その会話で葵も目を覚ます。
「んー……」
大きく伸びをしてこちらを見る。
「あ」
「何だ」
「景斗埋まってる」
「見れば分かる」
葵が笑う。
その声でシエルも起きた。
「……朝?」
「ああ」
シエルは数秒考え。
自分が抱きついていることに気付く。
だが離れない。
「おい」
「?」
「離れろ」
「暑い?」
「暑い」
「そっか」
頷く。
そしてさらに抱きつく。
「何でだ」
「落ち着く」
相棒と葵が吹き出した。
「ははは」
「昔から変わらぬの」
結局、全員が布団から出るまでさらに十分かかった。
そして朝食の席。
冷たい麦茶を飲みながら葵がぽつりと言う。
「今日も平和だな」
「そうだな」
俺が答える。
その横でシエルが当然のように腕を掴んでいた。
本当に平和な朝だった。
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