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自己紹介。  作者: 無記名
3/13

第3話「更新」

次の日も、特に変わったことはなかった。


朝起きて、支度をして、仕事に向かう。


いつもと同じ流れ。


昨日のことは、完全に忘れていたわけじゃないけど、強く意識するほどでもなかった。


閲覧数が増えていたことも、今となってはそれほど気になるものではない。


たまたま、そういう日だった。


そう考えれば、それで済む話だと思っていた。


***


昼休み、なんとなくスマートフォンを取り出した。


特にやることがあったわけじゃない。


時間を潰すために、無意識に触っていただけだ。


***


ふと、小説のページを開く。


これも、いつもの流れだった。


***


一覧画面が表示される。


並んでいるタイトル。


変わらない。


その中にある、自分の作品。


***


まず、目に入るのは閲覧数だった。


***


「……」


***


少しだけ、止まる。


***


増えている。


***


昨日の夜に見た数字よりも、さらに増えている。


***


「……まあ」


***


小さく息を吐く。


ここまでは、予想通りだ。


昨日の流れを考えれば、今日も多少は増えていてもおかしくない。


***


問題は、その下だった。


***


最終更新日時。


***


「……」


***


表示されている日付に、違和感があった。


***


今日の日付になっている。


***


「……は?」


***


思わず、声が出そうになる。


***


更新なんてしていない。


昨日も、今日も、何も触っていないはずだ。


***


「……」


***


見間違いかと思って、画面をよく見る。


***


日付は変わらない。


***


今日になっている。


***


「……」


***


一度、ページを閉じる。


***


そして、もう一度開く。


***


表示は同じだった。


***


「……なんで」


***


小さく呟く。


***


頭の中で、いくつか理由を考える。


***


表示の不具合。


キャッシュの問題。


アプリのバグ。


***


それらしい言葉はいくつも浮かぶ。


どれも、あり得ない話ではない。


***


「……まあ、そういうのか」


***


無理やり納得する。


***


実際、こういうことはたまにある。


表示がおかしくなることくらい、珍しくもない。


***


それで終わりにするつもりだった。


***


でも、少しだけ気になって、作品ページを開いた。


***


本文が表示される。


***


一話目。


二話目。


***


スクロールする。


***


どこも変わっていない。


***


見覚えのある文章。


書いた記憶もある。


***


「……だよな」


***


小さく安心する。


***


内容は変わっていない。


***


更新されているわけじゃない。


***


ただ、表示がおかしいだけ。


***


そう思うことにする。


***


一覧に戻る。


***


最終更新日時。


***


やっぱり、今日の日付。


***


その下に、小さく表示されている時刻。


***


「……」


***


さっき見たときよりも、新しい時間になっている。


***


「……」


***


指が止まる。


***


今、この瞬間に更新されたみたいな表示。


***


「……いや」


***


そんなはずはない。


***


さっきから、ずっと見ている。


***


何もしていない。


***


「……」


***


画面を、指で引き下げる。


***


更新する。


***


表示が再読み込みされる。


***


「……」


***


変わらない。


***


時刻は、そのまま。


***


「……」


***


もう一度、更新する。


***


「……」


***


変わらない。


***


「……気のせいか」


***


そう呟いて、スマートフォンを置こうとした。


***


そのとき。


***


ほんの一瞬だけ。


***


時刻が、変わった。


***


「……」


***


数秒前、から。


***


——たった今、に。


***


「……」


***


呼吸が、少しだけ浅くなる。


***


「……」


***


画面を見つめる。


***


何もしていない。


***


触っていない。


***


それでも、表示だけが変わる。


***


「……」


***


もう一度、更新する。


***


今度は、変わらない。


***


「……」


***


しばらく、そのまま見ていた。


***


何も起きない。


***


ただ、時間だけが進んでいる。


***


「……」


***


やっぱり、気のせいかもしれない。


***


そう思うことにする。


***


それ以上考えるのをやめて、画面を閉じた。


***


午後の仕事に戻る。


***


でも、少しだけ引っかかるものが残る。


***


「……」


***


更新していないのに、更新されている。


***


本文は変わっていない。


***


それなのに、時間だけが動いている。


***


「……」


***


帰り道、またページを開いた。


***


一覧画面。


***


恋愛小説。


***


最終更新日時。


***


「……」


***


今日の日付。


***


その下の時刻。


***


「……」


***


——数秒前。


***


「……」


***


画面を閉じる。


***


何も言わずに、スマートフォンをポケットにしまう。


***


「……」


***


理由は、考えなかった。


***


考えたくなかったのかもしれない。

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