↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/43

⑷ 敵襲

 突然シノブに起こされた。

「媛、敵襲でございます」

 私は飛び起きた。

「何事か!」


「グランバル王国からの襲撃でございます」

「グランバル?」

 ここから西に位置する大国である。

 巨大な軍事力を誇り、次々と小国を飲み込んでいく。


 私はすぐさま城の塔に昇り、西側を見た。

 城は、この国一番の高台に建てられ、遠く先まで見わたす事が出来る。

 西側は、この城から約1kmまでが居住地で、その先は穀倉地帯となっている。

 敵軍は既に穀倉地帯を越え、居住地の手前まで迫り、態勢を整えようとしている。


 恐ろしい数の軍勢である。

 2万、いや3万ぐらいだろうか。

 ラィンテリアとアトラスが戦争を行い、お互い疲弊した所を一気に飲み込む。

 常套手段である。


 ラィンテリアには、既に戦う力は無い。

 取れる選択肢は2つ。

 1つは、アトラスと共にグランバルと闘う。

 2つめは、アトラスには、お引き取り頂き、ラィンテリアはグランバルに降服する。


 考えるまでもない。

 いくらアトラスがゴーレムを操る魔術集団であっても、この3万という数においては、いくら暴れまわっても飲み込まれてしまう。

 数が違いすぎる。

 やはりアトラスには、お引き取り頂き、グランバル王国に降服しよう。


 しかしあの司令官、聞き入れるだろうか。

 それはグランバルがここを占拠した後、そのままアトラスに攻め込む事は目に見えている。

 だからこそ、これだけの軍勢を引き連れてきたのだ。


 あの司令官なら、どのように考える。

 ここを引き上げれば、自国であるアトラスが戦場になる。

 ならばここを戦場として、相手の戦力を少しでも削ぐ。

 そして、自国に対して少しでも時間を稼ぐ事を考えるだろう。


 それは、いけない。

 ここが戦場になる事だけは。


 私は決断した。

 アトラスにお引き取り願う事を。

 そして、それが叶わない時は司令官を殺め、その亡骸をグランバルに引き渡す。


 私がこのような立場にいなければ……。

 司令官様、事が済めば、私も自害する事をお約束します。

 そういえば、司令官様のお名前、まだ教えて頂いてなかった。


 私は短刀を握り締め、司令官を探した。

 城から出ると、この状況に国民は右往左往している。

 コノエが私を見つけて声を掛けた。

「媛様!」


 私はコノエに指示した。

「1人でも多く、国の東側に誘導するんだ!」

「承知しました!」


 早く司令官を見つけないと。

 国民の悲壮な声が耳に届く。

「今度こそ、終わりだー」


 私は街中に常駐しているアトラス軍の兵士をつかまえた。

「至急 司令官にお目通り願いたい」

「あれ、司令官なら、さっき城に入っていきましたよ。屋上に行かれたと思います」


 私はすぐさま、屋上に上がった。

 空が明るくなり始めた。

 なんだろう、この屋上に巨大な皿のようなものが、東側に向けて設置されている。


 司令官は西側を見ながら、板のような物を耳にあてて独り言を言っている。

「あー横槍が入ってしまって……C2……いやC3を使用します……ああ……それとN3も忘れずに……ああ、だいたいどのくらいで……ああ……では」


 遠くの誰かと話をしているのか?

 この司令官も魔術師だったか。

 司令官は黒い箱のような物を通して、遠くを見ているようだ。


「んー2万8千ってとこかなぁ」

 私は短刀の柄に手をかけた。

「司令官様、お逃げ下さい。軍を引いて、自国へお帰り下さい」


「やめましょう。あなたに人殺しは似合いません」

 私は驚いて体を引いた。

「それと、シノブさんも、出てきて下さい」

 陰からシノブが出て来た。

 私と共に行動を起こすつもりだったのだろう。


 私が崩れると同時に、シノブが支えてくれた。

 司令官が言った。

「あなたが取ろうとされた行動、国を預かる者としては間違っていません。ですが、いきなりお帰り下さい、ではなくて、相談して欲しかったなぁ」


 司令官は黒い箱で敵軍を覗きながら、私達に対して独り言のように話し始めた。

「グランバル軍は態勢を整え始めましたね。圧倒的な戦力を見せつけて、戦わずして降服させるつもりでしょう。これ以上、傷を負わさないで手に入れたいのでしょうね。おそらく態勢を整え次第、こちらに使者を送って来るでしょう。降服しなさいって。それまで、どれくらいかなぁ……」


 しばらくすると、今度は東の方を向いて司令官は言った。

「あーそろそろかなぁ」

 私も東の空を見た。


 何だろう、黒い、もやもやした物が、こちらに向かっている。

 シノブが声を上げた。

「なにあれ!」

 カラスの大群である。

 何故、カラスの大群が……いや、違う、ブーンという音を出している。


 黒い板、黒い板が、集団で空を飛んでいる!

 その板の集団は、私達の頭上を通りすぎ、敵陣の真上で静止した。

 敵軍は、何事かと大騒ぎである。

 その黒い板が一斉に霧のような雨を降らせた。


 敵軍はバタバタと倒れ始めた。

 何が起きているんだ!

 敵軍の後方にいる大将の陣も慌て出した。

 態勢が一気に崩れた。収集が付かない。


 大将の陣が慌てて後方に動いた。

 それを期に、2万8千の軍は一気に退陣し始めた。

 凄まじい光景である。


 一斉に、逃げるように去って行く。

 黒い板からの雨に当たって横たわる約8千人の兵士を置き去りにして。

 それは、三分の一近くの戦力を、一瞬のうちに失っての退却である。


 すると、黒い板の集団は、東の空へ帰っていく。

 それと入れ変わりに、今度は白い板の集団が飛んできた。

 その集団は、横たわる兵士の上に、更に霧の雨を降らせている。

 なんと……横たわる兵士に、とどめを刺しているのか!


 ・・・・・・


 しばらくすると、司令官が言った。

「そろそろ大丈夫かな……媛さま」

「あ、はい」


「手のあいている者、大勢出して、あそこで倒れている兵士を収容してほしい」

「……埋葬ですか」

「いや、死んでいませんよ。ただ、眠っているだけです」

「え゛っ!」


「後5~6時間後には目を覚ますでしょう。しかし今日1日は頭がクラクラして動けないでしょうから、それまでに武器を取り上げて……それと、目を覚ましても暴れないように、足を縛りましょう」

「……手は?」

「手を縛ると、食事する時等不自由でしょうから、手は縛らなくていいです」

「手を縛らなければ、足を縛っても解いてしまうのでは」


「いや、いいものがあるのですよ」

 司令官は再び板を耳に当てて独り言を言い始めた。

「あ、お疲れ様。麻酔薬ドローンC3と中和薬ドローンN3、OKです。あと結束バンドのLLを2万本と結束プラグ1万個、そう、結束バンド同士を繋ぐやつ。それとニッパ100個ぐらい、至急ドローンで送って下さい。ああ大至急。届け先はラィンテリア城の屋上でお願い……ああ、よろしく」


 司令官が魔法の板をしまうと、私達に言った。

「じゃあ、急いで彼らを収容しましょう」


 コノエに陣頭指揮をとってもらい、この作業に多くの国民が参加した。

 武器を取り上げる者、結束バンドで足を縛る者、彼らを荷台に乗せて広場に運ぶ者。


 足を縛る際の結束バンドは、右足と左足を1本ずつで縛り、その2つを結束プラグで繋ぐ。

 これで、この結束バンドはニッパで切らないと足から外せない。

 尚、両足は30cmほど離れる為、なんとか歩く事が出来る。


 何にしても、8千人の数である。大きな広場4ヶ所使って収容した。

 アトラス国から8千人分の食料が次々と運ばれてくる……何なんだ、この国は。

 収容したグランバルの兵士達には、今後について、明日話をするようだ。

 特に大きな混乱もなく事を終えた。


 私とシノブはアトラス軍基地へ呼び出された。

 なんだろう、御馳走でもしてくれるのかな?

 そんな事をシノブと話しながら、軽い足取りで基地へ向かった。


 ……ところが……司令官の表情が、怖い。

 司令官が言った。

「あなたがたは、私を殺めようとしましたよね」

 げっ、忘れてた!


「この事実、簡単な事ではありません」

「すみません!」

 とっさにシノブが床に手を付いて土下座した。

 私も、しなきゃいけないかな~と思って、椅子から降りようとした時、司令官が言った。


「そのような事で許されると思っているのですか」

「では、どうしたら良いでしょう」

「あなたがたには、罰を受けて頂く」


 シノブが訊いた。

「お尻100叩きの刑ですか?」

 司令官は小さく息を吐いて、私達に5枚ずつ紙を渡した。


 これは原稿用紙というものらしい。

 司令官が言った。

「今回の件について、反省文を書いて下さい」


 私は、それを受け取り「じゃあ」と言って帰ろうとすると、

「城へ持ち帰らずに、ここで書いて下さい。城へ戻って他の者に代筆してもらっては、意味がありません」

 ……全てお見通しのようである。


「書いたらここに置いて、後はお帰り下さい」

 そう言い残すと、司令官は席を立った。


 ん~どうしたものか。私の胸の内を書かされるようで、恥かしい。

 ふと横を見ると、シノブはすらすら書いている。

 そ~っとシノブの原稿を覗き込んだ。


 『ごめんなさい、私はバカです、もうしません、許して下さい、なんでもします。どうしたら許してくれますか、……』

 な、何と!

 ……私もまねっこしよっと。

 『ごめんなさい、私もバカでした、許して下さい、もうしません……』


 私とシノブは、書き終えた原稿をテーブルに置いて、この基地を後にした。

 シノブは言った。

「乙女は好きな人以外、本音をしたためたりしないのよ~ あの司令官、わかってないな~」

「そ、そうよね! わかってないよね!」


 その日、私はシノブと意気投合して城へ戻った。


どうやら、この2人には、本当にお仕置きが必要のようです。


次回:収容者

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
analyze
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。