第28話 伯爵様は紅茶がお好き
「すまない。私がいない間にうちのバカがとんでもないことをしてしまった」
「頭を上げてくださいな」
「とにかく、そこから出てきてくれないか」
地下牢の中に作った私の部屋。
狭いながらも快適な場所になっている。
そこの前で頭を深々と下げているのは、この屋敷の主、クラインハインツ伯爵だ。
「すべては司祭から聞いている。どうか、私の顔に免じて許してくれないだろう?」
「許すも何も、ご子息はどうしました?伯爵様に謝れるのは筋が違うのではないでしょうか」
「それはそうなんだが。恥ずかしい話、あいつは籠城してしまって・・・」
「籠城ですか。現実逃避って奴ですね」
「自分で処理できないことがあると、部屋に籠りっきりになる奴でして」
「まぁ、伯爵様もご子息の教育はうまくいかなかった様ですね」
ふうっ。ため息が出た。
前世にもいたなぁ。有名大学を出てエリートコースに乗っている奴。
リスクも考えずに独断で大きな仕事に手をだして失敗したら、入院してしまった奴が。
後始末がどれだけ大変だったか。
青い顔で15歳の小娘に頭を下げている伯爵様。同情してしまうなぁ。
「頭を上げてください」
もう一度、言ってみる。
「本当に今回は迷惑をかけてしまった」
「もういいですから。ただし、今後一切、ご子息が私に関わりを持たないようにしてください」
こういう奴の逆恨み癖は嫌というほど知っている。
尻拭いしたエリート男がそのあと、いかに面倒な奴になったか。
「それはもう。腕利きの男をローランドの監視役につけますから」
「それはありがたいですね」
「もう好き勝手はやらせはしません」
伯爵様は、ちゃんと話が通じる相手らしい。
それでは、もうひとつくらい条件を出しますか。
「あと、もうひとつ。もし、これから必要とあれば伯爵様の名前を出させていただく許可をください」
「了解した。クラインハインツ伯爵の名前が通じる所ならどんなことでも使ってもらって結構だ」
そこまで言いますか。
本来貴族というのは名前を重んじるもの。
そうやすやすと名前を出す許可なんて与えるものじゃない。
それも制限無しとは。
「わかりました。ご子息とはもうこれ以上関わることはありませんが、伯爵様とは縁を結ばせていただきます」
「おおっ。喜んで縁を結びましょう」
公爵といい伯爵といい。おっさんとの縁はどんどんと深くなっていくな。
15歳の身体だけど、中身は38歳だからなぁ。おっさんとの相性がいいのかも。
その後、伯爵家のメインの応接間でティータイムを楽しんだ。
伯爵様から最近の情勢を教えてもらう。
「どうも帝国が怪しい行動をしているという情報がある」
「魔物の活動が活発化している」
いままで我々の王国は安定して発展してきた。
ここにきて、多くの問題が起き始めている感じがある。
「これは東方から手に入れた紅茶でして。香りが良く気に入っていまして」
「あら。本当に」
伯爵は紅茶が好きで、ティーセットもセンスの良い物をそろえている。
スイーツのお皿は、ホテルのアフタヌーンティーで使われている3段重ねの物より一段多い4段重ねだ。
フルーツと焼き菓子、ちょっとしたおつまみと、紅茶に合う物が用意されている。
ティーセットを褒めていたら、お土産にいただいてしまった。
これを使ってサロンでも開こうかしら。
『クリスのティーサロン』
いいかも。




