第5話「一致」
次の日は、少しだけ意識して過ごした。
昨日のことが、頭から離れなかったからだ。
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——今日は、帰りが少し遅かった。
——いま、部屋にいる。
——いま、見ている。
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どれも、事実だった。
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偶然だと思おうとした。
でも、どうしても引っかかる。
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「……」
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朝、目が覚める。
いつもと同じ時間。
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少しだけ早かったかもしれない。
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布団の中で、天井を見る。
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「……」
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スマートフォンには、触れていない。
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まだ、触れていない。
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「……」
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ゆっくりと、手を伸ばす。
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止める。
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「……」
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もし。
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本当に、“今の自分”が書かれているなら。
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「……」
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スマートフォンを取る。
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画面を開く。
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迷わず、小説のページを開く。
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一覧画面。
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恋愛小説。
「君が物語を奏でるなら」
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閲覧数は、また増えている。
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もう、そこはどうでもいい。
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最終更新日時。
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「……」
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——数秒前。
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「……」
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何も考えないようにする。
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作品ページを開く。
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一番下までスクロールする。
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昨日の一文。
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——今日は、帰りが少し遅かった。
——いま、部屋にいる。
——いま、見ている。
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その下。
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空白。
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「……」
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しばらく、画面を見ていた。
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何も起きない。
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「……」
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試す。
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小さく、そう思った。
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あり得ないとは思う。
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でも、もし。
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「……」
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ゆっくりと、布団から起き上がる。
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できるだけ、ゆっくり。
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音を立てないように。
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「……」
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スマートフォンを見る。
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まだ、何も変わらない。
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「……」
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一歩、床に足をつける。
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その瞬間。
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画面の下が、わずかに動いた。
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「……」
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視線が、固定される。
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新しい一文。
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「……」
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——いま、起き上がった。
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「……」
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呼吸が、浅くなる。
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「……」
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偶然。
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まだ、偶然の範囲だ。
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「……」
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立ち上がる。
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ゆっくりと。
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「……」
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画面。
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「……」
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——立ち上がった。
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「……」
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喉が乾く。
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「……」
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一歩、前に出る。
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画面。
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「……」
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——一歩、前に出た。
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「……」
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「……」
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試す。
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わざと。
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ゆっくりと、右手を上げる。
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画面。
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「……」
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——右手を上げた。
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「……」
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止まる。
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「……」
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今度は、左手。
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画面。
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「……」
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——左手も上げた。
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「……」
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完全に、一致している。
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時間差も、ほとんどない。
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「……」
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手を下ろす。
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画面。
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「……」
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——手を下ろした。
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「……」
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息が、うまくできない。
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「……」
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もう一度、試す。
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今度は、少し速く。
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二歩、後ろに下がる。
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画面。
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「……」
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——二歩、後ろに下がった。
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「……」
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「……」
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あり得ない。
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「……」
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いや。
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あり得ている。
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目の前で、起きている。
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「……」
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スマートフォンを、ゆっくりと裏返す。
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画面を見ないようにする。
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「……」
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数秒、そのままでいる。
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「……」
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何も見えない。
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何も分からない。
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「……」
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それでも。
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頭の中に、続きが浮かぶ。
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「……」
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嫌な予感がする。
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「……」
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耐えきれずに、スマートフォンを戻す。
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画面を見る。
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一番下。
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新しい一文。
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「……」
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——いま、見ていない。
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「……」
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背中に、冷たいものが走る。
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「……」
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「……なんで分かる」
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声が漏れる。
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答えはない。
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「……」
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そのとき。
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新しい一文が、増える。
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「……」
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——いま、怖いと思っている。
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「……」
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「……」
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違う、と言いかけて、止まる。
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「……」
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否定できない。
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「……」
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確かに、怖い。
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「……」
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さらに、文字が増える。
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「……」
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——でも、まだやめていない。
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「……」
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息が、止まる。
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「……」
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画面から目が離せない。
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「……」
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そのとき。
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視線が、自然と画面の端にいく。
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閲覧中の人数。
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小さく表示されている数字。
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「……」
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一人。
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「……」
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昨日と同じ。
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誰かが、見ている。
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「……」
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更新する。
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閲覧数が、増える。
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でも。
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「……」
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閲覧中の人数は、変わらない。
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ずっと、一人のまま。
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「……」
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更新する。
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増える。
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更新する。
***
増える。
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「……」
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そのとき。
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ほんの一瞬だけ。
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数字が、変わった。
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「……」
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一人から——
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二人に。
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「……」
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次の瞬間。
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また、一人に戻った。
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「……」
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「……」
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誰だ。
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「……」
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その下。
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新しい一文。
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「……」
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——いま、それを見た。
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「……」
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呼吸が、乱れる。
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「……」
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さらに。
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「……」
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——もう一人のことも。
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「……」
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指が、止まる。
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「……」
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画面を、見つめる。
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「……」
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——あなたは、まだ気づいていない。
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「……」
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「……なにに」
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声が、かすれる。
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「……」
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答えは、表示されない。
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ただ。
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画面の中の文章だけが、静かに増え続けている。




