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異世界から帰ってきただけだが?  作者: Саша


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102/155

102話

「『……久しぶりだな』」


静かな声。


「『勇者』」


懐かしい呼び方。

だがありえない。


「……なんで生きてる」


俺は低く聞く。

男は少しだけ笑った。


「『それは、こちらの台詞だ』」


黒い長剣を肩へ担ぐ。

昔と変わらない仕草。

そしてその顔。


忘れるはずがない。

かつての仲間。


最後まで前線で戦っていた男。


「……ガルド」


名前を呼ぶ。

男――ガルドは静かに頷いた。


「『覚えていたか』」


「当たり前だ」


空気が揺れる。

だが再会を喜ぶような空気ではない。

ガルドの身体からは、深層側の魔力が漏れていた。


侵食されている。

いや半分、同化している。


俺は剣へ手を掛ける。


「……何があった」


少し間.ガルドは赤い空を見る。


「『お前達が帰った後』」


「『魔物側は止まらなかった』」


静かな声。


「『残党』」


「『歪ミ』」


「『終わり切らなかった戦い』」


重い言葉。


「『だから俺は残った』」


その一言で、色々理解する。

あの日魔王を倒したあと皆、それぞれ帰っていった。


だが完全には終わっていなかった。

ガルドだけが残った。


「『封じ続けた』」


「『壊し続けた』」


「『……だが、限界だった』」


深層側の魔力が、男の身体を侵食している。

鎧も瞳も昔とは違う。

だが意識はまだある。


「……一人でやったのか」


「『他に居なかった』」


当然のように言う。

昔からそういう男だった。


前線で盾役。

最後まで残る奴。


俺は小さく息を吐く。


「馬鹿だなお前」


ガルドが少し笑う。


「『今さらだろ』」


その瞬間。

――ゴォォォッ!!

背後の巨大結晶が脈打つ。


核、深層側の中心。

ガルドの表情が変わる。


「『時間が無い』」


『「核を止めろ』」


「お前は」


「「俺は抑える』」


黒い剣を構える。

その先、闇の中から、無数の赤い瞳が現れ始めていた。


深層側の存在、大量。

空気が震える。


「『……行け』」


低い声。


『勇者』


その呼び方。

昔と同じ、少しだけ懐かしかった。

だが。


「一人でやる気か」


「『問題無い』」


「大ありだろ」


「『今の俺は、半分深層側だ』」


静かな言葉。


「『どうせ長くは持たない』」


空気が止まる。

ガルドは、自分がもう助からないと理解している。


だがそれでも戦う気だった。

昔と同じように。


「……っ」


俺は拳を握る。

まただ。


また一人で背負おうとしている。

その時門の向こうから声が響いた。


「『景斗ー!!』」


葵、相棒、シエル、皆の声。


まだ門は完全に閉じていない。

ガルドが小さく笑う。


「『……懐かしい声だな』」


「ああ」


『失うなよ』


その言葉の直後。

ガルドが前へ踏み出した。


黒い魔力が爆発する。


そして深層側の軍勢へ、一人で突っ込んでいく。


「『オオオオオオオオオッ!!』」


轟音。、剣閃。

黒い空間が裂ける。


俺はその背中を見る。

数百年前と変わらない。


最後まで前に立つ男。

そして俺は核へ向かって走った。

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