↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/10

さん 事件






 

 幼稚園の中、ココがぶつぶつと呟きながら廊下を歩く。

 腕を組みながら、うーんと声を漏らす。


「わたしちゃん……パパ……!」


 わたしちゃんと別れたココは、彼女を助ける方法を探していた。

 そんな中、ココの背後を小さな影が後を追っていた。

 彼に気づかれないように、慎重に慎重に歩く。



 

 ココの足音が、ひたひたと廊下に響く。

 

 トイレが見えてきた、その時――

 自分ではない誰かの足音が聞こえた。


(ん?だれかぼくをみてる?)

 

 視線を感じ取ったココは、足を止めて振り返る。

 だが、見えるのは廊下でじゃれあう園児の姿だけ。


(……あれ?だれもいない)


 ココの背中に、ぞわぞわと鳥肌が立つ。

 急いでトイレに逃げ込んだ。


(こ、こわいっ!)






「はぁ……はぁ……」


 胸に手を当てる。

 嫌な汗が頬をつたっていく。

  

(だれだったんだろう……)


 ドアの外にそっと耳を澄ます。

 だが、何も聞こえない。


「……もう、いない?」

 

 そっと扉を開けた。ギィ……と蝶番が軋む。

  

 ココは恐る恐る廊下を見た。

 外は、誰もいない。


(よかった……)


 ココは、ほっと息を吐いた。

 さぁ教室へ戻ろうと、歩き出したその時――。

 

「ねえ」

「うわぁああああ!」

  

 突然、背後から声が聞こえた。

 ココの身体が大きく跳ねる。


「だ、だれ!?」

「ボクだよ」


 そこにいたのは、クラスメイトのトゥトゥだった。


 


「……トゥトゥ君!?」

「うん」

「なんでうしろにいたの?」

「……なんとなく」


 トゥトゥは、少しだけ目をそらした。


「それより……」

「ん?」

「ココ君、わたしちゃんのこと考えてた?」

「うん!」


 ココは嬉しそうに頷いた。


「わたしちゃん、パパのことで困ってるんだ。

 だから、ぼくが相談にのっていたんだ!」


「……そっか」


 トゥトゥは、小さく呟いた。


「トゥトゥくん?なんて?」

「なんでもないよ」


 トゥトゥの曖昧な回答に、

 ココが首を傾げた瞬間――。


 「おーーーい!!ココーーー!!」


 教室の前で、一人の男の子が叫んだ。

 ココは声のする方へ、顔を向ける。


「なーーにーー?」

「ココ、おまえププルのとうばんだぜー!」

「あーーーーーっ!」


 ココは何かを思い出し、急いで教室の方へ走っていく。


「ごめんねトゥトゥくん!いってくる!」

「……うん」


 せわしなく廊下を走るココの後ろ姿を、

 トゥトゥは静かに見つめていたのだった。

 



 教室で、クラスメイトが呆れた顔でココを待っていた。


「おせーよ、ココ!」

「ご、ごめんなさい……」

「ププル、おなかすいてるぜ?」

「いまごはんあげるよ!」


 ココは棚にある干し草を、ケージに入れる。

 ププルはウサギの体に翼が生えた不思議な生物だ。

 

 お腹が空いていたのか、一心不乱で餌をかじっている。


「お!たべてるたべてる!」

「ふふっ!かわいいね!」


 ケージ越しに微笑む二人に、ププルがキュウと鳴いた。

 ココは丁寧に、干し草を与えていく。


「かわいいな」

「ね!」

「ん? あれ? なんかププルがすくなくない?」

「さんびきだったっけ?」


 いつもは四匹いるはずなのに、

 ケージの中には三匹しか姿が見えない。


(う、うそでしょ……!?)


 慌ててケージを覗くココ。



 トゥトゥはその様子を、

 教室の外からじっと見つめていた――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ププちゃん…いや、ププルちゃんが世界で一番かわいい!誰が連れて行ったの?!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。