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異世界で奴隷生活始めました:Retake  作者: 海峡 流
第一章 ザナウェル防衛戦
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イヴ・ウォーカーの退屈

「ふぁー…暇だ。暇すぎる」


 そうSランク冒険者、イヴ・ウォーカーはぼやいた。

『顔はいいがイカレポンチ』『奴と採取クエストに行くよりソロでドラゴンと戦った方がまだ安全』『何をどうやっても勝てる気がしない』『イヴ様に踏まれたい』との評価を総なめにする彼女は、娯楽に飢えていた。


「強い奴いねぇかなぁ…」


 そう、強いやつ。彼女はいわゆる『戦闘狂バトルマニア』で自分と張り合いがある相手とみるとすぐに決闘を申し込んでしまう癖がある。なんとも迷惑な癖だが癖だからしょうがないのだ。そのことからついた二つ名は《狂犬》。なぜ犬なのかというとそれは彼女の容姿に関連する。


 エメラルドグリーンの髪に瞳、それに整った顔。若干すさんだ風をにおわせる狂暴そうな顔、と取られることが多いが間違いなく美人の部類に入るだろう。

 そして特徴的なのは同じく、エメラルドグリーンの毛で覆われた耳だ。それに毛だけの尻尾。


 彼女は獣人族と普人族とのハーフだ。

 獣人族というのは頭が動物であることが多く(特定の条件下で普人族のような容姿をとれる者も多い)、習慣もどちらかといえば動物的なところが多い。イヴはオオカミの獣人族と普人族とのハーフだ。

 しかし彼女の獣人族の血というのは耳と尻尾、あと身体能力と才能にしか現れていない。才能というのは精霊術のことだ。これは精霊族から力を借りて魔術を使うというもので、使い手は獣人族に多い。


 その才能は常軌を逸していた。それを使い、彼女は一人で《はぐれ悪竜》を討伐したり、千を超える魔物たちの軍(この時はゴブリンキングと呼ばれるゴブリンたちの王がイーライという街に攻め入った時だった。ゴブリンについてはしばらく後で詳しく説明する)をソロで壊滅させたこともあった。

 

 しかしそんな破天荒な彼女の戦闘スタイルに合わせることができる猛者は少なくともイヴ自身は見たことがない。

 故に、孤高。


 結局何が言いたいかと言うと、彼女は強い。強いが故に、持て余す。強いが故に、孤独だ。

 そして孤独は退屈を作り上げる。

 そんなわけで、彼女は強者を切実に欲していた。


「…それでよぉ、そいつらの訓練がやたらイカレてんのよ!目にもとまれねぇ速さのやつを何回も、何回も繰り返すんだぜ!しかも武器は数日おきに…」


 だからこの話がギルドの食堂で聞こえてきたときに、彼女は見逃さなかった。


「その話、詳しく聞かせろ」


 話をしていた男の肩に手を置いて声をかける。顔面蒼白になった男はあらいざらい、ここ一か月訓練場に居座っている二人の話をしだした…。


**************************

「明日、最終試験をするぞ」


 訓練をし始めてちょうど一か月がたった頃、夕食の席でアイゼスは突然そのようなことを言い出した。


「…最終試験ですか?」

「そうだ。内容は私との一騎打ち。魔法の使用は認めない。武器は別に何でもいいが…デスサイズが一番お前に合ってるみたいだからな。それでこい」


 とのことらしい。あんまりにも俺の覚えがいいものだから調子に乗って芸を仕込んでいたが、それでも教えられることはもうなくなったと言われた。

 地獄の日々をリフレインする。

 …なんというか…がんばったよな、俺…

 最近は地の体力も上がってきて《ハイフィジカル》の強化のおかげで訓練後にぶっ倒れることもなくなった。成長したもんだよホント…


「…望むところです」


 失敗といえば宿の酒場でこの話に聞き耳を立てていたやつらにそれがバレてしまったことか。


***************************

 翌朝、五時に目が覚める。目覚めは《至上の眠り》のおかげでばっちりだ。

 その後、顔を洗うのと同時に宿のおやじと他愛もない話をする。しょうがないだろ、いつも時間が被っちまうんだから…

 まぁ最近は暑くなってきたので俺もおやじと一緒に水を浴びている。これがなかなかに気持ちいい。


 そしてさっぱりした後に部屋へ帰ると、アイゼスがこれまたちょうど起きだしてくる。

 一度《至上の眠り》を試してもらったことがあるのだが『落ち着かない』といって以来かけさせてくれない。

 そしてアイゼスも顔を洗って身支度をするといよいよ朝食である。

 おやじの朝にぴったりな食事を堪能した後、俺たちはギルドへ向かった。


 のだが…


「…人多くないですか?」


 なんでかいつもより訓練所に人が多い。さらに言えばそいつら、俺たちのことをチラチラ見てくる奴らばっかりだ。なんなんだか…


「よし、それじゃあ三の鐘がなったら始めよう。まだ一の鐘がなったばかりだからな…ちょっと時間に余裕があるがうまく使ってくれ」

「わかりました」


 そう言って各々、体作りを始める。体作りと言っても踏み込みとかの確認をシャドーでするだけなんですけどね。

 俺の剣戟もアイゼスの剣戟ももはや『見る』ことができないレベルだ。

 それは言いすぎなんだが…

 とにかく予想と気配と勘を頼りに攻撃を受ける。

 そこで重要なのが反射神経になってくる。ありていに言えば感覚を鋭く、鋭く磨き、直感で相手の攻撃を防ぐ。まぁアイゼスには《第六感》なんていうチートスキルがあるのだが…何がハズレだよ… 

 まぁアイゼスが八年かけて磨いてきた技術を一か月でマスターしてしまった俺の方がチートか…

 しょうがないよね!

 

 

 魔法もこの一か月で結構覚えるには覚えたが…なんせ使う機会がない。

 アイゼスは『免許皆伝をしないとクエストにはいかせない』といってはばからなかったので未だに魔物というものに出会えてないのだ。

 お金は時々アイゼスだけがクエストに行って稼いできた。連れて行ってくれてもよさそうなものだが…まぁ奴隷である俺にとやかく言う権利はない。

 ベルフェが出てくるのは三日に一回程度になったし、まだ魔法に関しては焦るときじゃないはずだ。うん。

 

 さすがに暇すぎるのでカカシをぶった切ることにした。これをやってれば時間なんてすぐに過ぎていくさ。

 そこで気が付いたのが…

(…人少なくないか?)

 そう。ほんの少し前は人でごった返していたのにもかかわらず不自然に人がはけているのだ。

(…まぁいいか) 

 とりあえずその違和感は無視することにして…


「ハッ!」


 まずは一体目のカカシを切り伏せた。

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