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3話 不幸兄弟の異能やいかに

洞爺くんは意外にも苦労人なんです。大丈夫?洞爺くん。いい野獣先輩紹介してあげようか?

俺が由紀の中2女子にあるまじき剛腕の前に倒れ、意識が戻り目に入ったのは知らない天井…では無く腐るほど見た俺の部屋の天井だった。


外を見るともう暗くなっていた。大分昏睡していたらしい。

「由紀…お前、加減って知ってるか?」

「さあー?私が知ってるのは14才の女の子の細腕に根を上げるぐらいに洞爺がヘタレって事だけよ♡」

「悪女め…」

俺がしげしげと呟くと花崎は、

「あの…先輩、大丈夫ですか?泡吹いてましたけど…」


「泡吹き…第2ステージか。」

「第2ステージ?」 

「ああ、由紀は物凄く暴力的でな。さっきみたいにアイアンクローを極められて失神するのは日常茶飯事なんだ。だから失神した直後の状態で負傷の度合いを判定するステージを独自に作った。」

「なんか癌みたいですね。」

「まあ似てはいるな。」


第1ステージが只の失神。第2ステージが今回、泡を吹いて失神。第3ステージから本格的にヤバくなり、皮膚が裂けて失神。第4ステージは本来即救急車の頭骨にヒビが入り失神。まあ由紀が少年院にぶち込まれる羽目になるから救急車は呼んだ事が無いが。


「まあそれは良いとして、今後の事だ。まずはお前ら二人に聞きたいんだが、世界がおかしくなった直後、直前、またはその近辺でなんちゃら付与的な事が聞こえなかったか?」

「ええ…確か聞こえました。なあ、由紀。」

「うん。なんか、らいこうしゃく…じょう?付与とか聞こえた気がする。けどなんで?」

らいこうしゃくじょう。らいこうしゃくじょうか、単純に字を当てるなら雷光錫杖って事か?


まだネットは…使える。外はあんな惨状なのに凄いなネット。まあそれも時間の問題だろう。直ぐさまグー●ル先生で検索を掛けた。

「こんな感じの棒をイメージしてみてくれないか。手の中に出す感じで。」

そう言ってスマホの画面に写し出された錫杖の画像を見せた。

「う、うん。」

由紀は戸惑いながらも何も文句を言わなかった。こんな非常事に失神させた事を負い目に感じているのか?凄く珍しい事だ。


「う~ん…うーん…!」

由紀は見るからに力んでいる。頑張ってイメージしているのだろうが、流石に無理か。俺がそう思った次の瞬間、由紀の右手に電流を放つ錫杖が現れた。パチパチバチバチといいながら金色に輝いているその様は、正に「雷光錫杖(らいこうしゃくじょう)」だった。


思わず俺は手を叩いていた。 

「おめでとう。由紀。それがお前の能力、雷光錫杖だ。多分。」

皆驚いていたが浩二が特に驚いていた。何処ぞの海賊王の話のように目玉と舌が飛び出しそうな勢いだ。花崎は呆けた顔で錫杖を見ている。

「綺麗…」

電気が付いていてもこれだけ輝いているのだ。電気を消したら更に綺麗に見える事は間違いなかった。


もっとも当の本人もかなり驚いていたが。

「え?何これ?え?バチバチ言ってるけど、熱くない…見るからに重そうなのにあんまり重くない…」

成る程、熱く無いし重くない…。物を出す系の能力は持ち主に最適化されているのかもしれないな。俺の魔弾もなんか手にフィットする感じあるし。


「とっ洞爺さん!あれどうやったんですか!僕もやりたいです!」

「どうやってと言うか世界がおかしくなった時に異能(アビリティ)…長いな。異能でいっか。で、異能なんちゃら付与と聞こえたんだよ。俺の場合は魔弾付与って聞こえたけど。由紀の場合はその異能が雷光錫杖だったんだろう。」

「魔弾!?何ですかそれ超かっこいいじゃないですか見せて下さいお願いします!」


相変わらず肺活量やばいな。

「ふふん、良いだろう。」

しかし、嫌な気分では無いのも確かだ。俺は一度宇喜多家に入ってから引っ込めていた戦強のハンドガンを手の中にイメージし、出現させた。

「かっけえ…僕にも出来ますかね!?」

「さあ、何付与って言ってたんだ?」

「確か、型だったと思います。」

「型か…」

型って言えば何だろうな。


「多分剣道の型だと思いますよ。僕中学まで剣道やってましたし。」

「剣道の型。どんな風に発動するんかね。」

「あの…型の話をし始めた辺りから頭の中に構えと動きが入ってきたんです。その動きをしたら発動出来ますか?」

「分からんけど、やってみたらどうだ?減る物じゃあるまいし。」

「そうですね…洞爺さん、のこぎりかなんかありますか?」


の、のこぎりか。

「日曜大工用の(なた)ならあるけど、それでいいか?」

「はい!大丈夫です!」

そう言って俺は戸棚の中からカバーを被せた鉈を取り出し、浩二に手渡した。


すると浩二は左手を上に向けて突き出すような形にして鉈の刃の方を下に向け左手と平行になるように構えた。

「一の型…」

そう浩二が呟くと鉈に下から順々に渦巻く用な旋風が纏い鉈の刃を正面に向けた直後、

「逆鳴り!」

浩二は目で追えるギリギリの早さで逆袈裟切りを空に放った。勿論カバーは付けたまま。が、それには人体を両断出来るのではと思わせるほどのプレッシャーがあった。


閑話休題


「よし、じゃあ異能の確認も済んだ事だしちゃっちゃっと風呂入って寝てしまおう。いつ電気が止まるか分からんからな。」

「はーい!」

「はーい!」

「はーい!」

「うむ、良い返事。」


こうして全員が風呂に入り終えた所で、電気が消えた。

「きゃっ」

流石に最年少の由紀は驚いていたが大した事は無さそうだ。

さて、現在時刻は21時13分。六時に世界がおかしくなってから13

時間か。これだけ持ったという事は通常兵器がモンスターにも有効だと言うことを示してはいるが…まあ考えても仕方がない。


俺は思考を打ち切り、用意しておいた敷き布団で様々な事が有り過ぎた今日と明日への不安に思いを馳せながら泥の様に眠った。

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