103話
深層側。
黒い大地を駆ける。
背後では轟音が響いていた。
ガルドが戦っている。
一人で大量の深層存在を押し止めながら。
昔と同じ背中。
だが。
「……っ」
長くは持たない。
分かっていた。
俺は前を見る。
巨大な黒い結晶、核。
近づくほど、魔力濃度が上がっていく。
空間が歪む。
視界すら揺れる。
その時。
『■■■■』
気配、横。
黒い影が飛び出してくる。
速い。
だが。
「邪魔だ」
雷撃。
瞬間展開。
直撃。
黒い存在が吹き飛ぶ。
止まらず走る。
結晶はすぐ目の前。
巨大、山みたいなサイズ。
そして中心に、亀裂が見えた。
「……これか」
姫の言っていた核。
異世界と日本。
境界の歪み。
その時、結晶が脈打つ。
ドクン。
嫌な感覚。
そして頭に声が響く。
「『帰れ』」
「『深層は終わらない』」
「『何度でも繋がる』」
精神干渉。
だが聞き慣れている。
「知ってる」
俺は結晶へ手を伸ばす。
魔法陣展開。
異世界式封印。
そして葵が作った楔を取り出す。
「……持ってくれよ」
楔を突き刺す。
瞬間。
轟音。
結晶全体に光が走る。
空間が震える。
成功しかけている。
だが。
『■■■■■――!!』
咆哮。
巨大な黒い腕が結晶の裏から現れる。
今までよりデカい。
完全な怪物。
赤い瞳がこちらを見た。
その瞬間、本能が警告する。
死ぬ。
今までで一番危険だった。
黒い腕が振り下ろされる。
避ける。
地面が消し飛ぶ。
余波だけで吹き飛ばされる。
「っ……!」
立て直す。
だが二撃目が来る。
速い。
間に合わない。
その瞬間。
――斬撃。
黒い腕が弾かれる。
轟音。
「……ガルド」
黒い鎧の男が立っていた。
全身ボロボロ。
鎧は砕け。
魔力も乱れている。
だがまだ立っていた。
「『間に合ったか』」
「お前……」
「『封印を続けろ』」
短く言う。
背後では、さらに大量の瞳が近づいていた。
時間がない。
俺は歯を食いしばる。
楔へ魔力を流し込む。
光、結晶へ亀裂が広がる。
封印が始まる。
だが巨大な怪物が咆哮する。
空間そのものが揺れる。
ガルドが剣を構える。
「『……景斗』」
「ああ」
「『最後まで失敗するなよ』」
その声、覚悟を決めた声だった。
そしてガルドが、巨大な怪物へ突っ込む。
黒い魔力が爆発する。
斬撃、轟音。
深層側全体が揺れた。
俺は封印を続ける。
だが背後でガルドの魔力が、急激に弱くなっていくのを感じていた。
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