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異世界で奴隷生活始めました:Retake  作者: 海峡 流
第一章 ザナウェル防衛戦
28/43

パーティ

【至上の眠り】の効果でバッチリと目が覚めた。

 人生で初めて、というと大げさだがそんなに床に寝た経験がないのにも関わらず身体のどこも痛くない。


 おまけに寝た後特有の気怠さがないので俺は毎晩この魔法を使っている。アイゼスはそれが気に入らないらしいが…


 窓から外を見るとちょうど夜明け前のようだった。ちゃんといつもの時間に起きれたようだ。

 

 いつものように井戸へ水浴びに向かう。

 最初はおっさんの前で素っ裸になるのに抵抗があったが今じゃあなんのそのだ。ホモじゃないがな。

 世間話だって軽くこなして見せるさ。


「そういや昨日おめぇらギルドの訓練場で決闘したらしいじゃねぇか。おまけにイヴに乱入されたんだってなぁ…」


 バレテーラ。

 まぁ顔は広いみたいだし当たり前か。

 その後気の毒だったなあ…とどこか遠い眼をしながら言われた。どうやらイヴに痛い目にあわされた経験があるらしい。


「悪いやつじゃねぇからそこんとこはわかってやってくれ。性格に慣れりゃあ力強い味方さ」


 なんて言って励ましてくれる。


「そんな感じですね。まぁ根気強く頑張っていきますよ。俺のご主人様はどうかわかりませんけどね…」

「アイゼスか。あいつもそれなりの人生送ってきたみたいだし大丈夫だろ。あんぐらい我が強い人間なんてごろごろいるさ」


 なるほどね…そう思っておくことにしておこう。


 最後に森の方がきな臭いから気を付けろよ、と言われて朝の水浴びはお開きとなった。


 部屋に帰ってきたが、依然二人は起きてこない。そろそろ壱の鐘がなるころだろうに…

 まぁいいか。でもそしたら時間が余るな…うーむ…


 迷った挙句、同時に扱える魔法の数を増やす練習をしようと思い立った。あ、【影踏み】のあとに体勢を崩さない練習とかも部屋でできるか…

 なにはともあれまずは魔法の多重行使だ。


「【シェイド】」


 まずは一つ。サッカーボールぐらいの影ができる。楽勝だな。


「【シェイド】【シェイド】【シェイド】」


 全部で四つ。盗賊を襲撃したときの数だ。

 アイゼスとの訓練で集中力も多少は強化されたのか、まだイケる気がする。


「【シェイド】【シェイド】【シェイド】【シェイド】【シェイド】」


 さて想像の中の限界、二ケタ手前だ。

 どうにも扱いづらいな…

 そう思って色々と思考錯誤する。

 よし、この魔法とのつながりを魔力の糸と定義して考えいこう。


 まず糸を一つに束ねてみる。すると部屋の床全体が埋まるほどの大きい影ができてしまった。

(アホか俺は…)

 まぁいい。実験的経験だ。一からやり直しなんて小さな徒労さ…


 その後も俺の胴体を中心にしたり、頭を中心にしたりするが中々実践で使えそうにない感じだ。

 

 そうなると手だな。

 指一本につき糸を一本使うような感じにしてみる。おお!いい感じだ。

 だけどメメントモリを持つからなぁ…

 なんて思いさらに試行錯誤。そして解決策はそういえば闇属性を強化するといっていた《アラクノフォビア》を試しに装備ししてみたときに閃いた。


(なんだ?ここなしか、いや劇的に制御しやすくなってるぞ…?)

 やはり蜘蛛ということで糸を扱うのが得意なんだろうか。小並感。


 なんにせよありがたいことだ。ちなみにこの鎧、【武器支配アルマ・コントロル】を解除したにもかかわらず真っ黒なままだ。ベルフェの時は色が戻ってる気がしたんだが…


「ふわぁ…」


 おっとどっちかが起きたみたいだ。というかイヴは朝弱いイメージがあるからな…

 なんて思い声のした方を振り返ると案の定アイゼスだった。


「おはようございますアイゼスさん。二日酔いとかないですか?」


 アイゼスも昨日は結構な勢いで飲んでたからな…


「カナタか…うん、大丈夫だ。顔を洗ってこよう」


 そう言って心なしかトボトボとした様子で廊下へ出て行った。足取りはしっかりしていたが…なんだかいつもと雰囲気が違ったな。気を付けとくことにしよう。


********************

 結局イヴは顔を洗いに行って帰ってきたアイゼスにしょっぴかれて起こされていた。

 予想通りイヴは大層朝に弱いらしく、朝食を食っている間にもうつらうつらとしていた。

 どこか軍人気質なアイゼスはそのたびにイヴの頭をはたいていたが何度はたいても懲りないイヴに降参したようだ。


 最終的に俺と今日の予定を話しながらイヴが食べ終わるのを待った。


 食事が終わるとアイゼスはイヴを無理やり井戸の方へと連れていき、顔を洗わせた。


 もし俺の出来が悪かったらああいう仕打ちを受けていたと思うと少しやるせない気持ちになるな…

 そこまでやったらさすがのイヴも目が覚めたらしく、びしょびしょの顔で「おはようだな!カナタ!」などと言い出してまたアイゼスにはたかれていた。

 やれやれ…


 その後は三人仲良くギルドに行く。

 三人でいるのが当たり前みたいないきなりの行動方針にはちょっと面食らったが気にしないことにする。


「今日はこの三人でパーティーを組もう。イヴもいることだし、Dランクぐらいのクエストは受けれるようになるな」


 とのことだ。アイゼスは心なしかうきうきしているようだった。

 まぁいままで引かれててパーティーを組むに組めないという話だったからちょっとうきうきするぐらいはしょうがない。


 イヴはそんなアイゼスを見て道中ずっとにやにやとしていたが。


 ギルドに入ってアリアさんのところにまっすぐ向かった。

 今日はなんでか空いてるみたいだ。


「おはようアリア。実はな…」


 とアイゼスが事情説明をしていく。


「かしこまりました。パーティー登録…ですよね?じ、準備してくるのでちょっと待っててください!」


 といって奥へ引っ込む。あ、転んだ…ま、まぁ何はともあれすぐに一枚の紙をもって戻ってきた。


「それでは…パーティー名とリーダーの方の血判をお願いします」


 おお、パーティー名か…もう決めてるんだろうかと思ってアイゼスの方を見ると…


「……」


 決まっていないようだった。ものすごく悩んでる。


「…すまない。ちょっと決めてきてもいいだろうか?」

「あ、は、はい。もちろん」

 

 するとアイゼスは俺とイヴの首根っこをつかんで壁際へと移動した。俺たちは猫かっつーの!


「リーダーは…まぁ不本意だがイヴで決定だ」


 キャリアも自分より上だしな、とアイゼス。いや、性格とかも考慮した方が…

 まぁいいか…


「それでパーティ名だが…」

「それなら案があるぜ」


 とドヤ顔のイヴ。うまい案ならいいんだがなんにせよ嫌な予感しかしない。


「カナタって傍目から見ると伝承の死神そっくりなんだよな」


 なんでも黒髪、赤眼にデスサイズ。あと黒づくめの格好っていうのがこの世界の死神の姿と言われているらしい。

 まんまですやん…

 あと頭巾を被ってれば完璧だな、と言われた。

 ああ…タナトス様のことか…


 なんかエリス様の企みがちらついてる気が…


「そんでカナタって《堕ち人》なんだろ?じゃあそっちの世界の死神様とかから名前をとっちまえばいいじゃねぇか」

「なるほど…いい考えだな」

「…死神、ですか?」


 意外にいい考えでびっくりだ。

 しかしそんなやつがいたかな…タナトス様がいるぐらいだからほかの神様もいるんじゃないかしら。


 あーでもそうか…街並みからして西洋なんだし日本の神様とかは案外この世界じゃ存在しないかもしれない。すると…


「そうですね…《イザナミ》という神様がいるにはいますが…」

「それだ」

「それだな」


 あっるぇー?速攻で決まったぞ?


「せ、せめて語呂よく《イザナミノツルギ》とかにしません?」


 《イザナミ》だけだとちょっとアレだなーと思ってそう付け加える。


「それだ」

「それだな」


 どうやらご主人様方はパーティ名にあまり興味がないらしい。

 もしくはセンスがないのか…


 カウンターの方に戻ってきて、手続きをする。


「パーティー名は…《イザナミノツルギ》でよろしいですか?」

「ああ。問題ない」


 そしてイヴに血判を押させた。明らかにアイゼスの方がリーダー向きの性格だと思う。


 パーティが組めたので次にすることはクエストだ。いよいよゴブリンやオークなんかとご対面できるわけだな…なんか感動。…でも魔物だしなぁ…ちょっと怖い感じもある。

 俺たちが受けたのはこういうクエストだ。


《ゴブリンの巣殲滅》

 《依頼主》マテク村

 《報酬》二万リラ

 《詳細》例年通り、シュアナスの森にゴブリンが巣を張った。殲滅を依頼する。


 ということらしい。この世界ゴブリンも多分に漏れず、繁殖力が強く、時には普人族の女をさらって巣でイケないパーティーをやっちゃったりするそうだ。


 そんな彼らはある程度の防衛能力を備える街はともかく、小さな村々の眼の上たんこぶらしい。

 なのでしょっちゅうこういった依頼が出されるんだとか…

 まったくけしからん奴らだ。成敗せねば。


「張り切りすぎるなよ…?」


 鼻息を荒くしていたらアイゼスにたしなめられた。しょぼーん。


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