第53話 村にガチャがやってきた
ここは海沿いにある小さな村。
家が全部で30軒ほど。
漁師をしながら、小さな畑を耕して暮らしている。
街道から離れているため、干物を買い求める行商人がときどき来るのを除けば、訪れる人はほとんどいない。
「領主の令嬢様が明日やってくるという話だぞ」
「そんな高貴な方がなぜこんな辺鄙な村に?」
「使者の方の話によるとガチャをされてくれるらしいぞ」
「ガチャってなんだ?」
村では令嬢の話でもちきりだ。
「令嬢様は綺麗な人なのかな」
「ばかいっているんじゃないよ。顔なんて見ようものなら、打ち首になってしまうぞ」
貴族にあったことなど当然ない村の子供達は令嬢様というものを想像すらできない。
「だけど、ガチャっていうの授けてくれるってパパが言ってた」
「おまえなんか無理だね。せいぜい村長さんのとこくらいだよ」
ガチャが何なのか。
それを分からず噂だけで話が広がる。
お祭りすらない村のこと。
貴族が来てガチャを引かせてくれるというのは生まれて初めての大イベントなのだ。
「はやく、明日にならないかな」
翌日。
「来たぞ。令嬢様の馬車だ」
村の入口では、村長さん達が出向かえている。
馬車から女性一人とお付きの者2人が降りてくる。
「こんな村によくお越しくださいました」
「いきなりで、すみません」
領主のグデーリアン男爵の令嬢、クリス様。
雲の上の存在に声をかけられ緊張しまくりの村長さん。
「それでは準備させていただきます」
令嬢さんがバックをごそこぞ言わせて、何か丸いプレートを取り出す。
なにやら唱えると、いきなり建物がにょきっと立ち上がる。
看板があって、『クリスのティーサロン』って書いてある。
「それじゃ、最初のお客さんは・・・そこの僕」
「えええっ、僕ですか?」
いきなり、言われてしまった。
どうしよう。




