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自己紹介。  作者: 無記名
8/13

第8話「やめる」

やめようと思った。


***


これ以上は、よくない。


***


理由は、うまく説明できない。


でも、続けるべきじゃないと分かる。


***


「……」


***


スマートフォンを、机に置く。


***


電源ボタンを長押しする。


***


画面が暗くなる。


***


完全に、消える。


***


「……」


***


それを見届けてから、手を離す。


***


これでいい。


***


見なければいい。


触らなければいい。


***


それだけのことだ。


***


「……」


***


ベッドに横になる。


***


天井を見る。


***


何も起きない。


***


静かだ。


***


「……」


***


少しだけ、安心する。


***


「……」


***


そのまま、目を閉じる。


***


どれくらい時間が経ったのかは分からない。


***


眠ってはいないと思う。


でも、意識はぼんやりしていた。


***


「……」


***


ふと、目を開ける。


***


部屋は暗い。


***


「……」


***


電気は、消していないはずだった。


***


「……」


***


体を起こす。


***


そのとき。


***


カチ。


***


小さな音がした。


***


「……」


***


机の方を見る。


***


「……」


***


スマートフォン。


***


「……」


***


画面が、ついている。


***


「……」


***


さっき、電源を落としたはずだ。


***


「……」


***


光が、やけに強く見える。


***


「……」


***


しばらく動けない。


***


「……」


***


やめたはずだ。


***


見ないと決めた。


***


「……」


***


それでも。


***


目が離せない。


***


「……」


***


ゆっくりと、立ち上がる。


***


一歩ずつ、机に近づく。


***


「……」


***


手を伸ばす。


***


触れる。


***


画面は消えない。


***


「……」


***


そこに表示されているのは、小説のページ。


***


「……」


***


勝手に、開いている。


***


「……」


***


喉の奥が、ひりつく。


***


「……」


***


一番下。


***


新しい一文。


***


「……」


***


——やめようとしている。


***


「……」


***


息が止まる。


***


「……」


***


——見ないようにしている。


***


「……」


***


「……」


***


指が、動かない。


***


「……」


***


——でも、できていない。


***


「……」


***


「……」


***


画面から目が離せない。


***


「……」


***


——結局、見ている。


***


「……」


***


「……やめろ」


***


小さく呟く。


***


「……」


***


その瞬間。


***


新しい一文が、増える。


***


「……」


***


——声に出した。


***


「……」


***


「……」


***


背中に、冷たいものが走る。


***


「……」


***


「……やめろ」


***


もう一度、言う。


***


「……」


***


画面。


***


「……」


***


——もう一度、言った。


***


「……」


***


「……」


***


息が荒くなる。


***


「……」


***


スマートフォンを、掴む。


***


電源ボタンを押す。


***


長押しする。


***


「……」


***


反応しない。


***


「……」


***


何度も押す。


***


「……」


***


変わらない。


***


「……」


***


そのとき。


***


また、文章が増える。


***


「……」


***


——壊そうとしている。


***


「……」


***


「……」


***


「……やめろ」


***


手に力が入る。


***


「……」


***


スマートフォンを、机に叩きつける。


***


鈍い音。


***


「……」


***


画面。


***


割れていない。


***


消えていない。


***


「……」


***


そこに、ある。


***


「……」


***


新しい一文。


***


「……」


***


——壊せない。


***


「……」


***


「……」


***


手が震える。


***


「……」


***


——まだ、続く。


***


「……」


***


ゆっくりと、視線を上げる。


***


部屋の中。


***


ベッド。


***


机。


***


ドア。


***


「……」


***


何も変わらない。


***


「……」


***


でも。


***


「……」


***


違う気がする。


***


「……」


***


もう一度、画面を見る。


***


「……」


***


一番下。


***


最後の一文。


***


「……」


***


——ここから。


***


「……」


***


「……」


***


その続きが、まだ表示されていない。


***


「……」


***


なのに。


***


「……」


***


分かる。


***


「……」


***


次に何が書かれるのか。


***


「……」


***


画面が、わずかにスクロールする。


***


「……」


***


新しい一文。


***


「……」


***


——あなたは、続きを知っている。

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