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異世界で奴隷生活始めました:Retake  作者: 海峡 流
第一章 ザナウェル防衛戦
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汝、驕るべからず

そのあとも他愛無い話を続け、店を出た。これからアイゼスの泊まっている宿へ戻るらしい。さっき六回目の鐘が鳴ったので大体四時ぐらいだろう。


 宿は案外近かったらしく、ものの五分ほどで着いた。看板には《女神の息吹亭》と書いてある。

 中へ入るとすぐ前に受付があり、アイゼスはそこへまっすぐと向かった。


「ちょっといいかご主人」

「おう、アイゼスの嬢ちゃんじゃねぇか。どうした?」


 そこに立っていたのは筋骨隆々の巨人だった。顔にはヤクザチックな傷が入り、十人中九人がビビるような顔つきをしている。

 ちなみに巨人とは言ってもせいぜい二m。普人族なのだろう。


「今日奴隷を買ってな。一緒の部屋に寝泊まりしたいんだが…」


 すると宿屋のおやじがギョロリとこちらを向いた。あの…怖いんですけど…


「なんだ嬢ちゃん!こんあひょろひょろなのが好みだったのか!ガッハッハ!」


 いきなり目元がにやけさせてなめた事を言い出した。

 

 カッチーン…まず笑い方がむかつく。あの盗賊と同じじゃねぇか!次に俺をバカにされたことがむかつく。最後に、下世話なことを言ってアイゼスを侮辱したことにむかついた。

 色々あったからイライラもしてるし…


「いいでしょう…俺をひょろひょろだと思うなら腕相撲でもしてどちらの力が強いか確かめますか?ああ?」


 なので思わずアイゼスを押しのけて宿のおやじに喧嘩を売ってしまった。大丈夫大丈夫。不可抗力ですよ多分。 

 それに《ハイフィジカル》がどの程度のものなのかも知りたいしな。


「あぁん…?マジで言ってるのか、兄ちゃん?」


 宿のおやじが怪訝な声で聞き返してくる。


「大マジだ」


 胸を張って答えた。


「す、すまないなご主人…おいカナタ!今すぐ撤回しろ!」


 慌てた様子でアイゼスが止めようとするが…もう時すでに遅し。


「よっしゃ兄ちゃんやろうじゃねぇか。腕が使い物にならなくても文句は言うなよ?」

「こっちのセリフだな」


 するといよいよ宿のおやじの怒りもピークに達したらしい。口元に浮かべていた薄ら笑いは消え、こめかみの血管がピクピクと動いてるのがわかる。


「…手加減はなしだ」


 そういって腕が差し出された。

 俺も手をだし、相手の腕とがっちりと組む。ああ、全然いけそうだ。


「嬢ちゃん、合図してくれ」


 アイゼスは迷っていたようだったがどうやら腹を決めたらしい。


「カナタ…負けたら死ぬより辛い目にあうと思えよ…?それでは…はじめっ!」


 そうして戦いの火蓋は切られたのであった―――。



 もっとも、バキィッ!と受付のテーブルに極太の腕が叩き落されるまで二秒かからなかったが。

 宿のおやじはもちろん、アイゼスもポカーンとしている。幸いなのはこの戦いを見ているのがそれだけの人数だったことだろう。でなきゃ俺は相当に悪目立ちしたはずだ。


「…手加減はしておいた。折れてないかだけか確認してくれ」


 そう言って手を放した。宿の主人はしばらく呆然としていたが気を取り戻すと手を開いたり閉じたりした。どうやら異常ないようだ。


「あ、あぁ…大丈夫だ。大丈夫なんだが…お前、何者なんだ…?」

「まぁそれはさておいてだ。二人部屋と…そうだな。ステータスウィンドウを頼む」


 宿屋の主人は何か言いたそうにしていたが手をさすると俺の言ったことに従った。

 ふぅ…うまくいったようだ。そう思いアイゼスの方を振り返ると…アイゼスが肩を震わせていた。


「ク、ククハハ…カナタ…こんな面白さと怒りがないまぜになった気持ちは初めてだ…」


 そして初めて見る満面の笑みと共に、

「部屋で、洗いざらい吐いてもらうぞ?」

 と言われた。…俺死なないよな…?


**************************

「【オープンステータス】」

 アイゼスが部屋を移り、この二人部屋に到着した途端「まずはステータスを見せろ!」と命令されたので早速ステータスの公開をすることになった。

 というか今思ったんだけど俺ってこの世界じゃかなり強いんじゃ…引かれないかなぁ…

 だがもう魔法は発動している。キャンセルすることは不可能だった。


【名前】辻占ツジウラ 彼方カナタ

【年齢】十七歳

【種族】魔族

【状態】健康

【称号】《ハードラック》《堕ち人》《奴隷》《神々に愛された者》《怠惰の大罪》《魔術書架:闇》《夜の友》

【スキル】《ハイセンス》《ハイフィジカル》《悪魔の炯眼》《血の狂乱》《原書解放》《ニュクス》《至上の眠り》《武器支配アルマ・コントロル


 それを見てアイゼスはにやぁっと笑った。不覚にもドキッとしてしまったぜ…


「フフ…フフフハハハ!とんだ掘り出し物じゃないかお前は!あんな安値でお前をうっぱらった奴隷商が憐れに思えてくるぞ!ハハハハ!」


 うわぁ…若干引くぐらい喜んでるな…ちなみにこの世界での奴隷は安くて五十金貨、高ければ千金貨はくだらないらしい。

 そんな中三十金貨で売られてた俺って…


「いやー…しかし私の《第六感シックス・センス》があって本当に良かった。でなければ今頃カナタは男娼館にいたかもしれないな…」

「いや、そういうこと言うのホントやめて下さい…」


 ぞわっとしちゃったよ…

 ちなみに《第六感シックス・センス》というのはアイゼスのスキルらしく、『何となくわかることがある』という微妙な能力なんだとか…


「よし、それでは洗いざらい吐いてもらおうか…まずはスキルの説明からだ」


 そうして俺の長い長い説明は始まった…


 初評価いただきました!

ありがとうございます!

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