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自己紹介。  作者: 無記名
11/13

第11話「固定」

「書いて」


***


声が、止まない。


***


「書いて」


「書いて」


「書いて」


***


全員が、同じ顔で、同じ声で、同じ言葉を繰り返している。


***


「……」


***


逃げ場がない。


***


足が動かない。


***


「……」


***


スマートフォンが、手の中で震えている気がする。


***


いや。


***


震えているのは、自分の手だ。


***


「……」


***


画面を見る。


***


見たくないのに。


***


目が、逸れない。


***


「……」


***


一番下。


***


新しい一文。


***


「……」


***


——動けない。


***


「……」


***


その通りだ。


***


動けない。


***


「……」


***


——全員に見られている。


***


「……」


***


ゆっくりと、顔を上げる。


***


オフィス。


***


同僚。


***


上司。


***


受付の人間。


***


さっきまでいなかったはずの人間も、いる。


***


「……」


***


全員が、こちらを見ている。


***


「……」


***


瞬きのタイミングまで、揃っている。


***


「……」


***


——逃げられない。


***


「……」


***


「……やめろ」


***


声が、かすれる。


***


「……」


***


誰も反応しない。


***


ただ。


***


「書いて」


***


それだけを繰り返す。


***


「……」


***


スマートフォン。


***


画面。


***


カーソルが、点滅している。


***


空白。


***


「……」


***


待っている。


***


「……」


***


続きを。


***


「……」


***


指が、動く。


***


止める。


***


力を入れる。


***


それでも。


***


「……」


***


動く。


***


「……」


***


キーが押される。


***


「……」


***


——わたしは、会社にいる。


***


「……」


***


「……」


***


打った。


***


いや。


***


打たされた。


***


「……」


***


その瞬間。


***


空気が、変わる。


***


「……」


***


周囲の音が、消える。


***


「……」


***


静かになる。


***


「……」


***


「……」


***


ゆっくりと、顔を上げる。


***


「……」


***


誰も、いない。


***


「……」


***


オフィスは、空だった。


***


机も、椅子も、そのまま。


***


でも。


***


人だけが、いない。


***


「……」


***


「……は?」


***


声が出る。


***


「……」


***


さっきまで、いた。


***


確実に。


***


「……」


***


「……」


***


スマートフォンを見る。


***


「……」


***


新しい一文。


***


「……」


***


——そう書いた。


***


「……」


***


その下。


***


「……」


***


——だから、そうなった。


***


「……」


***


「……」


***


喉が、ひりつく。


***


「……」


***


「……違う」


***


小さく呟く。


***


「……」


***


違うはずだ。


***


「……」


***


違う。


***


「……」


***


でも。


***


「……」


***


周りには、誰もいない。


***


「……」


***


現実が、そうなっている。


***


「……」


***


「……」


***


一歩、歩く。


***


足音が、大きく響く。


***


「……」


***


広い。


***


さっきまで、あんなに人がいたのに。


***


「……」


***


音が、ない。


***


気配が、ない。


***


「……」


***


スマートフォン。


***


画面。


***


カーソル。


***


「……」


***


また、空白。


***


「……」


***


待っている。


***


「……」


***


次を。


***


「……」


***


「……書かなければ」


***


口が、勝手に動く。


***


「……」


***


言っている。


***


自分で。


***


「……」


***


「……書かないと」


***


「……」


***


「……終わらない」


***


「……」


***


誰に言われたわけでもない。


***


なのに。


***


分かる。


***


「……」


***


ここで止めたら、終わらない。


***


「……」


***


何が?


***


「……」


***


考えようとする。


***


その前に。


***


「……」


***


指が、動く。


***


「……」


***


——わたしは、一人だ。


***


「……」


***


「……」


***


また、書いた。


***


「……」


***


その瞬間。


***


「……」


***


違和感。


***


「……」


***


さっきと同じはずなのに。


***


「……」


***


何かが、違う。


***


「……」


***


周囲を見る。


***


「……」


***


誰もいない。


***


変わらない。


***


「……」


***


「……」


***


スマートフォン。


***


「……」


***


新しい一文。


***


「……」


***


——もう、一人だった。


***


「……」


***


「……」


***


息が止まる。


***


「……」


***


「……?」


***


理解が、遅れる。


***


「……」


***


——最初から。


***


「……」


***


「……」


***


足元が、揺れる。


***


「……」


***


「……違う」


***


「……」


***


否定する。


***


でも。


***


「……」


***


思い出せない。


***


「……」


***


会社の人間。


***


顔。


***


名前。


***


声。


***


「……」


***


何も、浮かばない。


***


「……」


***


「……」


***


「……」


***


スマートフォンの画面だけが、はっきりしている。


***


「……」


***


現実よりも。


***


「……」


***


「……」


***


カーソルが、点滅する。


***


「……」


***


また、空白。


***


「……」


***


待っている。


***


「……」


***


続きを。


***


「……」


***


そのとき。


***


画面に、新しい一文が表示される。


***


「……」


***


——書けば、決まる。


***


「……」


***


「……」


***


その下。


***


「……」


***


——書かなければ、決まらない。


***


「……」


***


「……」


***


そして。


***


ゆっくりと。


***


最後に。


***


「……」


***


——だから、書いている。

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