↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/43

⑹ 質疑応答

 私はアトラス国の思惑を、きちんと知る必要があると考えた。

 形だけではあるが、国を預かる者として、司令官とサシでの問答を望んだ。

 司令官に問い合わせたところ、入国者の受け入れ準備で立て込んでいるとの事。

 だが、わずかな時間ではあるが、質疑応答の時間を作って頂ける事となった。


 私はアトラス軍基地へ司令官を訪ねた。

 何もない、殺風景な部屋へ案内された。

 そこには、少し大きめなテーブルと、椅子が2脚あるだけだった。

 司令官と向かい合わせに座った。


 すると1人の女性隊員が、お茶とケーキを運んで来た。

 こ、このケーキ、食べてはいけない。

 以前、アトラス基地での食事で出された事がある。

 このケーキを口に運んだ途端、何から何まで、どうでも良くなってしまう。

 そんな事では、司令官にお時間を取って頂いた意味がない。


 私は、勇気を出して伝えた。

「あの、このケーキ、頂けません」

「ああ、すまん。君、これを下げて」

「はい」

 女性隊員は、私のケーキを下げた。

 アトラス軍には、女性の軍人もいる事に驚いた。


 司令官が話し始めた。

「先にもお伝えしたとおり、今は立て込んでいますので、あまり時間は取れませんが、媛さまが抱いている疑問につきまして、できるだけお答えしましょう」


「ありがとうございます。私にとりまして、アトラス国は謎ばかりです。その件につきましても色々お聞きしたい事があるのですが、お忙しい中、お時間がありませんので、目の前の問題から質問させて下さい」

「どうぞ」


「ご用意した質問ですが、4つあります。ではその1つめですが、以前、アトラス国は我々に、何をさせるお考えですかと問いましたところ、農業と答えられました。そして年間収穫量を今の300倍、今後生産して頂くと」

「はい」


「私は、何の冗談かと思いましたが、司令官様が真顔でそれを話されている事に驚きました」

「私は貴女に冗談を言った事はありません」

 ……うぅぅ、私の胸を見て、そんな躰と言ったのも、本気だったか。

 もしかしたら、あれは冗談? と期待した私が愚かだった。


「では、そのような事、可能なのでしょうか」

「はい可能です。ただし、農業につきましては、今までと大きくやり方を変える必要があります。そのやり方については、今度改めてお話ししましょう」


「……わかりました。次に2つめの質問ですが、今の300倍の農作物、そのほとんどを、アトラス国へ納めて頂くとの事ですが、アトラス国は、それだけの人口、つまり、ラィンテリアの300倍もの人口を抱えておられるのでしょうか?」


「いえ、アトラスが欲しいのはエネルギーです」

「エネルギー?」

「収穫物からエタノールを作ります。まあ、この話も、また、日を改めて」


「……わかりました。次に3つめの質問ですが、今後ラィンテリアは国土を広げ、他国民を受け入れ、人口を増やしたいと言われました。それは、何の為でしょう」

「はい、私達は、この国の復興を支援するお約束をしましたが、それは、それに見合う見返りを期待しての事です」


「見返り……我々にとりまして、アトラス国が期待される見返り等、用意出来るのでしょうか」

「はい。正確に言いますと、見返りを果たして頂くのは、ここの国民ではなく、この国が所有する資源です」

「資源?」


「はい。その資源とは、農作物を育てる為の土壌の事ですが、その資源を少しばかり利用させて頂きます」

「利用?」


「はい。ただし、その資源を痩せさせずに利用する為には、人手が必要です。こちらの計算によりますと、圧倒的に人手が足りません。ですので、今この国が進めて頂きたい事は、人手を増やす事です」


「……では、最後の質問ですが、以前、国民が家を直そう、畑を耕そうとしましたら、アトラス軍に止められました。何故でしょう」

「はい、現在、このラィンテリアの都市を、大きく改造する計画が進んでいます」

「カイゾウ?」


「国としての都市の機能は、そのまま社会の合理性に繋がります。例えば生きる為に必要な水を考えてみましょう。毎日、必要な水を汲みに行きます。しかし、もし水が毎日運ばれてきましたら、水を汲みにいく時間で別の仕事が可能となります」

「……はい……まあ……」


「この町全体を、合理的な街に作り替えます」

「……はあ?」

「その計画を進めています。ですので、既存の畑や家は、取り壊す予定です」

 私は、何が何だか分からなくなってきた。


 司令官は話しを続けた。

「今、ラィンテリア国民にお願いしたい事は、既存の畑を耕す事ではなく、勉強です」

「勉強?」

「新しい農業としての勉強です」

「はい……そこまでは理解できました。了解しました」


「それと皆さんにも、あのゴーレムと呼んでいる建設用重機を動かしてもらいます」

「……ラィンテリア国民には、魔術の力を持つ者はいませんが……」

「いえ、トレーニングすれば動かせるようになれます」


「我々でも、修行を積めば、魔術師になれるという事でしょうか?」

「……まあ、今はそのような理解でかまいません」

「……はあ」


「……という事で、私は次の予定がありますので、これで失礼します」

 そう言って、司令官は席を離れた。


 その後、先ほど下げられたケーキが再び出された。

 給仕してくれた女性の隊員が言った。

「ごめんなさいね。なんかバタバタしていて、もしよろしければ、どうぞ」

「あ、はい、ありがとうございます。……あ、あなたは?」


「あっ、私ですか? 今回、司令官に秘書として選ばれまして……秘書と言えばカッコいいのですが、まあ雑用係ですね」

「そ、そうですか」

 ……司令官に選ばれた女性。


「では、ごゆっくりどうぞ」

 そう言って、彼女は部屋を出て行った。

 しなやかで、知的そうな女性だ。

 年齢は、私と同じくらいだろうか。


 私は彼女の胸を見逃さなかった。

 私と同じくらい、薄い胸だった。


 以前、シノブが話してくれた。

 ごく、ごく稀に、胸の薄い女性を好む殿方がいるという事を。

 その話を聞かされた時、とてつもない憤りを感じたが、今はそうかもしれない……と、思いたい。


 それはそれとして、先ほどの司令官のお話、全部答えてくれたが、全部わからん。

 なんだったんだ。


 私は、ケーキを口に入れた。

 ああ……もう……なんでもいい。


なんでもいいって……媛さま、ガンバレ~


次回:復興

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
analyze
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。