⑴ 皇帝
私が物心ついた時、私はこの国の中心に建てられた巨大な塔の最上階で生活していた。
私は、父である皇帝の最初の子として、この国を支える宿命を背負っている。
私が成人を迎えた日、父は皇帝の地位を私に譲り、この先の将来を私に託した。
そして私は、名前をカオスと改めた。
この名前は、皇帝の座に就く者が代々受け継ぐ名前である。
私が行わなければならない事。
その1番重要な事は、私の適合者を探し出す事である。
この国の初代皇帝は、Y染色体の突然変異により、特殊な力を身につけていた。
彼には1つの目的があった。
しかしそれは、一人では叶えられない。そして一代では叶えられない。
それには自分と同じ特殊な力を持つ者が、多く必要である。
しかし、生まれてきた子供は全て女子で、特殊な力は受け継がれていなかった。
突然変異によるY染色体と受精出来る女性は存在しないか。
彼は調べた。
その結果、数十万人に1人の確率で存在する。
彼はその女性を適合者と呼んだ。
そして特殊な力によって、適合者であるかを見分ける事が出来る。
彼は適合者を探した。
特殊な力を受け継ぐ子供を作る為である。
適合者との間で生まれてくる子供は、特殊な力を受け継いだ男子である。
よって、皇帝を継ぐ者は、必ず男子となった。
この国は、一夫一婦制を厳守している。
しかし皇帝を継ぐ者は、一夫多妻とした。
それは、特殊な力を受け継ぐ者を、1人でも多く生み出す為である。
だが、国を統治する者として相応しくない為、皇帝は表舞台から裏側へ移った。
そして国名を『アトラス帝国』から『アトラス国』へ改名した。
この国は東西南北、4つの国に別れ、4人の天王によって統治されている。
東の天王 セイリュウ
西の天王 ビヤッコ
南の天王 スジャク
北の天王 ゲンブ
四天王は1人につき8人の部下を持つ。
天王は4人いる為、全部で32人となる。
彼らは32人委員と呼ばれている。
32人委員もまた、1人につき8人の部下を持つ。
彼らは示教委員と呼ばれている。
四天王、32人委員、示教委員。
この人達を、この国の上層部と呼んでいる。
上層部とは、この国の中から特に優秀な人間が辿り着く場所で、この上層部に辿り着いた者のみ、この国の裏側を知る事が許される。
この国の裏側とは、皇帝、及び、適合者によって生みだされた特殊な力を受け継いだ者達であり、それは初代皇帝から引き継いだ、表に出せない計画に取り組んでいる組織である。
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この国の教育機関は、非常に重要な位置付けとされている。
小学校、中学校、高等学校。
ここまでを義務教育とし、卒業後、就職する者、進学する者に別れる。
進学とは大学へ行く事であり、入学試験に合格した者のみ、入学が許される。
この国には81校の大学があり、入学試験において最も難関とされているのが、アトラス大学である。
大学卒業生の中で、特に優秀な人間が、上層部へ採用される。
上層部は、毎年、だいたい20名採用する。
現在の上層部は、約30%が女性である。
今年、上層部に採用された20人の中に、特に優秀な女性がいた。
名前はリオン。
そして次の年、リオンは32人委員に選ばれた。
過去において、このような昇格、前例のない事であった。
リオンは、32人委員の中で、南の天王の配下となった。
皇帝である私に、直接会う事が出来るのは、四天王、及び、32人委員である。
32人委員の就任式で、私は初めてリオンと会った。
リオンが32人委員の職に就いてからも、リオンの活躍は目覚ましいものであった。
そして2年目、南の天王が引退を表明した。
四天王は、政治判断能力に衰えを感じた時、引退する事が出来る。
そしてその後継者は、皇帝である私の一存で決める事が出来る。
私はリオンを南の天王に就任させた。
上層部に入って3年目にして四天王の1角となる。
これも、前例の無い事である。
リオンは名前をスジャクと改めた。
この名前は、代々南の天王となる者が受け継ぐ名前である。
この国が向かう本当の姿。
それは表側では、四天王にのみ、明かしている。
私はその全てをスジャクに伝える使命がある。
「スジャク」
「はい、カオス様」
「南の天王への就任、よろしくお願いします」
「はい、前任南の天王様の後任に私をご指名頂き、ありがとうございます」
「その件で、お話があります。これからお時間、頂けますか」
「はい、よろしくお願い致します」
「では、場所を改めましょう。天元の広間で」
「……はい、承知いたしました」
天元の広間、それは重要な話が行われる時に使われる広間である。
次回:(第6章 終話)愛の無い交わり




