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異世界から帰ってきただけだが?  作者: Саша


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113/169

113話

夕方、家。

久しぶりに、本当に静かな一日だった。


ダンジョンから戻り姫を見送り、レイカとユイも帰った。


今はいつものメンバーだけ。

リビング、ソファ、テレビ。


平和だった。

葵が床に寝転がりながらゲームをしている。


「平和だなぁ」


「そうだな」


「最高だなぁ」


「そうだな」


同じやり取りを三回くらい繰り返している。

相棒が紅茶を飲みながら呆れる。


「お主、完全にだらけておるの」


「数百年働いたんだから休ませろ」


「それはそう」


俺も否定できない。

異世界で何百年。

戦争、探索、魔王軍、ダンジョン深層。

色々やった。


今さら普通の会社員みたいな生活を送れと言われても無理だろう。


その時シエルが隣へ来る。

そして当然のように頭を差し出す。


「?」


「撫でろってことか」


「うん」


最近は日本語もかなり上達してきた。

まだ片言な部分もあるが普通に会話できる。

俺が頭を撫でるとシエルは満足そうに目を閉じる。


相棒が苦笑する。


「昔から変わらぬな」


「だって楽」


「理由が酷い」


葵が笑う。

その時、冷蔵庫を開けた相棒が固まる。


「……む」


「どうした」


「食材が少ない」


全員が沈黙する。


冷蔵庫を見る。

本当だった。


飲み物はある。

だが食材が少ない。


かなり少ない。

葵が目を逸らす。


「……そういえば」


「何だ」


「昨日夜中に色々作った」


「お前か」


相棒がため息を吐く。

シエルも冷蔵庫を覗く。


「本当だ」


「何か買いに行く?」


その一言で全員の視線が集まる。


数秒後。

葵が起き上がる。


「スーパーだ」


「スーパーじゃな」


「スーパーだな」


「スーパー」


意見が一致した。

数百年戦い続けた英雄達の結論が夕飯の買い出しだった。


近所のスーパー。夕方。

普通の人達が買い物をしている。

主婦、学生、会社帰りのサラリーマン。


シエルは野菜コーナーを見ている。


「安い」


「普通だぞ」


「異世界なら高い」


「比較対象がおかしい」


葵はお菓子コーナー。

相棒は肉コーナー。


完全に自由行動だった。

そして俺はカゴを持たされている。


「便利な収納係じゃな」


相棒が当然のように商品を入れる。


「俺が持つのか」


「力があるじゃろ」


「そういう問題か」


そんなやり取りをしていると。

シエルが何かを持ってくる。


「景斗」


「ん?」


「これ」


見せられたのはアイスだった。


「食べたいのか」


「うん」


即答。

少し考える。


「一本なら」


「やった」


嬉しそうだった。

その様子を見て何故か少し安心する。

世界の危機も、深層も、ガルドのことも全部消えたわけじゃない。

でも今はこういう時間を過ごせている。


それだけで十分だった。


そしてその日の夜。


帰宅後。


ソファでアイスを食べながら。

シエルがぽつりと呟く。


「日本」


「いい国」


葵が笑う。


「だろ?」


相棒も頷く。


「認めるの」


俺も少し笑った。


「ああ」


本当に平和でいい国だった。

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