第48話 公爵家のお家騒動
第48話 公爵家のお家騒動
「兄上」
「お前など知らない。勝手に兄などと呼ぶな」
ヨハイム公爵家の長子、オスヴァルトは苦り切っていた。
それもそのはず。
全く知らない男から、兄呼ばわりされているのだ。
ヨハイム公爵家は、子供がふたりいて、長男がオスヴァルトで現在22歳。
妹がひとりいて、ローズマリー、現在18歳。
このふたりだけが公式な子供とされている。
ただ。
今、目の前にもうひとり現れたのだ。
トラウドルと名乗ったこの男。
20歳だと言う。
妹と自分の間に生まれた、公爵の血を引く男。
確かに父上によく似てはいる。
「公爵様の手紙、読んでいただけましたか?」
「ああ。たしかに、父上の筆跡と似てはいる」
「それなら・・・」
「とにかく、父上が帰ってくるまでは、認めはしないぞ」
「そんな・・・」
トラウドルは気落ちした顔をする。
気落ちしているのは、こっちの方だ。
なんでまた、今頃、こいつを引き取るというんだ、父上は。
側室を持つ貴族が多い中で、母上だけな父を今の今まで硬派な男だと思っていた。
浮いた噂もなく、母上が無くなって3年が過ぎた今だからこそ、新しい婚約者ができたのはいい。
もっとも、婚約は解消したと聞いてはいるが。
今、問題なのは、この男、ドラウドルだ。
20年も前に母上に隠れて付き合っていた女がいた。
そして子供ができて、こっそり援助していた。
「兄上のことは、小さい時から色々と公爵様から聞いていました」
「どんなことをだ?」
「まだ7歳のとき、こっそり伝説の剣を持ち出して、屋敷で振り回して東国の効果な壺を割ってしまった話とか」
あれは失敗だった。
でも、当時、うちにいたメイドらは知っていることだ。
誰かに聞いたのかもしれない。
「16歳のとき、女中に手を出して隠密裏に公爵様が片付けたこと、とか」
あー。あれは、父上とその女中以外知らないはずなのだが。どうやって知ったんだ。そんな話。
「今回、公爵様が甲冑と剣を装備して出かけるのを見つけて『年甲斐もなく』と言ったことを」
おいおい。なんで、そんなこと知っているんだ。
あの時、父上しかいなかった。
そして、まだ帰ってきていない。
???
なんで、腹違いの弟だとしても、知っているはずないじゃないか。
「まだ、分からないかい。オズ坊や」
「なんだ?なんで、そんな子供の時の呼び方を」
「私にとって、お前はいつまでも、オズ坊や。息子であることは違いない」
「は?何を言っているんだ。おまえ」
腹を抱えて笑い始める、目の前の男。
こいつ、誰だ?
「トラウドル、というのは仮の名前。本当は、ヨハイム公爵家の当主、トウラゴットだ」
「えっ、父上・・・ええー。どうしたんですか、その姿は?」
25歳若返って20歳になった父親をみて、混乱している長子のオスヴァルトだった。




