⑹ あの国に手を出してはいけない
私達は、用意された親睦会の会場に移動した。
今回の会議に集まって頂いた皆さん、神妙な面持ちである。
開催の挨拶は私が指名されていた。
首脳会議の後、親睦会を提案したのは私だからだろう。
しかし、新参者の私である。あまり目立ってはいけない。
おしとやかに、慎ましやかに。そのように心がけた。
とにかく、しおらしく……グランバルへ進撃して重機で大暴れした私の噂をしずめる為に。
優雅な音楽をバックに、立食パーティが始まった。
私は、放心状態のラムス王子を横目に、リオンさんに挨拶しに行った。
すると、セイリュウ殿も来られた。
「あの時は、色々と……」
等といった話が始まった。
横で見ているラムス様、ちょっと悔しそうな表情を浮かべている。
私の後ろにミントさんが待っていた。挨拶に来られたようだ。
私から声を掛けた。
「お久しぶりです」
「おひさしぶりです」
「何か困った事はありませんか」
「いえ、順調にステイン国を建て直しています。それにしてもスジャク様、すごいです。ステイン国に続いてグランバル国まで落とすなんて、大国ですよ、信じられません」
「いやー私が出したのは、口だけですよー」
こんな感じの会話が続いた。
ラムス王子、それとコノエと長老。アトラス国の内部を始めて見た3人。
これが今から800年後の西暦2000年の社会。理解が追い付かない様子だ。
私は長老に挨拶しに行った。
「長老、選挙の時は、大変お世話になりました」
「いや媛様、私の事を、コノエ殿を始め、城の中心人物に説明して頂いていたお陰で、嫌われ者にならずに済んだばかりか、ラィンテリアの主権者になられたコノエ殿の副官にして頂き、この上ない名誉であります」
「はい。今後もコノエを支えて、ラィンテリアをお願い致します」
「媛様、この老いぼれに、もったいないお言葉、ありがとうございます」
そして私は、ラムス王子に話しをしに行った。
「アトラス国、いかがでしょう」
「いやー噂は聞いておりましたが、想像を遥かに超えていました」
「はい。私も毎日、理解を超えた物を見せられて、驚きを隠せません」
「しかし……とんでもない国のトップにいたのですね……リオンは」
「リオンさんは、四天王の一角でしたから既に知っておられました。人類滅亡の未来とそれに抗う為の世界征服構想。ラムス様は、いかがな感想を持たれたでしょうか」
「……にわかには信じがたい事ですが、これだけの世界を見せつけられますと、特殊能力者の未来視能力、疑う余地ありません。そして人類滅亡の未来。受け入れるか、抗うか、やはり私も抗いますね。ですから世界征服による資源の平等分配、人口の抑制等、大枠において同意します。いや、むしろこの計画に参加させて頂いた事を、誇りに思います」
「ありがとうございます。これからもお付き合い下さい」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
そうだ、これからも首脳会議の後は、こういった親睦会を恒例行事としたいものだ。
・・・・・・
あの強大なグランバル王国が崩壊した噂は、欧州中、瞬く間に広まった。
制圧したのは、ラィンテリア国。
以前、グランバルから侵略行為を受け、その報復としてグランバルを制圧したとの事。
諸外国は噂する。
ラィンテリア、あの国に手を出してはいけない。
グランバルからの侵略に怯えていた小国は、今度はラィンテリアに対して警戒を深めた。
しかし、ラィンテリアがアトラス国の傘下国である事を知ると、アトラス国と同盟を結びたいと言う意向を述べてきた。
同盟を結んだ国には、アトラスから先端技術が紹介され、重機を使ったインフラの整備が進められた。
この状況を目にして、同盟を希望する国が、雪崩のように押し寄せてきた。
現在、欧州の78%がアトラス国の同盟国となった。
この流れは、しばらく続く事が予想される。
そしてここに、『アトラス欧州連合』は樹立された。
同盟国には、技術支援とセットで、特殊能力者と示教委員を送り込んだ。
それによって、いずれその国は、アトラスの傘下国となるであろう。
地球上で、5つの世界。
亜州、
欧州、
阿州、
米州、
大洋州。
この1つである欧州を征服する足掛かりが出来た。
そんな中、カオス様が帰国された連絡を受けた。
「今、カオス様は?」
「四天王の広間との事です」
私は、四天王の広間へ走った。
そして、いきなりカオス様に飛びついてしまった。
それを見ていた3人の天王は、やれやれといった表情を浮かべていたようだ。
カオス様は適合者を探す傍ら、世界征服の為の視察として、今回はアジア圏を廻っていた。
残念ながら、適合者は今回も見つける事が出来なかったとの事。
アトラスの様子は、報告書に目を通されているようで、現状を理解されている。
セイリュウ殿がカオス様に伝えた。
「スジャク殿の活躍ぶりは大変なもので、さすがはカオス様が見込まれた女性です」
ゲンブ殿も、ビャッコ殿も、その発言に深く頷いてくれた。
私は、嬉しかった。
カオス様は、私に優しく声を掛けてくれた。
「おつかれさま」
・・・・・・
そして来週、カオス様は、また国を離れるとの事。
今度は、アジア圏の更に東側へ視察に行かれるとの事だ。
カオス様が、他の適合者を見つけ出し、その方を愛されるのは、かまわない。
私はカオス様の子供を授かる為の器にすぎない。
しかし、カオス様からの愛が無いまま、生まれて来た子供は不憫である。
私は自分自身に誓った。
カオス様の心を、必ず私に向けさせてみせる。
次回:媛の決意




