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第29話 クリスのティーサロンにようこそ

貴族の世界は実にくだらない。

メンツとかしきたりとか。


あまりに面倒になってしまった私は、外籠りを決め込む。


「どうせ住むなら、魔素が強い場所よね」


ガチャは魔素が強い所ほど、レアアイテムが出てくる。

だけど、お祈りする人も必要だ。


そのふたつを同時に揃えられる場所がひとつあった。

魔物の森。


魔物が多く出る森は、魔素に満ちている。

私が住む箱庭には、魔物が入れないと分かっているから安心。


そして、魔物の森の入口なら、魔物狩りをする冒険者達が通りかがる。

そこに、『クリスのティーサロン』をオープンしよう。


併設するのは、ガチャ神社。

必要な物はここでお願いすると出てくるはず。


もうひとつがクリスの部屋。

地下牢で作った箱庭だけど、広さを拡張して使ってみる。

箱庭には不可視モードがあるから、覗かれることもない。


「お嬢様、なんでこんな場所に住むんですか。別荘でいいじゃないですか?」

「こっちの方がガチャの出がいいのよ。ちゃんと必要な物は用意するからいいでしょ」


一番近い村から馬車で2時間。

執事のエックハルトとメイドのふたりはそこに居を構えて通いになった。


もちろん、魔物の森だから危険がある。

護衛に冒険者をつけてくる。


今は、『クリスのティーサロン』のオープン準備で忙しい。


新しい箱庭を作って、カフェみたいにしていく。

おしゃれなテーブルとイス。


いろんな紅茶を並べた棚。

スイーツも、もちろん必要ね。


クララとノーラは、ティーサロン用に新調したメイド服でウエイトレスね。

レースを多用して、ピンク・ホワイトのかわいいデザインにしたの。

ベレー帽もセットで買っちゃった。


「すみません。誰かいますか?」


あれ、まだ準備中なのにお客さんかしら。


「仲間が魔物にやられてしまって。ヒーリングの魔法使える人いませんか?」

「ごめんなさい。ここは、ティーサロンなので、そういう人はいません」

「そうですか。やっぱり街まで戻らないと無理か」

「よかったら、試作品のヒーリングティーをどうですか?」


優しい香りのお茶を金の縁のティーカップで提供する。


「ちょっと熱いですので気をつけて」

「おい。これを飲むと少し楽になるってよ」

「あちち」


剣士なのかな。

肩から血を流している金髪男子。

支えているのが茶髪男子。


どっちも20歳くらいの長身イケメンね。


「ふぅ。あれれ?」

「うわっ、肩が光ってる・・・傷が治っていく?」

「はい。ヒーリングティーですから」


にっこり笑って応える。

本当はヒーリングポーションの成分が入っているから、だけどね。


「助かった。ありがとう」

「傷が癒えたなら、ゆっくりお茶飲んでいきませんか?」

「そうしようかな」


魔物との戦いで森に何日か入っていた、ふたり。

ゆっくりできる場所にたどりついてほっとした様子。


まだ開店前だから、あちこち荷物が山積みだけど。。。あんまり気にしていない、おふたりね。


「今回の戦果はどうでした?」

「ほら、これを見て」

「綺麗な魔石ですね」


7センチくらいの赤い魔石が3つ。


「レッドベアに襲われてさ。3頭は狩ったんだけど、最後の奴にやられてさ」


冒険者は命がけだ。

だからこそ、戦いが終わった後には、ほっとする場所が必要だと思う。


きっと、クリスのティーサロンは人気になるはずね。


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