⑷ ユキの想い
アトラス国を見学に来て、ユキに色々な所を案内してもらった。
そして、最終日1日前となった。
チェックアウトなる手続きを終えて、ホテルを後にした。
今日はユキの部屋に案内してくれるとの事で、そこに泊まる予定だ。
途中で、ホームセンターなるお店を紹介してくれた。
非常に広い店内で、色々な物が置かれていた。
入口付近に観葉植物のコーナーがあった。
私の国では、花は愛でても葉を愛でる事は無い。
しかし改めてみると、この緑の葉は立派ではないか。
緑そのものが美しい、そして格好良い。
このウンベラータという観葉植物、城の玄関に飾れば映えるであろう。
次に見たのは、熱帯魚である。
魚とは食すものであるが、ここでは観賞用との事だ。
たしかに美しい。宝石が泳いでいるようだ。
そして、家電コーナーへ行った。
電子レンジ……瞬時に食べ物を温め、しかし皿は熱くならないという不思議な機械。
エアコン……これを備えた部屋は、夏は涼しく、冬は暖かいとの事。
言われてみれば、ホテルにしても、この店にしても、快適な温度である。
この国は、気象すら支配しているのか。
そして工具コーナーを見た。
様々な道具がある。
ラィンテリアでも、重機を造るのは、まだ無理かもしれないが、点検や修理、部品交換等、出来るようになりたい。
やはり、ラィンテリア大学にも、工学部は早急につくらねばなるまい。
一通り見てまわり、ホームセンターを後にした。
そしてユキの住まいに向かう。
ユキが普段、どのような環境で生活しているのか、非常に興味深い。
建物は、大きな円柱型のビルだった。
この最上階にユキの部屋があるとの事。
最初に1階の食料品売り場に案内された。
ここで食材を買って、ユキの部屋で女子会を開こうとの事だ。
「女子会?」と尋ねると「楽しみにしていて」と言われた。
その食料品売り場はとても広く、明るく、非常に衛生的だ。
食品も、綺麗に並べられている。
売り場を見ているだけでも楽しい。
これは、私の国でも見習わなければならないと思った。
移動可能の台にカゴを乗せ、その中に食べたい食材を入れていく。
アイスクリーム、スナック菓子、ソフトドリンク……。
手あたり次第、カゴに入れた。
会計を済ませ、ユキの部屋へ向かう。
部屋へ入ると、そこは、チェックインしたてのホテルの部屋のようだ。
必要な物以外、何も無い。整然とした部屋……これがユキの部屋。
早速キッチンで料理を作り始めた。
料理を作り慣れているユキを見て、私とシノブは驚いた。
テーブル一杯に食べ物を広げて、女子会は始まった。
楽な姿勢、時間を気にしないで、ゆったりと過ごす。
好きな物を好きなだけ食べて、女の子同士の会話。
これが女子会。うん、これは楽しい。
夜になると、ユキの部屋にソファーベッドを運び、ユキのベッドと、その上のマットレスを分離して、3人分の寝床を作った。
それからは、3人で寝ながら話をした。
だいたい話の内容は、恋バナである。
私はユキに訊いた。
「ユキは、付き合っている人、いるの?」
「いや、いませんよ」
「好きな人は?」
「んー想いを寄せている人はいるのですが……」
シノブが身を乗り出した。
「えっ誰? 私の知っている人?」
私は、恐る恐る聞いた。
「もしかして、司令官?」
「えー違いますよー」
シノブが割り込んだ。
「あー違うんだー」
「あー司令官ですかーええ、司令官、良いかたですよ。……でも、司令官ではありません」
シノブが訊いた。
「どんな人?」
「んー実は、良く解らないんです」
「何ですか?」
「私、幼少の頃は、別の所にいたんです」
私は訊いた。
「ユキって、難民だったの?」
「いえ、私は、売り者だったんです」
「えっ!」
私は驚いた。シノブも驚いた顔をしている。
「そこで、ずっと私を買って下さる方を待っていました」
「……信じられない」
「でも、いつまでも買って下さる方が現れないと、そこからも追い出されてしまいます」
「追い出されたらどうなるの?」
「それは、食べる物の無い……死を意味します」
「うそ……」
「私は病気になり、体も痩せて、もう誰かが私を買ってくれる事は諦めていました」
「そんなぁ」
「ところがある日、こんな私を買って下さる方が現れたのです」
「それが、この国の人?」
「はい。しかし、その時の私の体は、既に限界に来ていて、意識の無いまま運ばれました」
「あー良かったわねー」
「私を抱きかかえてヘリに乗る時、その方の顔を見る事が出来たのですが、その方が誰なのか、今では解りません」
シノブが言った。
「そっかーその人がユキの想い人かーその人に会ったら、想いを伝える?」
「いえ、ただ、お礼が言いたいです」
「えーなんでー」
「私がこの国に運ばれて集中治療室に入れて頂き、その後、体力の回復と学校に編入する為の勉強をさせて頂きました。でもその扱いは普通じゃないんです」
「普通じゃないって?」
「私の扱いとして、特1級……特例的対応と言われました」
「特例的対応?」
「そのような指示、誰でも出せる事ではないのです。もしかしたら……まさかとは思いますが、もしその方が四天王様の一人だとしたら、想いを寄せる等、おこがましいです。ですので、ただ、お礼を言いたいです」
私は訊いた。
「ユキは、四天王様にお会いした事は?」
「いいえ、四天王様にお会い出来るのは、この国の上層部の方のみです……ええ、そうですよね、四天王様が私を買われるなんて、ありえませんよね」
「……でもユキは、もしかしたらって、思っているのよね」
ユキは、ただ下を向いていた。
……ユキを抱きかかえてヘリに乗った。
なんだろう、私が熱中症で倒れた時、私を抱きかかえて木陰に運んでくれた状況が重なる。
私は、もしかしたら……ユキが想いを寄せている人を、知っている。
その後、私達は、他愛のない話をしながら、寝てしまった。
そしてラィンテリアへ帰る日が来た。
今まで見て来たお店で気になっていた物を買いに、ワゴンタクシーを借り切って走り回った。
そして、私とシノブとユキの3人、それと沢山のお土産を乗せて、シャトルはアトラス国を後にした。
次回:初めての選挙
いよいよ媛さまが、司令官との契約を、果たす時が来てしまいました。




