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⑺ 復興

 次の日、東側に張られたフェンスの外側に、アトラスのゴーレムが集まって来た。

 なんという数であるか。

 しかしそのゴーレムは人を襲うのではなく、土をならしている。


 とんでもない光景である。

 高台は削り取り、その土を低い土地へ持っていき、地面を固めている。

 私は城の屋上から、その様子を見ていた。


「ああ、ここにおられましたか」

 後ろから声を掛けられた。コノエだった。


 東側の地平を見ながら、コノエが感嘆の声を漏らした。

「凄まじい光景ですなぁ」

「ああ、このゴーレムの数、何体ぐらいと見る」

「そーですなぁー300体から500体といったところでしょうか」


「アトラス軍は、これだけの戦力を持ちながら……」

「ええ、これだけの戦力があれば、グランバルとて、ひとたまりもないでしょう」

「ああ、だが、アトラスは、決して他国に進撃しない。ただ、自国に牙を向けた国に対して報復を行うのみ」

「そーですなぁー」


 ・・・・・・


 1ヵ月後、巨大な平地が出来上がった。

 次に、せっかく固めた土を掘り起こして、何やら巨大なパイプを至る所に埋めている。

 その作業が1ヵ月ほど続いた。


 そして巨大な荷車が続々と現れ、様々な物を置いていく。

 この巨大な荷車を、彼らはトラックと呼んでいる。


 続いて多くの作業員が現れ、降ろされた荷物で何やら組み立てている。

 そして、その全貌を見て、それが住宅地である事が分かったのは、組み立て始めてから20日めであった。


 それからは、その住宅地に生活必需品が、ぞくぞくと運ばれてくる。

 見る見る内に、町が出来上がっていく。


 ・・・・・・


 そして、一旦グランバルへ戻った兵士達が、家族を引き連れてラインテリアへ移住してきた。

 その数、約32,000人との事。

 移住した人達には、すぐさまラィンテリアの国籍を与え、新しく作られた居住地での生活を始めてもらった。


 移住してきた人達からは歓喜の声が止まない。

 それは、まるで別世界である。

 衛生的で広々とした住処。

 食べ物は豊富に用意され、それも今まで食べた事の無い美味しさである。


 その感謝の気持ちを、この私に向けてくる。

 しかし、彼らは知らない。それは全て、アトラス国から送られた物である事を。

 私はすぐさま、その事実を伝えようとした。

 しかし司令官直々に、その事を止められた。

「彼らには、あなたの力によって、今後の生活が成り立つと思ってもらいなさい」

 私は、複雑な気持ちになった。


 グランバルから移住してきた人達の居住を終えた今でも、この居住地造りは続いている。

 第2弾として、今までのラィンテリア国民の20%を新しい居住地へ引っ越すとの事である。


 最初は、今まで住み慣れた家からの引っ越しは嫌だと言った声があがっていたが、新しい居住地の住みやすさを知ると、こぞって引っ越しを希望し、第2弾での引っ越しは抽選となった。

 その後、第3弾、第4弾の計画をたてている事を伝え、抽選に漏れた人も、しばらくの辛抱という事で、大きな混乱はなかった。


 新しく作られた居住地は新都市と呼ばれ、東に向けて国土を広げている。

 新都市の街は、全く異なる姿であった。

 今までの街は、自然に生えた木。

 その木を避けるように、自然と出来上がった道であった。

 しかしこの新都市は、全て合理性の計算によって作られた町であった。


 歩道はゆったりと広く整備されている。

 また、至る所に芝生が植えられ、様々な所に街路樹が植林されている。

 そして、何よりも驚いたのは、各家に水道という物が完備され、レバーを上げると水が出て来るではないか……うらやましい。


・・・・・・


 新都市の東側に、広い平地が作られた。

 そして、この広い平地を中心に、まわりを囲むように居住区が作られ始めた。

 今、その広い平地に、ぽつんと建物が建てられている。

 あれはいったい何なのだろう。


・・・・・・


 それから何日かしたある日、私は司令官に呼び出された。

 その呼び出しに、コノエとシノブも同行させてもらった。

 アトラス軍司令基地に着くと、入り口前に大きな箱のようなものがあり、司令官はその中にいる。


「ああ、コノエ殿も、シノブ殿も、さあ、御乗り下さい」

 その箱の扉が開いた。扉の奥に椅子がある。

 私達は、その扉をくぐり、その奥の小さな部屋の椅子に座った。


 扉が閉まると、その部屋が動き出した。

 この部屋は、ワゴン車と言うようだ。

 新都市をまわりながら走る。

 新都市に住む国民は、我々を見て驚いている。

 何故だろう、偉くなったような気がするから不思議だ。


 さて、我々が連れて来られた所は、新都市の中央。

 大きな広場の中に、ぽつんと建てられた建物があり、以前から気になっていた。

 司令官の後ろに付いて、その建物に入った。

 その建物の内部は広い空間で、色々な機材が置かれている。


 正面の壁に扉があり、司令官が扉の脇にカードをかざすと扉が開いた。

 その扉の先には、何もない、狭い部屋があるだけだった。

 司令官はその部屋に入り、振り向いて「どうぞ」と言われたので、我々3人も入った。


 しばらくすると、扉が閉まった。

 本当に何も無い、狭い部屋である。

 こんな密室に私達を閉じ込めて、何をするつもりだろう。


 すると、わずかな揺れを感じる。

 地震か? こんな所に閉じ込められた状態で地震に襲われたらどうしたものか。

 幸い揺れは微弱なもので、すぐに収まり、やがて扉が開いた。

 その扉の外は、まるで洞窟のようだった。


 な、なんという事だ!

 この扉に入る前と、今、扉の外の世界、全然違う!

 こっ、これは……知っている、知っているぞ!

 一瞬にして別の場所へ移動する……そうか、これは魔法の扉だ!


 このような上級魔法まで、手に入れていたとは!

 フッ、しかし司令官、私を驚かそうとして……

 なんだ司令官、お茶目なところ、あるではないか……オカワイイコト。


 するとシノブが言った。

「わー司令官さまーすごーい」


 な、なんと……しまった!

 以前シノブが教えてくれた。

 殿方を陥落させる術:その21。

 とにかく驚く事だ。


 殿方は、驚いてくれる女性に心惹かれるとのこと。

 えーい、シノブめ、私に教えておきながら、その術を私の前で使うとは……油断ならん!

 私はシノブに対して、警戒レベルを1上げた。


 すると司令官が言われた。

「本日は、今後に向けて、お見せしておきたいものがありまして」

 なに! 今のは……魔法の扉は、驚くところではなかったのか!


 私たちは扉を出て、司令官の後に付いて洞窟内を歩いた。

 すると、巨大な空洞に出た。

 そこは、魔法の照明によって明るく照らされている。

 とても広い空洞である。


 壁の岩肌は、高さにして50mぐらいありそうだ。

 そこで、多くのアトラス作業員らしき人が、何やら工事をしている。

 我々は、透明な壁に囲まれた部屋へ案内された。


 司令官が言った。

「さあ、そろそろかなー」

 すると、また地震のような揺れを感じた。

 極めて微弱であるが……やばい、やばい、やばい、岩肌が、崩れようとしているではないか!


 ガラガラと音を立てて、岩肌が崩れ始めている。

 今度こそ、本当の地震だ。

「司令官様、早く安全な場所へ!」


 私がそう言うと、岩肌が崩れ落ち、その奥から、なんと巨大なドラゴンが頭を出した。

 コノエがすかさず私の前に立ち、私の盾となった。

 シノブは短刀を握り締め、安全な逃げ場を目で探す。


 岩肌から出て来たドラゴンは、巨大な牙を動かし、その高さは30mぐらいある。

 私は今まで、これほど巨大な怪物を想像した事すらなかった。


 するとアトラスの作業員は、ドラゴンの前に立って両手で旗を振っているではないか。

 やがてドラゴンの動いていた牙は、ゆっくりと止まった。

 そして、ここに居るアトラスの作業員全員が、拍手を始めた。

 なんと、アトラス軍は、この巨大なドラゴンでさえ、手なずけているというのか!


 1人のアトラス作業員が来て、司令官に会釈して話しをした。

「シールドマシンによる掘削工事、無事完了しました。今後は、このステーションの工事を進めていきます」

「よろしく」


「本国との地下鉄車両は、貨物車両を中心に考えています」

「はい。これで物資の輸送は格段に進みます。今後の工程スケジュール、後で送って欲しい」

「了解しました」


 私は、もう何が何だか解らない。

 ただ、私の想像を遥かに超えた事が進んでいる。


媛さまにとって、アトラスから見せられるものは、何から何まで理解の外にあります。

それでも媛さまは、自分なりに一生懸命 理解しようとします。

そんな、健気な媛さまを、応援してあげて下さい。

『ひめさま ガンバレ~』


次回:建学

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