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第15扉 神社

今日は慰労会という飲み会の日だった。


最近は多少の疲れがあっても、早起きができる体質に改善されてきている。

そして、朝には猫と鳥へ朝と晩、ふたつのエサを用意して、朝食を食べ、準備万端で出社した。


慰労会のため、男を含む同じ課の面々は仕事をそこそこにして、定時で切り上げていく。

会場である居酒屋に到着すると上司以外は既に揃っていた。


そこに上司が到着して、乾杯の音頭と共に慰労会が始まった。


同僚や後輩たちがさっそくとばかりに愚痴を言い合っている。

それを横目に男はビールのジョッキを空にした。


そうして過ごしていると前に同僚が座り、隣に上司が座ってくる。

絡み酒が始まった。


上司も同僚も仕事が出来る系統の女性で、上司は愛嬌があって人気があり、同僚は整った容姿で憧れている女性も多い。

男が性別で仕事を差別しない、そしてセクハラしないことを分かっていて、たまに絡んでくる。

他の同僚からは羨望の目で見られたが、女性慣れしておらず静かに飲みたい男としてはタジタジだ。

むしろ、代わってくれるならその方がありがたいと考える程に。


なんとか慰労会を終えた頃には疲労困憊だった。

グダグダになっている上司と同僚をタクシーへと押し込み、運転手にタクシーチケットを渡す。


そうして、男は終電間際の駅へと急ぐ。


終電ひとつ前の電車に間に合い、なんとか帰宅した男。

猫と鳥の出迎えに目もくれず、ふらふらと自室に向かってベッドに倒れこんだ。


そして、翌日。

ぼさぼさの頭を掻きながら、身体を起こす男。

まだ若干の気怠さが残っているものの二日酔いの辛さはない。


ああ、今日は土曜日だった…と思い出し、シャワーへと向かった。


身なりを整えると猫と鳥にエサを用意してから、リュックサックの中身を確認する。

いつもの道具一式が入れっぱなしだったことを確認すると、そこにタオルや着替え、飲み物を詰め込んだ。

そうして、男は扉へと向かう。


今日の扉は全体的に木の造りであったが、枠の四隅と左右中央部分に意匠を凝らした金属の飾りがある。

金属部分の黄金の輝きが、荘厳な気配を感じさせる。

観音開きのその扉は中央部分に同じ意匠の閂で止めてあった。


男は閂を横に動かして外すと、押して扉を開いた。



暖かい、そして爽やかな一陣の風が通り抜ける。

そして、木々の香りが微かに風の後を追うように舞い込んだ。

上を見上げると青一色の空が広がり、日差しが一帯を照らしている。


扉をくぐり抜け、足を踏み入れるとシャリっと足音が鳴る。

そこは細かい砂利が敷き詰められている様だった。

先の方へと視線を移すと、左右に走った石畳があり、左手には鳥居が見えた。


一方、右手には石畳の通路が続くものの通路の左右が林で覆われており、先は見えない。

男は石畳の場所までたどり着くと、少し考えて右手の道に進むことにした。


時々、木々の葉が風で奏でる音だけの静謐な道が続く。


進んでいくと微かに水の音が聞こえてきた。

更に進むと右手に木造の手水舎があり、ちょろちょろと水が湧いている。


男は柄杓を手に取り、片方ずつ手を洗う。

そして、柄杓から手に水を溜め、そこから口に水を含んだ。


手水舎を去り、更に奥へとゆっくり進む男。

木漏れ日と、時より吹く弱い風が心地いい。


そうすると先程の鳥居よりはひと回り小さい鳥居が見えてきた。

鳥居の先には藁ぶきの様な屋根の建物が窺えた。

本殿だろうか?


慌てることなく、ゆっくりと進んでいく。


男は鳥居をくぐる前に一礼し、本殿の前に立つ。

無心で一拝、祈念、二拝、四拍手、一拝を行った。

すっと起立し、佇むと静寂が辺りを包む。

本殿を少し見上げてから踵を返し、静かに立ち去った。


本殿から戻るために鳥居をくぐると、来た道とは別に細い小道を見つける。

時間にまだ余裕があると思い、男はその道に進むことにした。


少し進んだところで、すぐに建物を見つけた。

広い建物で中に椅子が並んでいることまで確認できる。

入ってみると、休憩室の様な場所で、椅子の前方に舞台があった。

威厳がある舞台は奉納行事が行われる場所に見える。


男は休憩をするために舞台から離れている後方の椅子に座り、リュックサックから飲み物を取り出した。

ほっとひと息つく男。

その場所は静謐な空気の中にも、柔らかい雰囲気が混ざっている様に感じた。


飲み物を飲み終えると、リュックサックに空のボトルを入れ、担いで立ち上がる。

その建物から出ると、ひとつ伸びをした。

木々から香りと綺麗な空気が、男の肺に流れ込んでくる。


男は家に帰ろうとゆっくり歩き出した。


そして、家への扉の前にたどり着く。

扉からふと木々の方に視線を移すと、一組のきつねがこちらを見つめていた。

何を思ったのか、男はきつねに手を振ると、きつねは『またね』と言った様な気がした。


男は振り返り、扉をくぐる。

そして、男は気を失った。



男は気が付くと、まるで出掛ける直前の様に玄関で立っていた。

あれ?と周りを見渡す。

時計を見ると、まだ11時頃だ。


爽やかな気分になっている男はそのまま出掛けるか…と、靴を履いた。

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