104話
黒い空が揺れる。
深層側全体が震えていた。
俺は楔へ魔力を流し込み続ける。
巨大結晶。
そこへ広がる封印陣。
光。異世界式。
そして神代術式の簡易再現。
空間が軋む。
成功しかけている。
だが代わりに背後の戦闘は、さらに激しくなっていた。
『■■■■■――!!』
巨大な怪物の咆哮。
黒い衝撃波。
大地が割れる。
その中心、ガルドが戦っていた。
一人で剣一本で昔と同じように。
「っ……!」
俺は歯を食いしばる。
楔が暴れる。
深層側が抵抗している。
簡単には閉じない。
その時ガルドが吹き飛ばされる。
轟音。
黒い岩壁へ叩きつけられる。
「ガルド!」
叫ぶ。
だが男は立ち上がる。
ボロボロの身体。
片腕は既に侵食されて黒く染まっていた。
それでも剣を握っている。
「『……集中しろ』」
低い声。
「『失敗すれば、全部終わる』」
その通りだった。
俺は再び封印へ集中する。
結晶の亀裂が広がる。
あと少しあと少しで閉じる。
だが巨大な怪物が、こちらへ向きを変える。
赤い瞳。
狙いは俺。
封印を止める気だ。
怪物が動く。
その瞬間、ガルドが前へ飛び込む。
「『行かせない』」
剣が振り下ろされる。
黒い閃光。
怪物の腕が裂ける。
だが反撃。
巨大な尾がガルドを直撃する。
嫌な音。
身体が吹き飛ぶ、血。
黒い地面へ転がる。
「……っ!」
魔力が大きく揺らぐ。
まずい。
本当に限界だ。
だがガルドは、また立ち上がる。
ふらつきながら。
剣を支えに。
「『……昔から』」
小さく笑う。
「『お前は、後衛の癖に前出過ぎだ』」
昔、よく言われた言葉。
少しだけ記憶が蘇る。
戦場、焚き火、仲間。
くだらない会話。
そして数百年の戦い。
「……お前こそ」
「一人で抱えすぎだ」
「『性分だ』」
ガルドが笑う。
その瞬間。、怪物が咆哮。
黒い魔力砲撃。
直撃コース。
避けられない。
だがガルドが前へ出る。
「やめろ!!」
叫ぶ、間に合わない。
轟音。
黒い光がガルドを飲み込む。
空間が揺れる、静寂。
そして光の中から、男の声が聞こえた。
「『……終わらせろ』」
最後の声。
次の瞬間。
ガルドの魔力が爆発する。
凄まじい黒い斬撃。
怪物ごと空間を切り裂く。
轟音、赤い空が割れる。
そして巨大な怪物が崩れ落ちた。
同時に封印陣が完成する。
結晶へ四本の楔が刺さる。
光、巨大な門が閉じ始める。
深層側が崩れる。
空間が壊れていく。
だが。
「……ガルド!」
叫ぶ、返事はない。
黒い光の中。
男は立ったまま静かに笑っていた。
昔と同じように仲間を逃がす時の顔で。
もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。




