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第27話 宗教上の戦い

「こちらです。司祭様」


ローランドは地下牢へと司祭を連れてきた。

グデーリアン男爵家の令嬢クリスを邪教徒だと認定させるために。


「邪教徒は私の手で拘束してあります。安心してください」


司祭は教会の指導的立場の存在であり、冒険者と共に戦う聖職者とは違う。

危険がある場所には、基本的には立ち入らない。


もちろん、ハインツクライン伯爵家の地下牢にはそんな危険などありはしない。


「こっちに邪教徒がいますので、認定のほど、よろしく・・・えっ?」

「あら、ローランドさん。いらっしゃいませ」


ロココ調の調度品が嫌というほど詰まった地下牢の中にクリスはいた。

ど真ん中に、ドドンと置かれた天蓋付きベッドの上に。


「な、なんだ、これは?」

「はて。男爵令嬢の部屋としては質素な方ですよね」

「どこから、こんなものを持ち込んだのだ?」


そりゃそうだ。

ベッドひとつにしても、どう見ても地下牢の入口から入る様には見えない。


「そちらの方はどなたですか?」

「私はハインツクライン伯爵領で、司祭をしているジャコモと申します」

「グデーリアン男爵家のクリスです」

「何ふたりで自己紹介なんてしているの?そんなのいらないだろう。こいつは邪教徒だ」

「私はグデーリアン男爵領で教会との方とも仲良くさせていただいておりますが?」

「えっと。教会の方というと?」

「洗礼をしていただいたのは、ヘンドリク司教様です」


司教と聞いて、びくっとした。

司教というのは、大きな街を統括する神官のこと。


司祭は司教の下で、村や街の教会で直接に信者と接する仕事をする。


「司祭様はヘンドリク司教様をご存知ですか」

「もちろんですけど。とても徳の高い方です」


司祭は、司教の名前を出されてあたふたしはじめている。


「それで今日はどのようなご用件で私の部屋をお尋ねいただいのですか?」

「私の部屋って。そこはうちの地下牢だ」

「ずいぶんと居心地がいい地下牢を用意されているんですね」

「それは、お前が勝手に持ち込んだんだろう」


本当にこの男、頭の回転が遅いな。

地下牢でうちしがれている女を勝手な罪状を押し付けるつもりだったのだろう。

そんなこと、させるはずがないだろう。


「それで、司祭様。私に何か御用ですか?」

「私はローランドさんに呼ばれてきたのですが。邪教徒がいると聞いて」

「邪教徒ですか?私がそうだと?」

「そうだろう!訳の分からない邪教神を信仰して怪しい術を使っていただろう?」

「私は、自らのスキルで多くのことができるようになっているのですが。それが邪教とは」


ふたりの話を聞いていて、ジャコモ司祭は決心をした様だ。


「この件は私の手に負える話ではないようですね。もし、邪教認定が必要ならヘンドリク司教様に相談されたらどうですか」


あ、ジャコモさん、逃げを打ってきたな。

そりゃ、いくら支援をしている貴族の息子とは言え、自分より階級が高い神官と関わりがある貴族を陥れたとなっては、身の破滅にしかならない。


「そうですね。司祭様にお願いしましょう。この件、ヘンドリク司教様に伝えてください。もし、伝わらなかった時には後からでもヘンドリク司教様に連絡を入れることになります」


ローランドはバカだなぁ。こんな男連れてきたら、自分だけの判断でやりたい放題ができなくなってしまうじゃないか。


まぁ、単に。魔物に立ち向かえなかった情けない自分をなかったことにしたいだけの男だからな。

大したことができるはずもないんだけどもね。


「それでは私は失礼します」


ジャコモさんはローランドを無視して帰っていった。


「さて。ローランドさん。どうします?このあたりで私を開放した方が問題がややこしくならずに済むんじゃないですか」

「ふざけるな。こんなもの勝手に持ち込みやがって」


腰のベルトについている鍵の束をじゃらじゃら言わせて、牢の鍵を開ける。

手には警棒を持っているから、暴力でもふるうつもりかな。


「その生意気な口を利かせなくしてやろう」


にやにやした顔で、警棒を振り上げて牢の中に入ろうとする。


バシン。


牢に入る瞬間、後ろに弾き飛ばされる。


「な、なんだ」

「ダメですよ。レディの部屋に勝手に入っては」

「なぜ牢に私が入れないんだ」

「学習しない方ですね。ほら、魔物は入れなかったじゃないですか」

「俺は魔物というのか」

「魔物ほどの物じゃありませんけどね」


ベッドの上に立ち上がって、見下ろす形で言い放つ。

なんか、気持ちいいな、これ。

癖になりそう。


前世の状況をあらすじに追加しました。転生直後の婚約破棄をプロローグに追加しました。

いきなり、ガチャから始まったお話だったんですけどね。

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