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自己紹介。  作者: 無記名
5/13

第5話「一致」

次の日は、少しだけ意識して過ごした。


昨日のことが、頭から離れなかったからだ。


***


——今日は、帰りが少し遅かった。

——いま、部屋にいる。

——いま、見ている。


***


どれも、事実だった。


***


偶然だと思おうとした。


でも、どうしても引っかかる。


***


「……」


***


朝、目が覚める。


いつもと同じ時間。


***


少しだけ早かったかもしれない。


***


布団の中で、天井を見る。


***


「……」


***


スマートフォンには、触れていない。


***


まだ、触れていない。


***


「……」


***


ゆっくりと、手を伸ばす。


***


止める。


***


「……」


***


もし。


***


本当に、“今の自分”が書かれているなら。


***


「……」


***


スマートフォンを取る。


***


画面を開く。


***


迷わず、小説のページを開く。


***


一覧画面。


***


恋愛小説。


「君が物語を奏でるなら」


***


閲覧数は、また増えている。


***


もう、そこはどうでもいい。


***


最終更新日時。


***


「……」


***


——数秒前。


***


「……」


***


何も考えないようにする。


***


作品ページを開く。


***


一番下までスクロールする。


***


昨日の一文。


***


——今日は、帰りが少し遅かった。

——いま、部屋にいる。

——いま、見ている。


***


その下。


***


空白。


***


「……」


***


しばらく、画面を見ていた。


***


何も起きない。


***


「……」


***


試す。


***


小さく、そう思った。


***


あり得ないとは思う。


***


でも、もし。


***


「……」


***


ゆっくりと、布団から起き上がる。


***


できるだけ、ゆっくり。


***


音を立てないように。


***


「……」


***


スマートフォンを見る。


***


まだ、何も変わらない。


***


「……」


***


一歩、床に足をつける。


***


その瞬間。


***


画面の下が、わずかに動いた。


***


「……」


***


視線が、固定される。


***


新しい一文。


***


「……」


***


——いま、起き上がった。


***


「……」


***


呼吸が、浅くなる。


***


「……」


***


偶然。


***


まだ、偶然の範囲だ。


***


「……」


***


立ち上がる。


***


ゆっくりと。


***


「……」


***


画面。


***


「……」


***


——立ち上がった。


***


「……」


***


喉が乾く。


***


「……」


***


一歩、前に出る。


***


画面。


***


「……」


***


——一歩、前に出た。


***


「……」


***


「……」


***


試す。


***


わざと。


***


ゆっくりと、右手を上げる。


***


画面。


***


「……」


***


——右手を上げた。


***


「……」


***


止まる。


***


「……」


***


今度は、左手。


***


画面。


***


「……」


***


——左手も上げた。


***


「……」


***


完全に、一致している。


***


時間差も、ほとんどない。


***


「……」


***


手を下ろす。


***


画面。


***


「……」


***


——手を下ろした。


***


「……」


***


息が、うまくできない。


***


「……」


***


もう一度、試す。


***


今度は、少し速く。


***


二歩、後ろに下がる。


***


画面。


***


「……」


***


——二歩、後ろに下がった。


***


「……」


***


「……」


***


あり得ない。


***


「……」


***


いや。


***


あり得ている。


***


目の前で、起きている。


***


「……」


***


スマートフォンを、ゆっくりと裏返す。


***


画面を見ないようにする。


***


「……」


***


数秒、そのままでいる。


***


「……」


***


何も見えない。


***


何も分からない。


***


「……」


***


それでも。


***


頭の中に、続きが浮かぶ。


***


「……」


***


嫌な予感がする。


***


「……」


***


耐えきれずに、スマートフォンを戻す。


***


画面を見る。


***


一番下。


***


新しい一文。


***


「……」


***


——いま、見ていない。


***


「……」


***


背中に、冷たいものが走る。


***


「……」


***


「……なんで分かる」


***


声が漏れる。


***


答えはない。


***


「……」


***


そのとき。


***


新しい一文が、増える。


***


「……」


***


——いま、怖いと思っている。


***


「……」


***


「……」


***


違う、と言いかけて、止まる。


***


「……」


***


否定できない。


***


「……」


***


確かに、怖い。


***


「……」


***


さらに、文字が増える。


***


「……」


***


——でも、まだやめていない。


***


「……」


***


息が、止まる。


***


「……」


***


画面から目が離せない。


***


「……」


***


そのとき。


***


視線が、自然と画面の端にいく。


***


閲覧中の人数。


***


小さく表示されている数字。


***


「……」


***


一人。


***


「……」


***


昨日と同じ。


***


誰かが、見ている。


***


「……」


***


更新する。


***


閲覧数が、増える。


***


でも。


***


「……」


***


閲覧中の人数は、変わらない。


***


ずっと、一人のまま。


***


「……」


***


更新する。


***


増える。


***


更新する。


***


増える。


***


「……」


***


そのとき。


***


ほんの一瞬だけ。


***


数字が、変わった。


***


「……」


***


一人から——


***


二人に。


***


「……」


***


次の瞬間。


***


また、一人に戻った。


***


「……」


***


「……」


***


誰だ。


***


「……」


***


その下。


***


新しい一文。


***


「……」


***


——いま、それを見た。


***


「……」


***


呼吸が、乱れる。


***


「……」


***


さらに。


***


「……」


***


——もう一人のことも。


***


「……」


***


指が、止まる。


***


「……」


***


画面を、見つめる。


***


「……」


***


——あなたは、まだ気づいていない。


***


「……」


***


「……なにに」


***


声が、かすれる。


***


「……」


***


答えは、表示されない。


***


ただ。


***


画面の中の文章だけが、静かに増え続けている。

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