↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静国 -Silent Dominion-  作者: はやぽん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
78/85

第25話 最初の記録 Part2 残っているもの

Case-05からCase-07までは、Case-04より短かった。

《Case-05》

《生活支援開始 あり》

《初回要因説明 あり》

《現行設備影響 既存補正内》

次。

《Case-06》

《生活支援開始 あり》

《初回要因説明 あり》

《現行設備影響 既存補正内》

最後。

《Case-07》

《生活支援開始 あり》

《初回要因説明 あり》

《現行設備影響 既存補正内》

悠真は最後の確認を付けた。

《Case-07》

《初期設備記録と現行設備記録》

《対応確認 完了》

画面が一覧へ戻る。

七件。

すべてに、

《確認済み》

が付いている。

「設備側は全部処理済みですね」

隣の社員が言った。

「はい」

統括室の担当者が答える。

「今回の確認目的については、追加対応はありません」

「じゃあ今日、何で初期記録まで見直したんです?」

「調査資料の形式統一です」

担当者が画面を切り替えた。

《急落事象調査》

《初期記録整理》

《対象》

《Case-01〜Case-07》

《目的》

《初回記録と現行記録の対応確認》

《設備・交通・地域施設各記録の表記統一》

「調査が続く限り、参照する資料を揃えておく必要があります」

「原因調査のため?」

「原因調査も含まれます。ただし、こちらの整理結果がそのまま原因判定へ使われるわけではありません」

「設備側の事実だけ渡す?」

悠真が訊いた。

「はい」

画面には共有先が表示される。

《基盤運用統括室》

《設備需要記録》

《交通基盤調整室》

《移動需要記録》

《地域行政支援室》

《施設利用記録》

《ミライ庁監査局》

《調査記録統合》

各部署で確認した内容を、監査局が調査資料へまとめる。

一つの部署が全部を見るわけではない。

これまでと同じだった。

担当者が言う。

「次に、記録状態の差を確認します」

七件の一覧に、列が追加された。

《初回入力》

《再計算》

《支援開始》

《設備記録》

《現行照合》

すべて埋まっている。

Case-04だけが多いわけではない。

「資料数、そんなに変わらないですね」

悠真が言った。

担当者が頷く。

「現在の調査資料については、基本項目は七件とも揃っています」

悠真はCase-04を見る。

以前から、何度も比較資料として使われてきた。

最初に見た時は、他の事例より整理されているからだと思っていた。

実際、設備記録も支援後記録も揃っている。

ただ、今の一覧では、他の六件にも同じ種類の記録がある。

「Case-04って、一番資料が多いんじゃないんですか?」

悠真が訊いた。

担当者は画面を見る。

「総資料数についてですか?」

「はい」

「現在の共有資料だけでは比較できません」

「でも、代表事例ですよね」

「はい」

「前に比較資料で使われてた時、記録が揃ってるからだと思ってたんですけど」

担当者は少し考えた。

「比較資料として使用しやすい条件は満たしています」

「ほかは?」

「満たしていない、とは表示されていません」

「じゃあ、やっぱり理由は別?」

担当者は答える前に、正面の資料を操作した。

《Case-04》

《管理情報》

《代表管理事例》

《指定状態 継続》

その下。

《代表指定理由》

悠真はさっき見た表示を思い出す。

担当者が開く。

《現在の担当業務には含まれません》

《所管 ミライ庁監査局》

「そこは変わらないですね」

隣の社員が言った。

「はい」

「調査用の管理理由なら、設備には要らないか」

「現時点では」

担当者は画面を戻した。

悠真もそれ以上は訊かなかった。

理由を知らなくても、設備記録の確認はできる。

今日の仕事には必要ない。

十一時十二分。

初期記録の形式確認に移った。

七件それぞれについて、初回支援開始前と支援開始後の設備条件が並ぶ。

Case-01。

《支援開始前》

《居住設備利用 標準範囲》

《公共交通利用 標準範囲》

《地域施設利用 標準範囲》

《支援開始後》

《在宅時間変化》

《交通利用変化》

《施設利用変化》

具体的な本人の生活は出ない。

設備側から確認できる変化だけだった。

Case-02。

Case-03。

同じ形式が続く。

「支援前って、普通なんですね」

隣の社員が言った。

悠真も画面を見る。

異常な設備利用。

極端な外出停止。

長期不在。

そういった表示はない。

担当者が答える。

「設備記録上は、登録前日に重大な異常は確認されていません」

「七件とも?」

「重大な設備異常については」

「生活の方は?」

「本日の担当範囲外です」

社員は頷いた。

悠真はCase-04を開く。

《支援開始前》

《居住設備利用 標準範囲》

《公共交通利用 通常範囲》

《地域施設利用 通常範囲》

《設備異常 なし》

前の日まで、設備側から見れば普通だった。

その翌日。

生活支援が始まる。

その後、利用時間が変わる。

移動が変わる。

施設利用が変わる。

設備記録だけなら、支援が始まった日を境に生活が動いたことは分かる。

なぜ支援が始まったかは分からない。

「支援の効果って、ここでは評価しないんですよね」

悠真が訊いた。

「設備側では評価しません」

「例えば、この人の生活が良くなったかとか」

「扱いません」

「悪くなったかも?」

「扱いません」

担当者は画面を切り替える。

《設備記録から判断しない事項》

《本人の生活満足》

《支援効果の本人評価》

《生活支援区分の妥当性》

《心理状態》

《将来予測の妥当性》

「設備利用が安定したからといって、本人の生活が良くなったとは判断しません」

悠真はその項目を見る。

「逆も?」

「はい」

「需要が不安定だから、不幸だとも言えない」

「その通りです」

以前受けた研修と同じだった。

生活満足。

生活安定。

予測可能性。

似て見えても、同じものではない。

悠真はCase-04の現在記録を開いた。

《現行設備状態》

《住居需要 補正済み》

《公共交通需要 補正済み》

《地域施設需要 補正済み》

《設備追加対応 不要》

設備だけなら落ち着いている。

それ以上のことは書かれていない。

「本人の今の回答って、どこかにあるんですか?」

隣の社員が訊いた。

担当者が答える。

「本人向け支援部門には、支援確認記録があります」

「見られない?」

「今回の共有範囲には含まれません」

「匿名でも?」

「設備記録の確認には必要ありません」

「そうですよね」

社員はすぐに引いた。

悠真も画面を閉じかけた。

その前に、Case-04の資料一覧を開く。

《設備需要》

《交通需要》

《地域施設》

《本人向け通知》

《支援記録》

《監査記録》

《調査管理》

後ろ四つには、

《担当範囲外》

と付いている。

本人向け通知は、以前、別の確認業務で一部だけ見たことがある。

《生活支援区分 D》

《個別要因 確認継続中》

《再計算結果 一致》

それ以上の本人の言葉はなかった。

今も同じなのか。

当時より生活が良くなったのか。

本人が支援を望んだのか。

満足しているのか。

表示された資料だけでは分からない。

悠真は資料一覧を閉じた。

十一時四十一分。

最後に、七件の記録整合結果が表示された。

《Case-01》

《初期・現行対応 確認済み》

《Case-02》

《確認済み》

《Case-03》

《確認済み》

《Case-04》

《確認済み》

《Case-05》

《確認済み》

《Case-06》

《確認済み》

《Case-07》

《確認済み》

「設備側の整理はこれで完了です」

担当者が言った。

「本日の確認内容は、監査局の調査記録へ反映されます」

《共有内容》

《初回設備影響》

《支援後設備影響》

《現行設備影響》

《記録対応確認》

《共有しない内容》

《担当者推測》

《原因仮説》

《代表指定理由》

「担当者推測って、入れないんですね」

隣の社員が言った。

「事実確認資料ですので」

「じゃあ、佐伯さんが何でCase-04が代表なのか考えてても関係ない」

社員が笑う。

悠真も少し笑った。

「考えてるって決めつけるなよ」

「さっき聞いてたじゃないですか」

「理由があるなら知りたいだけ」

「同じでは?」

「違う」

担当者は特に会話へ入らず、処理を進めている。

《確認記録を送信しますか》

《送信》

悠真は押した。

《送信しました》

《担当範囲の確認を完了しました》

業務画面へ戻る。

今日の確認支援は、

《完了》

になった。

その下に、

《関連資料》

が一件残っている。

《急落事象調査》

《管理項目》

悠真は開いた。

七件の一覧。

一番上に、

《Case-01〜07》

その下に、

《代表管理事例 Case-04》

さらに、

《代表指定理由》

がある。

悠真はもう一度だけ押した。

《現在の担当業務には含まれません》

《所管 ミライ庁監査局》

表示は変わらなかった。

悠真は《戻る》を押した。

時計は十一時四十五分だった。

午後の予定まで、まだ時間があった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。