⑴ アトラスの裏側
私を乗せたシャトルは、アトラス国に着いた。
私はシャトルから降りて、再びアトラスの地を踏んだ。
侵略戦争を起こした王家の媛として、責任を取らなければならない。
私は黒塗の車に乗せられ、アトラス国の中央にそびえ建つ、巨大な塔に連れて行かれた。
セリカ、ココアの案内によってエレベーターに乗り、最上階に着いた。
そして、重厚な扉の前に案内された。
セリカとココアが、両開きの扉を開けた。
そこには礼服を来た100人ほどの大人が、整然と並んでいる。
そして私に向かって一斉に頭を下げた。
私は最奥に置かれた椅子に案内された。
私を待っていたもの……それは、戦争責任者としての断罪の椅子ではなく、南の天王の椅子だった。
何やら解らぬ内に、私は南の天王になってしまった。
そして、スジャクという名前が与えられた……なんなんだ!
ここに集まった100人ほどの精鋭達は、再び静かに頭を下げて退室した。
そして、東の天王セイリュウ殿。西の天王ビヤッコ殿。北の天王ゲンブ殿。3人が挨拶に来られた。
超ー緊張した。
みなさん、ご年配の男性で、私のような若輩者が、どうしてなんだ!
次に32人委員の中の、私の直属の部下となる8人が挨拶に来られた。
男性5名、女性3名、この8人、私よりずっと年上だ。
私は泣きそうな声で言った。
「私は、どうしたらいい!」
8人の中で、上席の男性が答えてくれた。
「ご心配なさらないで下さい、我ら8人がスジャク様をお支え致します」
「私のような新参者の下に置かれて、皆さん、納得されているのですか?」
「人には分相応のポジションがあります。権限と責任の大きさを持つポジションです。私はその器ではありません」
「しかし!」
「カオス様のご判断に、今まで誤りはありませんでした。正直申し上げますと、今回は驚きました。しかしそれは、私共の理解がカオス様のお考えに追い付いていないと考えております」
他の7名も、うなずいている。
……あーどうしたらいいんじゃい!
一旦解散し、その男性だけが残った。お話があるとの事である。
「私は、この8人の統括を務めるアドミンと申します。よろしくお願い致します」
「はい、こちらこそ、よろしくお願い致します」
アドミンさんは、この国の事を私に話してくれた。
最初に話されたのは皇帝について。
皇帝は特殊な力を持ち合わせている。
皇帝と適合者との間でのみ、特殊な力を受け継いだ男子が生まれ、最初に生まれた男子が次の皇帝となる。
適合者とは数十万人に1人しか存在しない特別な女性で、皇帝のみが適合者を見分ける事が出来る。
皇帝は、世界中を回り適合者を探す。
特殊な力を受け継ぐ者を1人でも多く生み出す為、皇帝は一夫多妻としている。
しかし国を治める者として相応しくない為、皇帝は表舞台から裏側へ移った。
そして国名を『アトラス帝国』から『アトラス国』へ改名した。
裏側とは、皇帝をはじめとした特殊な力を受け継いだ者達の組織で、皇帝の存在、及び裏側の組織は、一般国民に知らされていない……との事である。
次に話されたのは、何故この国は発展しているのか。
裏側の人は、示教委員に高度な科学技術を伝える。
示教委員は、その仕組みを解き明かす。
解き明かされたものは、一般国民へ開示する。
その技術によって、この国を発展させてきた。
そして最後に話されたのは、南の天王としての役割と、私の持つ莫大な裁量権について。
アトラス国には、東西南北に別れた4つの国があり、私が治めるのは、この国の南に位置する南部国。
この4つの国の中で南部国は一番安定しており、前任の南の天王の功績が大きいとの事。
四天王を就任させるのは皇帝の一存で、上層部に入られて間もない女性を南の天王に就任させた時、心配する声がいくつか挙がった。
しかし、傾いていた財政を見事に建て直し、やはりカオス様の判断は正しかったと言われているようだ。
これだけの功績を上げた後任が私である。非常にやりにくいではないか。
アドミンさんからの話を終え、私に与えられた南の天王の部屋で、一人くつろいでいた。
私には、幾つかの疑問が残っていた。
裏側の人は、どうやって高度な科学技術を手に入れているのか?
そもそも、裏側の人が持つ特殊な力って何なのか?
そして、何の目的でそんな事をしているのか?
自分の部屋に閉じこもっていてはいけない。もっと、この世界を知らなければ。
私は最初に裏側と言われる組織へ向かった。
裏側の組織と言っても、単に公にしないだけの職場である。
この国の中心に建てられた巨大な28階建ての建物。中央塔という名前が付いている。
地下1階が駐車場となっており、1階から20階までが一般公務員の職場。
21階から24階までが特別公務員の職場。
25階から28階までが上層部と呼び、国の中枢を担う職場である。
そして、表には公表されていないが、実はこの中央塔、地下3階まであり、地下2階、地下3階が、裏側の職場となっている。
彼らは一般人と同じように家庭を持ち、家を持ち、毎日職場へ出勤し、普通に生活している。
ただ、本当の職場は一般人に明かさないだけである。
私は、裏側の組織と言われる職場を見学した。
真っ白なフロアー。ガラス張りで区切られた大きな部屋が並んでいる。
その中で、1人の裏側らしき人が、数名の示教委員に何やら説明している。
これが……この国の裏側の世界。
次回:適合者




