⑵ 愛の無い交わり
私とスジャクは向かい合って座った。
そして静寂の中、私は話しを始めた。
「あなたがこの国の上層部に入られて、この国の裏側の組織を知る事になりました。まずはあなたの思う所を聞かせて下さい」
「はい、正直申しまして、驚きました。それと同時に、何故この国だけ科学技術が発達しているのか、理解できました」
「貴女の目から見て、裏側の組織は、どのように映りましたか」
「はい、皆様本当に、この国の為にご自分を犠牲にされて、私は崇拝しております」
「では、彼らは何故、このような事をしているのでしょう」
「……この国を発展させる為ではないのですか?」
「そんなに急いで、発展させなければならないのでしょうか?」
「……」
「裏側の彼らは、何故このような事を懸命に行っているのか、その理由は、表側では四天王に就かれた方にのみ、明かしています」
「……私の理解を越えた理由が、あるという事ですか」
「はい。本日付けで、貴女は四天王になりました。その理由をお伝えします」
「……はい」
私は、その理由をスジャクに伝えた。
スジャクは、衝撃を受けていた。
・・・・・・
上層部に入って3年目のリオンを南の天王に就任させた事に対して、心配された声が幾つか挙がっていた。
しかし、南の天王としての活躍は、目覚ましいものであった。
大きく傾いていた南部国の財政を見事に立て直し、国民からの親愛も大変なものだった。
そして私は、リオンに惹かれていった。
ある日、スジャク(リオン)は改革案企画書を持って、私の執務室を訪れた。
私は目を通してスジャクに伝えた。
「了解しました。やりましょう」
スジャクは穏やかな表情を浮かべ、私に深く頭を下げて退室に向かった。
「リオン!」
私はスジャクを呼び止めた。
しかしスジャクは、本名であるリオンと呼ばれた事に、背を向けたまま立ち止まった。
私は椅子から立ち上がり、リオンの立つ後ろへ歩いた。
そして後ろからリオンを抱きしめた。
リオンは、私に体を預ける様に、後ろへ倒した。
私はリオンを振り向かせ、唇を重ねた。
その後、リオンは下を向き、静かにこの部屋を後にした。
そしてその日の夜、リオンは私の寝室に訪れた。
私とリオンは愛し合った。
躰を重ね、心を重ね……。
しかし、その後リオンは、私の寝室に訪れる事はなかった。
リオンは自分が私の適合者ではない事、解っていた様だ。
・・・・・・
私の責務として、私の適合者を探し出さなければならない。
しかし、国内で私の適合者を見つける事は出来なかった。
そこで私は、国外に目を向けた。
私は、様々な国の奴隷市場をまわった。
もし、適合者を見つける事が出来れば、買う事が出来る。
愛の無い交わりとなる。
私に買われた女性は、愛の無い交わりを受け入れてくれるだろうか。
そして178番目に訪れた奴隷市場で、適合者を見つけた。
まだ子供だ。
病気を患い、このままでは死ぬ。
私は彼女を買い、集中治療室へ入れた。
彼女にユキという名前を付けた。
やがてユキは病から回復した。
しかしユキはまだ10歳である。
少なくとも、ユキが学校を卒業するまで、交わる事は控えたい。
私は遠くからユキを見守り、大切に育てた。
ユキが学校での生活を送るにあたり、ユキと同年の少女、セリカとココアをガードとして付けた。
この2人、特殊公務の試験に優秀な成績で合格し、厳しい訓練、及び高度な教育を受けている。
極秘任務の位置付けとして、ユキの護衛、及び男性との接触を阻止するよう伝えた。
それと、ユキの指南役指導のもと、ユキの欠落した感受性を取り戻すよう、動いてもらった。
最初は任務として受けていたが、1週間も経たない内に、すっかり親友になってしまったとの事。
状況は、随時報告してもらった。
そして、ユキは高校3年になった。
ユキの進路志望書には、大学への進学と書かれていた。
そうなると、早くても5年先となる。
私は、次の適合者を探す事にした。
その矢先、隣国のラィンテリア王国が攻めてきた。
国境近辺で追い払ったが、このような武力を行使する国は、戦力を削いでおく必要がある。
私は、ラィンテリア王国への報復を計画し、その司令官として向かう事とした。
ラィンテリア王国の国民の中に、適合者がいるかもしれない。
敗戦国となれば、奴隷同様、手に入れる事が出来る。
愛の無い交わりとなる。
何かを見返りにする事で、受け入れてもらう事を望んだ。
報復隊編制のさなか、ユキが入隊を希望してきた。社会体験生としてである。
ユキは大切な体である。危険な所へは行かせたくない。
しかし、私と一緒であれば、むしろアトラスにいるより安全かもしれない。
ユキを私の秘書として、ラィンテリアへ向かった。
ラィンテリア王国は王達が逃亡し、事実上この国は崩壊した。
そこに、興味を引く女性がいた。
この国の媛で、この国の全権を預かり、この国に残った。
彼女は、復興の見返りに、自分の命を差し出すと言って来た。
しかし残念ながら、彼女は適合者ではない。
……ただ、この女性には、何か異なるものを感じる。
ある日、彼女は父達が亡命した国へ行く許可を求めてきた。
私は2人のガードを同行させる事で承諾した。
そして彼女達から、その国で伝染病が流行っている連絡を受けた。
伝染病となると、その国だけの問題ではなくなる。
医療隊を編成した。
政治的判断を要する事から、リオンは自ら赴くと言った。
今思えば、既にその時、南の天王引退を決意していたのだろう。
伝染病の封じ込めは成功した。
そして、リオンから書類が送られてきた。
南の天王引退届け。それと、私への謝罪の手紙。
リオンは、この国の王子と結婚する事となった。
『私の身勝手なお願いをお許し下さい。この先、ラムス王子と共に、ティファール王国を、必ずカオス様のお役に立てる国にしてみせます』
リオン、私の生涯の中で、貴女は私が愛した、ただ一人の女性です。
そして……これからも。
次回の第7章から、再びクレアの1人称視点となります。
是非、お付き合い下さい。
次回:(第7章1話)アトラスの裏側




