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異世界で奴隷生活始めました:Retake  作者: 海峡 流
第一章 ザナウェル防衛戦
30/43

トロルスレイヤー

異常が起こったのはもう少しで森を抜けようかという所だ。

 先導していたイヴがピタリと止まる。


「待て」


 そして俺は今まで気づいていなかった頭についている耳をピンと立て、耳に手を当ててその場でゆっくりとぐるぐる回りだした。ちょっと可愛いな…

 そして俺から見て左を向いたとき、動きをピタリと止めた。


「…アイゼス、ビンゴだ」


 その言葉に俺はもちろん、アイゼスも首を傾げる。


「なんかがこっちに向かってきてる。木をなぎ倒しながらな。多分一匹だな」

「何…?」


 そんなことを話してるうちにだんだんとバキャとかメシィッとかいう木が折れる音が聞こえてきた。間違いなくバカでかい図体の何かだろう。


「なんにしろここはまずい!とりあえず森を出るぞ!」


 そう言うとイヴは走り出した。


「本当に【第六感シックス・センス】はよく当たるな…いくぞカナタ!」

「はい!」


 そうして俺たちは森を出た。


「クッソ!追ってきやがる!面倒だな!」


 草原に出るやいなやイヴが悪態を吐いた。


「とりあえず戦う準備をしよう。私とイヴが前衛、カナタは私たちのフォローだ」

「了解です」

「ああ」


 俺たちは急いで逆三角形のフォーメーションをとった。その間にも木が破砕される音が響いてくる。それにこれは…


「なんだなんだ…金属のこすれる音がするぞ…まさか《デュラハン》とかか…?」

「デュラハンだと?仮にそうだとしてもこんな真昼間から?しかもこんなに森の浅いところに?」


 なんて話してるのが前から聞こえてくるが何のことやらサッパリだ。さてと…構えとくかな。


「【ストレージ】」


 メメントモリを取り出す。


「【シェイド】【シェイド】…」


 とりあえず【シェイド】は五個作った。一匹なら十分対応できるだろ。あとは…


「…【ストレージ】」


 いちおう一か月前に武器屋で買った木の盾を出しておく。それに【武器支配アルマ・コントロル】をかけ、俺の周りに滞空させた。

 これで準備はいいな。


「…くる」


 準備が終わるのとほぼ同時に森から異形の怪物が飛び出してきた。体長は優に三mはもって見え、手にはバカでかいグレートソードを引きずっている。驚いたことに、細部とサイズこそ違うが、盗賊たちが身に着けていたような帯鎧バンデッドアーマーすらつけていた。

 顔は醜く、体は全体的に肉がたるんでいる。黄色く、ドロリと濁った瞳が俺たちを睥睨(へいげい)した。


「…まさか《トロル》か!」


 この魔物の名前はトロルというらしい。


「オオオォォォォォォォ!」


 そいつはバカでかい声で鬨の声を上げると、手に持っていたグレートソードをイヴに振り下ろした。


「甘ぇよ豚!」


 イヴはそれをハルバートで迎撃する。非常識なことにハルバートはグレートソードをきれいに打ち返し、トロルはそれに引きずられて体勢を崩した。相手が悪かったな…


「【ジャベリン】」


 その間に俺はトロルの足元へもぐらせていた影から膝に向かって【ジャベリン】を発動させた。それは深々とトロルの肉へ埋まり、どろどろとした血を膝から滴らせる。不健康だなぁ…


「【フレイム】!」


 今度はアイゼスが《フランベルジュ》に火を纏わせ、トロルに肉薄する。

 トロルは焦ってグレートソードでアイゼスをはたき落とそうとするも、それにあたるアイゼスではない。


「ハァァァ!」


 そしてトロルの眼を一閃。


「ウォォォォォォォン!」


 眼を焼かれたトロルは暴れ始めた。アイゼスはたまらず離脱する。

 最後は俺だ。【武器支配アルマ・コントロル】で滞空させていた盾をトロルの背後、ちょうど首を狙いやすい場所まで動かす。うん。これぐらいでいいだろう。


「【影踏み】」


 そして盾の上へと移動。ちょ!ま!結構怖い!

 バランスを崩しかけるも《ハイフィジカル》によって強化された身体能力で体勢を何とか立て直す。そしてトロルへ向かって跳躍した。


「ハッ!」


 スパッとでも言いそうな勢いで刃は抵抗なくトロルの首筋に潜り込み、綺麗に頭と体を両断した。

 トロルの体を伝って地面に降りると同時に、首から大量の血が噴水の如く吹き出す。

 その血で汚れないように全力で退避。さらに【シャドウ】を消して盾とメメントモリもなおす。


「ふぅ…」


 こうして対ゴブリン戦をノーカンとする俺のデヴュー戦は華々しく終わったのだった…

 感想?魔物めっちゃ怖い。いやホント。


「…まぁ、なんだ…宿に帰ってからいろいろ言おう」


 華麗にコンビネーションが決まったのにもかかわらずアイゼスは若干ご機嫌ナナメだった。あんまり派手に動けなかったからだろう。

 アイゼスが証明部位や使える素材をはぎ取りに行くと今度はイヴが寄ってきた。


「スゲェじゃねぇか!あの魔法どうやったんだ!つか誰に習った!」


 そう詰め寄ってくる。


「そうですね…」


 この場合なんと答えるべきか…というかイヴにはステータスのことはろくに話してないんだよな…


「今日宿に帰ってからステータスのことも含めて話したいんですが…」

「そういえばステータスをちゃんと見せてもらってなかったっけっか。いいぜ。それまで我慢してやる」


 そう言うとグレートソードの方へ向かっていった。イヴの背丈より高いと思うんだが…何に使うんだろうか。


「カナタ!こっちにこい!剥ぎ取りの仕方を教えてやる!」


 おっとそうだった。俺は奴隷なんだから働かないと…

 そして慌ててアイゼスの元へ走って行った。


「これぐらいでいいだろう」


 そろそろ吐くかも、と思い始めたところでアイゼスが切り上げようと言い出した。

 はぎ取ったのは主に皮だ。血の滴るやつを衣服なんかも入れてある【ストレージ】に入れるのはいささか抵抗があるんだが…まぁ仕方あるまい。ちゃんと分けて収納されるらしいが。

 ちなみにイヴはグレートソードを風魔法か何かでで操ろうとかしてるみたいだった。俺の真似だろうか…


 一回こっちに飛んできてアイゼスがキレたが。それでも懲りずに続けている。


「イヴ!帰るぞ!」


 アイゼスが一括するとイブは渋々といった様子でグレートソードを自分の【ストレージ】に直し、駆け寄ってくる。

 なんだかんだでもう昼頃だ。ザナウェルから聞き飽きた正午の鐘の音が風に運ばれてきた。


************************************

 ザナウェルに到着し、ギルドへと向かう。

 依頼達成の報告のためだ。あと、森の異変についての忠告。

 

 冒険者ギルドはお昼時ということもあって中々に混んでいる。

 そんな中でアリアさんの列に並んだ。

 十五分ほど待つと、順番が来る。


「こ、こんにちは。アイゼスさんに…イヴさん。あとカナタさんも」

「よぉアリア。元気にやってるか?」


 とイヴはアリアの頭をくしゃくしゃと撫でた。どうやら知り合いらしい。


「は、はい…どうされたんですか?討伐証明や素材売却の受付はあちらですけど…」

「いや、クエストの最中でちょっと気になることがあってな…ルガーはいるか?」

「ギ、ギルド長ですか…ちょ、ちょっと待って下さいね!」


 そう言って店の奥へパタパタと走っていた。しばらくすると帰ってくる。


「お会いになられるそうです…に、二階の応接間までお越しください…」

「ああ」 


 そういうとイヴはさっさと受付奥にある階段へ向かってしまった。


「行くか」

「…行くんですか?」


 アイゼスはさも当然そうにそれについていき、俺も仕方なくその階段を上った。


 少し進むと奴隷商館の時のような重厚な木の扉がしつらえている部屋があった。奴隷商館のよりはいささか装飾が多いが。

 イヴ、アイゼス、俺は順番にその部屋へと入っていく。


「よく来たな。まぁ座れ」


 そこにいたのはいかにも軍人といった体のハゲだった。

 まるで日本の甲冑かのような鎧を身に纏っている。こっちにもこんな鎧があるんだな…


 また、壁にはでっかい三叉の槍が飾られてあった。アイゼスの《ブリューナク》は細身の槍だが、対してこれは実に堅牢そうなつくりと一目でわかるほど太ましい。

 重量も結構ありそうだが…まぁ関係ないんだろう。魔法で解決だ。


 そうやって部屋を無遠慮に見回しているとふとギルド長らしい人と目が合った。その目は次にアイゼスに向けられる。

 その微妙な沈黙はイヴが無作法にどさっとソファ(?)に座ったことで終わりを告げた。俺とアイゼスも席に着く。


「森の様子がおかしい」


 単刀直入にアイゼスが切り出した。


「…たしかにそういう報告は上がってきとるな…して?何があった」

「増えることだけが取り柄のゴブリンの巣がほぼもぬけの殻だった。それだけじゃない、武装したトロルまで出てくる始末だ。そいつが持ってた武器が傑作だぜ。グレートソードだ。しかも新品のな!」


 シン、と空気が静まり返る。あ、遊んでたわけじゃなかったのか…


「ふむ…たしかにきな臭い…あいわかった。偵察隊を組織しておこう。…ところでウォーカー、その二人を紹介してもらっても?」


 そして驚いたことにこっちに話を振ってきた。まぁ気になるんだろうけど。このまま帰る流れかと思ったぜ…


「女のほうがアイゼスで、男の方がオレと、アイゼスの奴隷のカナタだ」 


 一応礼をしとく。


「アイゼスに、カナタか…私はルガー・ヘイトリッドだ。まぁ、よろしく頼むぞ。今日は下がっていい。ご苦労だったな」


 しかし偉そうなハゲだ。まぁギルド長やってるぐらいだし、座ってても強いということが何となく伝わってくる風ではあるな。首チョンパまでもっていければこっちのもんだが。


「ああ、そうだ、その武装したトロルにトドメをさしたのはそこのカナタで、アイゼスの方も結構強いんだが…どうだ?特例でDランクまで上げてくれないか?」

「…ふぅむ、そうさな。武装したトロルといえば危険D程度にはなるか。それにお前が直接刃を交えてそう言ってくるなら間違いもなかろう。いいぞ、上げておいてやる」

「おう、頼んだぜ。じゃあなルガー」


 あっさりとDランクになったな…ちょっとぽかんとしてるぞ…

 好都合といえば好都合なんだろうけどな…


 そのあと、素材と証明部位(目。強い魔物の目は死ぬと時々結晶化するらしい。結晶は魔物ごとに違うものなので結果証明部位になる、魔物が雑魚すぎると絶対に残らないんだとか)を売っぱらい、早々と宿に帰った。

 ちなみに今日の収入は十金貨。切り詰めれば一か月一金貨でも暮らせるらしいので三人で山分けにするにしても儲かる仕事だ。装備やら消耗品やらですべてぶっ飛ぶらしいけど。

お気に入り百人&総合評価三百突破しました!ありがとうございます。

今後もよろしくお願いします。

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