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⑵ 何故作物が育たない

 私は次の日も食料を取り寄せ、この国の隅々まで配って回った。

 なんか、ミントさんの表情が怖い。

 しかし、この行動をしばらく続ける事で、この国の国民は私の方に向く。


 そのように目論んでいたのだが、事は予想していない方向に向かった。

 国王に呼び出された。

「クレア殿、この国を買ってもらえんか?」

「は、はあ?」


「わしは、統治者として失格だ。わしには後を継がせる者もいない。この老いぼれ、この国の片隅で、余生を送りたい」

 ……願っても無い申し出である。


「はい、で、いくらほどで……」

「実は、私に替わってこの国を治めて頂けるのであれば、ただでも、そなたに譲りたいところなのだが、何分この10年間で、他国から色々借金を作ってしまった。貸した側も、回収出来ない事を知って、また、この国自体、魅力ないようで、ほっとかれている」

「はあ?」


「だが、統治者が替わるとなれば、一斉に取り立てにくるであろう」

「で、その負債総額とは?」

「約5000万G(5兆円)」

「ごっ……5000万G」


 ……だめだ、私の裁量を遥かに超えている。

「……申し訳ありません。そのような金額は……」

「……すまんかった。今の話、忘れてくれ」


 私は王の広間を後にした。

 何故だろう。国としての価値として、5000万Gは安すぎる。

 なのに、この国に金を貸した国は、回収出来ない現状にも関わらず、何故この国の土地を奪わない。


 『この国自体、魅力ないようで……』と言っていた。

 何故この国で、作物を育てない。土質は悪くないように見えるのだが……。


 私は、この事をミントさんとシノブに話した。

 ミントさんは、焦った表情で言ってきた。

「スジャク様、この国を買う等、言い出しませんよね」


「ああ、さすがに手が出ない」

「ええ、何が原因で傾いたのか解らない国……」

 ミントさんは、ほっと胸をなでおろしたようだ。


 ・・・・・・


 次の日の朝を向かえた。

 このまま、この国民を見捨てて国へ帰るのは忍びない。

 なんとか、出来ないものだろうか。


 歩いていると、賢明に畑仕事している老人が目に入った。

「やあ、お疲れさま」

「ああ、どこぞやの媛様、お陰様で、今年も冬を越せそうです」


「皆さんは、何故作物を育てないのですか?」

「いやあ、いくら育てても、みんな持っていかれちまうんです」

「持って行かれる?」


「ええ、10年ぐらい前から、何処かに住み着いた、バッタの大群に」

「バッタの大群?……そうか、収穫出来ない原因は、害虫によるものであったか」


 なるほど、この国に融資した国が、この国を欲しがらない理由が理解出来た。

 夜になると、何処からかバッタの大群が押し寄せ、作物を食い散らしていくという。

 これは厄介だ。


 まず、その実態を見てみよう。

 3人で、大きな畑の前で夜を待つ事にした。

 陽が沈んだが、あたりは月明かりで見る事が出来る。


 何だろう、バサバサといった音が聞こえてきた。

 バッタの大群が飛んで来た。

 とんでもない数である。


 なるほど、これでは手が出ない。

 おそらく、農作物のほとんどが食べられてしまっているのだろう。

 やはり、この国の復興は難しい。


 そう思っていたところ、突然ミントさんに呼び止められた。

「スジャク様!」

「はい?」


「これは……買いです!」

「はあ?」

「この国、5000万G、一気にいきましょう」


「えっ? しかしこのような状況で……しかも先立つものが」

「我々32人委員、それぞれ100万Gの裁量権を持っています。スジャク様の部下8人合わせて800万G」

「えっ」


「それとアドミンさんが、四天王様方から各500万G、3人で1500万Gの融資のお願いを取り付けました。全部で5300万Gになります」

「いつのまに」


「今朝、この国の農作物が収穫出来ない理由、害虫によるものとお聞きして、本国に報告したところ、なんとかするとアドミンさんからお話を頂き、先ほど、お約束を取り付けたと連絡を頂きました」

「……それは、害虫駆除の方法、何かあるのですね」


「アトラスの科学力を持ってすれば、お任せ下さい」

「しかし、にわかには……」

「ここは、一気に落としましょう」

「あの……」


 ミントさんは両手を握り絞め、空を埋め尽くすバッタの大群に向かって呟いた。

「害虫どもめ、駆逐してみせる!」

「あの……ミントさん? ……キャラ、変わってる?」


 ・・・・・・


 そして私は、ステイン王国の負債を全て返済する行動に出た。

 融資してくれた国々を廻る。返済を半ばあきらめていたようだ。


 何も知らずにあの国を統治しようなど……といった嘲笑った目で見られた。

 では、このお話はなかった事に、といった流れを匂わせ、それでは返済してもらえなくなる。

 このように相手を慌てさせる事で、ほとんどの国が2割から3割、値引いてくれた。


 そのおかげで、5000万Gの借金は、3700万Gで済ませる事が出来た。

 これなら、私と8人の部下の裁量で、なんとかなる。

 他の四天王からお借りした分は、すぐに返済しようとミントさんに伝えると、いえ、このままお借りしておきましょうとの事だ。


 まあ、あるお金なら、いつでも返せる。

 そして、害虫退治に向けて、本国へ機材の要請を行った。


次回:これを期に

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